断腸亭料理日記2011

新島産・むろあじ・くさや

4月29日(金)夜

さて。

今日は、昨日の続き。

御徒町、ひむろで、味噌ラーメンを食べて、
吉池にまわる。

魚を見て歩くのだが、なんとなくピンとこない。

腹一杯のときはだめ、で、ある。

おそらく、今日の目玉は、鯛、なのであろう。
大きいのもあるし、
小さいのは、春子(かすご)、と、書いてある。

春子は、酢〆にして、うまい。
江戸前の鮨やでは、光物として扱われる。

読んで字の如く、旬は春。

うまいもの、なのだが、鯛をさばくのは、
特に、小さいのは、たいへんである。

まずは、小さくとも鱗を取らねばならぬ。
これが面倒。

また、鯛は小さくても、骨が太い。
きれいに取らねば、食べられない。

今日は、おろす気力もなく、やめる。

ということで、なににしようか。

干物?。

おお、そうだ。

久しぶりに、くさや、を買おうか。

新島産、むろあじ、の、くさや。

350円。

一次は希少価値か、もう少し値段が張ったような
記憶があるが、このくらいなら、よいであろう。

くさや、というのを、ご存知の方はどのくらい
おられのだろうか。

あるいは、食べたことのある方は?。

伊豆七島出身の方はむろん知っておられよう。
千葉の海辺、あるいは、神奈川の海辺でも作っていたか、
わからぬが、東京で生まれ育ち、爺さんが
酒飲みであったからか、私の家には、時たま、
食卓に登り、子供の頃から食べていた。

落語にも登場するので、東京、特に下町では、
あたり前のもので、あったと思われる。

値段はどんなものであったのだろうか。
下町の庶民が食べるものであり、そうそう

高級品であったわけではなかろう。

くさや、というくらいで、そうとうに、
くさい。

慣れない人は、まず、食べられないであろう。

魚の発酵食品の一種である。

魚の発酵食品というと、鮨の古い形である、

魚を米麹などで発酵させた、熟れずし。

あるいは、塩辛。
塩辛は、はらわたを入れて、塩漬けにし、
発酵させたもの。

そして、さらに、発酵を進めると、
形がなくなり、上澄みは、魚醤になる。

このあたりが、魚の発酵食品としては、一般的であろう。

魚が発酵すると、アミノ酸が増加し、
匂いは強いが、うまくなる。

くさやは、塩辛、あるいは、魚醤のような、
発酵した汁に、開いた魚を入れて、干す。

つまり、干物なのだが、このくさくて、
うまいアミノ酸たっぷりの液体がうまみを
増加させる。

塩辛や、熟れずしともまた違う形の
魚の発酵食品である。

こんな、感じ。


真空パックにぴったりと包まれている。

これを一たび、はさみで切ると?


あの、くさやの匂いが、ぷーん、と、してくる。
まあ、私自身は、慣れているので、むろん、
平気、ではある。

ガスレンジで、焼く。

別段、むずかしいことはないが、
普通の干物よりも、多少水分が少ない。
ちょっと、焼きすぎて、しまった。


そうそう。

換気扇は回した方が、よいであろう。

むしって、皿にのせて、


ビール。

くさやで、ビール。
最高ではないか。

なぁ〜んとなく、夏っぽいような気もしてくる。






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