断腸亭料理日記2013

手拭いのこと。その2

先日、断腸亭手持ちの手拭いのことを実物の写真とともに
書いてみた。

今回はその2「断腸亭の手拭い披露、第二弾」を
やってみようと思う。

初回は、気に入っている、どちらかといえば、
江戸からのシンプルな基本的な図柄のもの。

引き続き、その系統。



色がちょっとお洒落だが、銭の文様。
これも基本的なものであろう。

次。


これはおわかりになろうか。
唐草(からくさ)。

唐草模様といえば、泥棒の風呂敷?
あるいは、東京ぼん太(古い!)。

あの模様を思い浮かべるかもしれぬが、
唐草模様というのには、実は、そうとうなバリエーションがある。

ご存知かもしれぬが、発祥は古く、古代ギリシャ。
いわゆる中央アジア、中国を経由するシルクロード経由で、
古くから日本に入っている。

こういうものなので、アラブ・イスラム、ヨーロッパにも
唐草をモチーフにした実に様々な文様が、広く分布している。

この柄はちょっとお寺のような感じもするが
落ち着いていて好きである。

次。


見た通り、うなぎ。
シンプルだが、色使いがお洒落である。
柄の歴史としては、さほど古くはないかもしれない。

次。


これは、見た通り、半蔵門の国立劇場の配りもの。

いや、正確にいうと、撒きもの。
昨年の初芝居であったか、花道の脇に座っていたら、
芝居途中で手拭い撒きがあり、拾うことができた。
国立劇場開場45周年記念。入っている模様は撒いた役者の
もの。(どなたか、忘れてしまった。)

さて、次。


これも歌舞伎に縁があるが直接のものではない。

これ↓。


(大谷鬼次の江戸兵衛、寛政6年(1794年)5月河原崎座上演の
『恋女房染分手綱』より)wikipediaより

有名な写楽の役者絵。
皆さんもおそらく見覚えがあろう。

この役者の着物の縞の柄。

手拭いは使いこんでいるので、色があせてしまっているが
これを再現したもの、で、ある。

手拭いの柄としては、ちょっと野暮ったいかもしれぬが
冬などにはよいだろう。

その、色違い。


これは、最近買ったので色あせはしていない。

これ。


一枚全部の写真、で、ある。
これはそうとうに使い込んで、色も落ちてしまっている。

真ん中にある印(しるし)に見覚えはあろう。
そう、五円玉。

いや、そうではなく、これは神社のお稲荷さんの印。

私の住む元浅草の西隣にある、下谷神社の祭の、ある町内の手拭い。
(祭の際、町内の神酒所に寄進をした人などにお返しとして配る手拭い。)

下谷神社は銀座線、上野から一駅、「稲荷町」が最寄で、
今は神社の名前に稲荷という名前はついておらず、稲荷町という町名も
消滅しているが、今でも立派なお稲荷さんである。
(下谷稲荷は寄席発祥の地としても知られている。)

下の方が豆絞りになっており、中央に稲荷神社の稲を図案化した印。
右が漢字の稲、左が神の字を、丸く図案化したもの。

デザインもよいが、色もよい。
色は落ちているが、深緑というのか、
若草色というのか、シブイ!、ではないか。

このセンスがまったくもって、粋で、好きな手拭いなのである。

さて、次。


これも一枚ものだが、手拭いとしては、ちょっと反則か。

これは、柄というのか、絵が好きなのである。

広重の名所江戸百景のうちの「大はしあたけの夕立」。

大はし、といっているが、今の新大橋。
つまり、森下あたりなのだが、橋の袂、少し北側から、新大橋と
対岸の浜町あたりを見ている。

あたけ、といっているのはこのあたり(森下側)の古い地名。

この広重の浮世絵は、ゴッホが模写をしたりし、
美術品としての評価も高いといってよいのであろう。

このあたりから、隅田川は下流に向かって右に曲がり、
川幅が広くなっていく。

左側に小名木川の堀の入口があって、その袂に
かの松尾芭蕉の芭蕉庵があった。

このあたりの隅田川の眺めは、堤防で囲われた現代でも
最もよいと思っている。
江戸の頃は、さぞや、であったろう。

実際の手拭いとして使うことはほとんどないが、
好きなもの、ではある。

以上、「断腸亭の手拭い披露、第二弾」今日はこんなところでお仕舞。

シンプルで伝統的なもの以外は、やはり私の好きな“江戸”が
感じられるものがよい、ということになろうか。


これを落語用の折り方でたたむ。


日曜の午後、一週間分の用意をするのが毎週のことである。

 




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