断腸亭料理日記2010
6月12日(土)第二食
土曜日。
今週も来週に迫った『講座』の準備。
資料やらは、ほぼ固まった、のであるが、
来月の場所を決めなければならない。
今月は、日本橋であるが、来月はどこにしようか、
で、ある。
実は、ある程度は、既に決めていたのではある。
(当初、事務局に出したものではなく。)
第一回が、池波先生が生まれ、育たれ、今、私が
住んでもいる、浅草。
そして、第二回が、江戸東京のまさに中心の、日本橋。
次は、、
川を渡って、、本所深川。
『池波正太郎と下町歩き』と、いうタイトルからすれば、
まあ、これは順当、で、あろう。
本所深川も広いが、じゃあ、
本所深川で、池波正太郎といえば、
真っ先に行かねばならぬところといえば、
どこか。
実際に長谷川平蔵の屋敷のあった場所、
菊川だが、これはまあ、よいだろう。
(碑があるだけ、ではある。)
思い付いたのは、深川森下。
私が好きな町でもあるし、
なんといっても、本所二つ目、
軍鶏鍋や、五鉄のあった場所とされている
二之橋も近いし、お熊婆さんの茶店のあった、
弥勒寺も近所、等々。
小説の世界だけではなく、両国から、森下まで歩けば、
回向院、本所松坂町の吉良邸跡、などもある。
両国から、森下は本所の南から、深川の北へ
またがって歩く、ということにもなる。
問題は、どこで食べるか。
このこと、である。
池波先生と、このあたり、というと、
色々あるのだが、普通に考えると、
高橋(たかばし)のどぜうや、伊せ喜。
どぜう、と、いえば、駒形どぜう、であるが、
先生は、駒形どぜうよりも、よい、と書かれてもいる。
だが、どぜうは、一般には好みが分かれるところ。
食べられない人も、いそう、で、ある。
で?
なのだが『講座』の皆さんに伝える前に、
ここに書くのは、問題があろう。
一応これは、秘密、に、しておく。
待ち合わせ場所も決め、7月分の予定の資料を作り、
TELで店に予約を入れ、これでほぼ、来週の準備は完了。
ほっと、ひといき、で、ある。
ひといきついたら、一杯。
毎度のことながら、昼から、ではある。
冷凍庫を開けてみる。
鮭の切り身があった。
これ、ムニエルにしようか。
ムニエルというのは、ご存知のように
フランス料理の調理法、で、ある。
舌平目のムニエル、なんというのが、
一般的には耳に慣れていよう。
フレンチの定義では、
小麦粉をまぶしてバターで焼いたもの、と、いう。
必ずしも魚、ではなくともムニエル、かもしれぬが、
よくみるのは、魚である。
フレンチには同じようにフライパンで
焼くものだが、ポワレ、というのもある。
ポワレ、とは、そもそも、フライパンのことで
フライパンで焼くことを広くいうのか。
しかし、狭義には小麦粉をつけないものを
いっているように思われる。
以前に、魚を鉄のフライパンで焼こうとして、
くっついてしまって、悪戦苦闘をしたことがあった。
魚がフライパンにくっつくと、見るも無残な状態になる。
これは、小麦粉なし、で、あった。
今日は、久しぶりにやってみようか。
小麦粉付きのムニエルで。
なんとなく、衣があると、くっつかない
ような気がする、のである。
凍った鮭の切り身をレンジで解凍。
解凍したものに、塩胡椒。
ここに両面、小麦粉をまぶす。
鉄のフライパンを熱くする。
根本的に、くっつく理屈がわかっていない、
のであるが、最近、中華鍋はくっつかないで
料理ができている。
中華鍋も鉄製ではある。
中華鍋は、一度煙が出るまで熱し、
一度たっぷりの油を回し、あけて、
もう一度、炒め用の油を入れている。
これで、なのかよくわからぬが、くっついていない。
同じように、煙が出るまで熱し、
油は多めに広げてみる。
ムニエルならばバターなのであるが、
サラダオイルとオリーブオイルの二種を
半々。
鮭を皮の方から、投入。
火は強火。
ふむふむ、くっつかないぞ。
強火から中火に。
切り身の縁が段々に色が変わってくる。
加減が難しいのだろうが、
片面、こんがりと色が付き、硬くなってきたのを
見計らって、ひっくり返す。
反対の面も中火で狐色の焦げ目が軽くつくまで。
OK。
皿にのせる。
なんとなく、このままではさびしい。
タルタルソースでもあれば、よいのだが、
生憎、ない。
マヨネースで即席に作ろう。
玉ねぎ1/4ほど、みじん切り、
ピクルスもあったので、やはり、みじん切り。
混ぜる。
OK。
皿に添える。
見栄えだけだが、ケッパーものせてみる。
くっつきもせず、
こんがりと、よく焼けた。
小麦粉のお陰か、火加減のお陰か、
はたまた、油の量の問題か、わからぬが、
今日は大成功。
味もよい。
うまいムニエルができた。
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