断腸亭料理日記2012
さて。
今日も五反田。
先週、行けなかった、目黒のとんかつや、とんき。
今日こそは、と、7時前、五反田の事業所を
出る。
山手線の線路沿いへ五反田へ向かう。
目黒駅から西へ向かう、目黒通り
これは権之助坂で、坂上からもう一本
放射状にある坂が、行人坂。
とんきの本店はこの二本の坂を結ぶ路地にある。
権之助坂からまわる。
右側。
くもり硝子の入った格子を開ける。
開けて、寒いので、すぐに閉める。
入ったところにもう既に立って待っている人がいる。
ん?と、数秒。
すぐに、ご主人なのか、白髪短髪。
柔和な笑みを浮かべた背が高く年配の男性が、
「ヒレかロースか、串かつか。
今日はなにを作りましょうか?」
と、慣れた口調で聞く。
久しぶりにきたので、システムを忘れてしまっていた。
混んでいる時には、入るとすぐ注文を聞かれるのであった。
一瞬考えて、
ロースの定食とそれから、持ち帰りで串かつも。
持ち帰りは、ここにくると決めた時から
頼もうと決めていた。
これは、池波先生の真似。
池波先生のとんかつ好きは有名だが、
ほぼ必ずおみやげで持って帰り、ご自分で
夜中だったり、翌朝だったり食べていた。
注文を頼んだ後は、待つ人のための椅子はあるが
必ずしも、順番に並んで座らなくともよい。
注文を聞いてくれたご主人(?)は
メモっておくのか、覚えているのか、
順番が来ると、そちらの方、と、いって、
あいている席を案内してくれる。
きたときには待っている人の椅子もすべて埋まり、
その上、立って待っている人も数人。
10分、15分、20分はかからなかったか。
呼ばれて、奥のカウンターのちょうど角の席を
案内される。
座ると、すぐにおしぼりが置かれる。
ビールを頼む。
つまみのピーナッツもきて、
すぐにロースの定食もくる。
ソースをかけ、とんかつとキャベツをつまみに、
ビールを、呑む。
定食で1800円。
とんかつや、と、すれば、決して安くはない。
ただ、老舗、有名店とすれば、もっと高いところもある。
拙亭近くの、上野浅草では、御徒町のぽん多本家などは、
ロースが2620円。同じく双葉(休業中のよう。)2650円。
蓬莱屋がヒレの定食で2900円、浅草寿町のすぎ田がロースを
定食にして、2500円。
このあたりが相場かもしれない。
従って、有名店の中では、安い方だが、
十二分に、うまいとんかつ、では、ある。
が、ここのよさは、それだけではない。
今時、これほど行き届いたサービスをする
飲食店は他には、都内でもそうとうに珍しいだろう。
広い店内。
カウンターの向こう側は、広い厨房。
カウンターだけでなん席あるのだろうか。
30席?。
その中で、白い上っ張りを着た若い衆達がテキパキと
働いている。
彼らは、お客達の食べ具合を見ながら、キャベツをすすめにくる、
食欲のあるお客には、ご飯や豚汁のお替りをすすめる、
などなど、常に気を配っている。
ビールを呑み終え、ご飯にかかり始めると、
すかさず、お茶がくる。
そして、ちょうど食べ終わったタイミングで、
今度は、温かいおしぼり。
オミヤはまだかな〜、と思っていると、直後、
袋に入れられた串かつもくる。
ほとほと、このタイミングのよさには恐れ入る。
かねがね思っていることではあるが、この飲食店、
あるいは客商売でのタイミング。
すぐれて東京的(いや、都市的)なサービスのような
気がしている。
例えば、そばやでざるそばを食って、
そば湯を持ってくるタイミング。
これなどは、ざるが出てきてすぐ、でもやはり、
冷めてしまうのでいけない。
待てど暮らせど、いわなければ持ってこないのは、
むろん論外。
食べ終わったか、終わらぬかのタイミングで
持ってきてくれるのがベスト。
よいそばやは、ちゃんと頃合いを見計らって
持ってきてくれる。
(そばやでは酒と肴、そばも最初に一緒に頼んで
そばだけは酒を呑み終ってから、というのも、
いわなくとも見計らって持ってきてくれるのが、
古い東京のそばや、で、あった。)
これが、行き届いたサービス、というもの。
そしてこの店のようにこれを長年続けていると、
型になり、流れるような気持ちのよい
様式美、と、いってもよいようなサービスに
なっているように思うのである。
やはり、この店も東京都の重要無形文化財を
差し上げねばならない。未来に残したい東京である。
ともあれ。
腹一杯、ご馳走様です。
お茶をゆっくり飲んで、お勘定をして、出る。
さて、串かつは翌朝。
包装紙には全国の暖簾分けなのであろう、
様々なとんきのマークが入っている。
そして、お替りキャベツももちろん、ちゃんと付いている。
味噌汁は前夜取った、豚ではなく、鶏の出汁。
串かつも、うまい。
目黒区下目黒1-1-2
03-3491-9928
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