断腸亭料理日記2013
7月14日(日)
さて。
浅草寺仲見世脇路地の文扇堂で
扇子を買って、蕎麦、で、ある。
観光客の多い休日には、[並木藪]でもなく、
[尾張屋]でもないところ。
気まぐれに休んでいることがあるが、いってみようか。
路地を抜けて、国際通りまで出る。
[おざわ]は、西浅草。
国際通りを渡ると、町名は西浅草になる。
新仲(しんなか・新仲見世)の通りの信号を渡る。
そのまま直進し、次を右。
真っ直ぐ行くと突き当りにどぜうの[飯田屋]
合羽橋通り。
(合羽橋通りといっても、道具街の通りではない。
この通りは合羽橋道具街の真ん中の信号の通り。
つまり道具街の通りとは直角に交わっている。
合羽橋道具街は、本来はここに新堀という
堀が江戸の頃からあったので、新堀通りという。
そこに掛かっていた橋が合羽橋なのである。)
その手前左側。
ビルの一階。
よかった。
暖簾が出ている。
先日“趣味そば”のことを書いたが、
ここ、見た目には、新和風の内装、ワインはないが
ベルギービールなど置いてあり、趣味そば風。
だが、先日書いたような客商売がわかっていない
ところとは違う。
私の、老舗に対しての“趣味そば”という
定義からすれば趣味そばに入るのだが、
よい趣味そば。
萌黄(もえぎ)色の麻の暖簾を分けて入る。
よい感じに空席もある。
真ん中の大きなテーブルに座る。
いや、それにしても暑かった。
扇子でパタパタ。
さっき買った高座扇ではなく、今日のは
吉右衛門版の鬼平(TV)で、吉右衛門先生が持っているような
黒い渋(しぶ)の少し長い物。
これも確か、文扇堂で買ったものである。
やっぱり、ヱビスの生と。
肴は?。
品書きを見る。
鴨皮佃煮?。
これはこの店でも見たことはなかった。
頼んでみよう。
それから、蕎麦は、ざるのとろろにしよう。
ここは蕎麦は太打ちだったり、三種類から
選べるが、今日はノーマルなもの。
生ビールがきて、
鴨皮。
きてびっくり。
煮凝(にこご)りである。
なるほど。
こういう手があったのか。
煮汁とともに冷やせば、皮は固まる。
型に入れて、抜いて薄く切る。
煮凝りといえば、魚が普通であろう。
皮は初めてみた。
ここのご主人は和食の修行をされた方、と聞く。
やはり、昨日今日でき星の“趣味そば”とはわけが違う、
というところであろう。
ちょうど呑み終わった頃、蕎麦もきた。
つゆが別に付いてきたが、とろろには
味がついているのか。
ちょっと、なめてみる。
ある程度付いてはいるようだが、これだけでは
私には薄い。徳利のつゆを足す。
とても滑らかなとろろである。
口当たりが実によい。
ここのざるは盛の量も多め。
食べ終わり、つゆも蕎麦湯で割って
全部飲み干す。
うまかった。
ご馳走様でした。
お勘定をして、出る。
お内儀(かみ)さんも、一人いるお姐さんも、
ご主人も、ありがとうございます〜、と、
かわるがわる、なん度かよいリズムで、いう。
またきま〜す。
手打そば・おざわ
住所:東京都台東区西浅草2-25-15
電話:03-3841-6450
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