断腸亭料理日記2011

厚揚げのおろし煮

10月24日(月)夜

月曜日。

夜。

今日は、なにを食べようか、決めていた。

先日、江戸時代からの江戸料理の老舗、
八百善のレシピ本から、ふろふき大根
作った。

その、第二弾。
それも、その隣に載っていたレシピ。

表題にある、厚揚げのおろし煮。

同じ大根の料理であり、どちらも、簡単。

この八百善のレシピ本は、まあ、当たり前だが、
料亭のレシピなので、基本は皆、手がかかり、
時間もかかるものばかり。

その中で、この二品は、そうとうに、
簡単な方、である。

ふろふき大根にしても、厚揚げにしても
江戸の普通の庶民、長屋の八つぁん、熊さんにしても
食べていたおかず、で、あろう。

だが、このレシピ本に載っているくらいだから、
名のある料亭、八百善でも出したのであろう。
まあ、逆にいえば、それだけ皆に好まれた料理
と、いうこともできよう。

帰り道、厚揚げを買う。
これは、なんということのない、普通のもの。
それから、大根1本。

大根は、この前のふろふきなどにも絶好だが、
冬に向かい、これからの季節、うまくなる。

値段は1本180円。

東京の大根の値段とすれば、
多少高めかもしれぬが、まあ、普通の値段、
で、あろう。

最近、震災から、原発、あるいは、
天候不順だったり、で、特定の野菜の値段が
高くなることが多いように思う。

少し前には、レタスであったか、
葉物の野菜が高かった。

こういう、高いものが出てくると、
ニュースなどでも採り上げられて、
一般にも騒ぐ人がいる。

しかし、どうなのだろうか。
別段、レタスを食べなくとも、人間、死にはしない。
野菜でも安い別のものを食べればよい。

だいたいが、年がら年中、同じ野菜が食べられる、
ということの方が、おかしいことである。
いうまでもなく、本来野菜にしても、魚にしても
旬があり、その時期のものが安いし、栄養価も
高いという。

工業製品ではない。
ない季節もあると、思って、諦(あきらめ)てはどうだろうか。

外食メニューなど、どうしてもその素材を
使わなければならない場合は、気の毒であるが、
一般のお母さんは、騒ぐには及ばなかろう。

足るを知る、ということであり、
あるものを食べるのが、本来の姿であろう。
(スローライフというのは、そういうことなのでは
なかろうか。)

閑話休題。

厚揚げは、厚さ1.5cm程度の一口に切る。
これに熱湯をかけて、油を抜く。

次に、大根をおろす。

八百善レシピによると、大根おろしにも
おろし方がある、という。

なにかというと、天ぷらの天つゆなどに使う、
薬味用の場合は、おろし金に真っ直ぐにこすっておろす。

それに対して、今回のようなものは、
丸く、円を描きながら、おろす、という。

丸く、の方は、繊維を切る、という意図があるようである。
薬味の方は、繊維が長く残る。
この方が、辛味が出る、ということであろう。

カップ1分、おろすのだが、けっこうたいへん。

おろし終わったら、厚揚げを煮る準備。
出汁は、この前ふろふき大根を煮たものが
余っていた。
レシピでは味醂、砂糖、しょうゆで、甘辛に、
と書いてある。

少し、ふろふきの出汁は、しょうゆと酒と塩だったので、
砂糖としょうゆを足す。
ここに厚揚げを入れ、点火。

煮立ってきたら弱火にし、アルミホイルで、
落しぶたをして煮込む。

さて。
大根おろし。

おもしろいのは、これから。
おろした大根は布巾(ふきん)に取り、水にさらす、
という。

料理に使う場合は必ずこうする、というのだが、
辛味や独特の香りを取る、ということのようである。

なにかもったいないような気もする。
(それとも、昔の大根はもっと辛味や香りが
強かったのか。)

ペーパータオルにくるむ。

これをボールに取った水の中へ、くるんだまま少し
泳がせる。

こんなもの、で、あろうか。

厚揚げの方は、中心までよく味を含ませる、
と、あり、じっくり。

15分で火を止めて、さらに少し置いておく。
(その間に、この日記の更新など。)

合わせて、30〜40分か。

よいかな。

大根おろしをドサッと入れ、点火。
温まったら、OK。


厚揚げおろし煮。

こうして、自分で作って食べてみると、
また、味が違うもの、で、ある。

甘辛の出汁に揚げ物が入るので、ちょっと、
天ぷらそばのそば抜き、いわゆるヌキ、
のようにも思えなくもない。

うまいもんである。

普通には、揚げ出し豆腐、という名前の方が、
今は親しまれている名前かもしれない。

チェーンの居酒屋のメニューで、わりに薄めの味付け
であろう。

甘辛が江戸、東京の味。
濃い方が、酒にも合う。







断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 |

2009 12月 | 2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 |

2010 7月 | 2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2010 12月 |2011 1月 |

2011 2月 | 2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月

2011 9月 | 2011 10月 |


BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2011