断腸亭料理日記2013
花が咲いたので、花見を先に書いたが、
一週戻る。
3月17日(日)
さて。
今日は「赤坂大歌舞伎」にいく。
場所はTBSのACTシアター。
出演(で)るのは、勘九郎、七之助、獅童。
昨年亡くなった、父勘三郎の遺志を継いで、
ということになるのであろう。
「赤坂大歌舞伎」というのは、私は初めて。
なん回目になるのかわからないが「平成中村座」同様、
故勘三郎が、歌舞伎座ではなく、別の場所で、初心者にも
わかりやすい歌舞伎を、と、演っていたもの。
これは是非とも観にいかねば、と、切符を取った。
演目は「乳房榎」。
落語家・三遊亭圓朝作の怪談噺。
12時開演なので、11時、内儀(かみ)さんとともに
家を出る。
いつも歌舞伎を観にいくときには、書いている通り
着物を着ているが、今日は、洋服。
その理由は、場所が赤坂だから。
赤坂のACTシアターで着物は場違いであろう。
銀座線で溜池山王までいって、歩く。
よい天気だが、風が強い。
(花粉もひどい。)
旧赤坂料亭街を抜けて、赤坂通りを左に曲がり、
TBSの敷地内に入る。
新しくなってから、TBS内に入るのは初めてかもしれない。
ちょっとしたお上りさん気分。
モールを抜けて、ACTシアターは右側。
TBS「情報7days ニュースキャスター」でもみせていた
しだれ桜。
「赤坂大歌舞伎」の大きなポスターも掲げられている。
石の階段を上がって左のACTシアターへ入る。
この雰囲気、確かに、着物は場違いであった。
お洒落。
お洒落だが、入ると、ちと狭い。
S席の2階。
席について、弁当を買いに立つ。
買ったのはちらし寿司。
客席の階段がまた、急。
座って、幕が開く。
演目と配役を書き出しておく。
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三遊亭円朝 口演
怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)
中村勘九郎三役早替りにて相勤め申し候
菱川重信/下男正助/うわばみ三次 中村勘九郎
重信妻お関 中村七之助
松井三郎 片岡亀 蔵
磯貝浪江 中村獅 童
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初演は二代目實川延若により1915年(大正4年)横濱座(横浜)。
その後、大阪で人気になったという。
勘三郎は三代目延若から受け継ぎ、90年に歌舞伎座で演じた。
そういうことなので、掘り起こした作品ということのよう。
上に書かれている通り、原作は三遊亭圓朝の
怪談噺。
落語の方の初演というのは記録としては残っていない。
口演の速記という形で、活字になったのが明治21年だが、
それ以前より演じられており、圓朝師は明治33年、62歳で
亡くなっているが、師の40代の作品ということ。
明治10年代のどこか、なのであろう。
歌舞伎の記録はきちんと残っているが、
落語の記録は皆無というのは、落語というものの
置かれていた地位が忍ばれる。
圓朝師の作は多くが歌舞伎化されている。
昨年観た『塩原多助一代記』
。
落語の噺として有名どころで11年の「赤坂大歌舞伎」でも
演じられたようだが、『文七元結』。あるいは、『芝濱』。
怪談噺で『牡丹燈籠』『真景累ケ淵』などなど。
ほとんどの作品が歌舞伎化されている。
(当たったか、今歌舞伎として残っているかは別にして。)
四幕八場(で、よいのであろうか。)
通し。
幕が開いて、しばらくして、正直のところ、
びっくり仰天。
なんと、勘九郎が、おとっつあん、亡くなった勘三郎、に、
そっくりなこと。
声質から芝居、
瓜二つ。
まるで勘三郎が生き返ったようである。
親子なので、顔つき、体格、声質などは、まあ、似て
あたり前なのであろうが、、、。
勘九郎にこんな芝居ができたのか、、、。
むろん、勘九郎の芝居は平成中村座などでも
なん回も見ている。
どちらかといえば、澄ました二枚目役が多かったと思うが、
やはり実力というものは、しっかり付けていたのか、と、
感心することしきり。
もっとも、勘九郎も『乳房榎』は初めてではないとのことなので
落ち着いていることはあたり前だったようだが。
実のところ、勘三郎亡き後のいわば座頭の芝居。
心配をしていたのも事実である。
しかし、そんなことで、幕が開いてすぐから
安心して舞台に没入できた、というわけである。
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