断腸亭料理日記2010
6月12日(土)
さて。
また、また、一つ二つ、戻る、のであるが、
土曜日の深夜。
なにか、鉄道関係のTV番組を視ていると
駅弁が映っていた。
なんの駅弁かというと、鳥弁。
鶏そぼろ、玉子のそぼろ、焼いた鶏の
三色の鶏の弁当。昔は日本全国そこいらじゅうの駅に
あったように思う。
この鶏そぼろ。
駅弁に限らず、母親の作る弁当でも
よく入っていた記憶があるのだが、
子供の頃から、好物、で、あった。
(まあ、鶏そぼろなんというもの、
基本的には、子供の好きなもの、ではあるが。)
映像を視ていて、鶏そぼろ、が急に食べたくなった。
深夜、買いに出る。
ハナマサにもむろん、鶏挽肉はあるが、
ここは大量。
鶏そぼろばかり、大量にできても仕方がない。
子供の頃からの好物とはいえ、この歳では
飽きるし、そうそう食べるものでもない。
三筋のヤマザキまで自転車で。
普通の大きさのパックを買って、帰宅。
作る。
と、いっても、まあ、ご存知の通り、
鶏そぼろなど、むずかしいものではない。
むずかしいものではないのであるが、
あの、鳥弁にに入っている鶏そぼろに近付けたい。
過去にもなん度も、鶏そぼろを作っているが、
普通に作ると、あの色にはならない。
あの色、とは、かなり黒っぽい色、
で、ある。
牛挽肉などでは、もともと色が黒いのだが、
鶏肉は、火を通すと、基本は白くなる。
あの色にするには、思った以上に
しょうゆで煮しめる必要がある、のである。
鍋に鶏挽肉を入れ、水はなしで、
酒、しょうゆ、砂糖。
濃すぎて、食べられなくなってもいけないが、
濃いめを目指す。
火が通ってくると、水が出てくるが、
これを煮詰めて、そぼろの方に、味を吸わせて
いく。
なんとなく、最近わかってきたのだが、
例の、穴子の煮汁を煮詰めた鮨やのツメ、
ではないが、和食では、昔から、煮汁を
煮詰める、というのはよくやられる技法で
あったのだと思う。
そして、煮詰めながら、
煮ているものに、味を含ませる。
野菜の煮物を、煮しめ、といっていたが、
文字通り、そういう調理法、なのであろう。
濃い味自体が否定されている今、あまり家庭では
やられていない方法かもしれない。
煮汁が完全になくなるまで、などと、
和食では、そういう言い方もする。
が、水がだいぶ出たので、色は濃くついてきたが、
まだ水分は完全にはなくならない。
(この煮方では、最初に入れたしょうゆの量が
多かった、ということだろう。)
味見をして、適当に、やめる。
鶏そぼろはできた。
鶏そぼろの、うまい食い方。
これは、一つ、ある。
なにかというと、卵黄をのせる、のである。
今はなくなってしまったのだが、随分昔に
浅草の観音様の裏、言問通りの北側、いわゆる、
観音裏に、小さいがうまい洋食やがあった。
(確か、よろずや純一、という名前であったと思うが、
憶えておられる方はあろうか。)
ここに、鶏そぼろご飯があり、玉子の黄身を
のせる、というのを教えてもらったのである。
この日は、そのまま黄身だけをのせて、つまみ。
翌、日曜の朝、飯を炊いて、
黄身をのせて、鶏そぼろご飯卵黄載せ。
うまいこと、おびただしい。
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