断腸亭料理日記2013
9月19日(木)昼
午後一(いち)、浜町で打ち合わせ。
終わって、食べ損ねたので遅い昼飯。
どこがよかろう。
浜町というのは、ご存知、人形町の隣町。
人形町も含めて、このあたり食べるところには
事欠かない。
そして、人形町辺というのはおもしろい街である。
江戸の頃は、明暦の大火で、浅草の北に移転するまでは
吉原遊郭があり、また、歌舞伎の江戸三座のうち、中村座と市村座が
天保の改革で浅草の猿楽町に移転させられるまであって、
江戸初期からの芝居町であった。
明治以降は、花柳界。
明治18年の数字で当時の花形であった、新橋227名、柳橋120名に
次いで、芳町(人形町辺)は既に、89名の芸妓数であったという。
戦後から今もって、このあたりがなんとなく雰囲気のある街
であるわけはこういう歴史もあるが、第二次大戦の戦災で
焼け残ったことも大きかろう。
今は数少なくなったが、少し前までは、
神田須田町あたり同様、関東大震災後の建築の
建物が数多く見られた。
(今も探せば、元料理やだったのか、
木造三階建てで凝った造りの家が残っていたりする。)
また、落語ファンであれば、人形町[末広]という寄席も
忘れてはいけない。
若き頃の談志家元が割りはよくないが、古い寄席の雰囲気を
残していた[末広]が好きで頻繁に出演していた。
人形町のこと、詳しくはこちらを。
『池波正太郎と下町歩き人形町編』
元花街だけあって、料亭も残っているし、
すき焼きの人形町今半、喜寿司など鮨やの老舗もある。
(まあ、これらはお高いが。)
蕎麦やも、池波レシピだが、浜町藪がある。
また、毎度書いているが、元花街には洋食やの老舗も多い。
代替わりしているようだが、ビーフカツのキラク、
座敷洋食を食べさせる、芳味亭などある。
が、お昼というと、やっぱり[小春軒]が私は好きである。
[小春軒]は、鶏料理、親子丼で有名な[玉ひで]のある
甘酒横丁と人形町通りの交差点から、甘酒横丁とは
反対、蛎殻町方向へちょっと行った右側。
間口は二間半ほどであろうか、さほど大きな家ではない。
2時。あいているのか心配したが、よかった、
暖簾が出ている。ここは昼夜通しであったか。
こういうところも、古い東京の食いものやの伝統を残していると、
いってよいのかもしれない。
「創業明治45年・西洋御料理・小春軒」と、
表の看板には記してある。
硝子戸を開けて入る。
昼時はすぎており、お客はいない。
連れと一緒に、テーブルに座る。
なんにしようか。
うん、今日はメンチカツだ!。
そうそう、忘れずにコロッケも一つつけねば。
ここはなんといってもポテトコロッケが秀逸。
なんにでも一つからつけられる。
メンチカツ二つにコロッケ。
コロッケの方にもソースをかけて、
コロッケから食べる。
これほどクリーミーなポテトコロッケというのは、
なかなか、なかろう。
ラードの香りも食欲をそそる。
メンチカツもむろん、うまい。
愛想がいいようなわるいような、気の置けないおかあさんも
街の洋食やの雰囲気。
今日も、うまかった。
ご馳走様でした。
中央区日本橋人形町1-7-9
TEL:03-3661-8830
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