断腸亭料理日記2010

蕪の味噌汁 その2

さて、今日は昨日のつづき。
池波レシピの、蕪の味噌汁。


剣客商売に出てくる、蕪の味噌汁、のこと。

原作では、蕪に、池波先生は“かぶら”と、
ルビを振られている。
これは、なぜであろうか。

この蕪は、いわゆる、小蕪。
江戸東京野菜の金町小蕪、と、いっているものと
思ってよかろう。

今、東京では“かぶら”ではなく“かぶ”の方が
普通であろう。

“かぶら”というのは、関西、あるいは、江戸でも
古い使い方なのか。
古典落語(むろん江戸の)に蕪は出てきたろうか。
思い付かない。

確かなことはわからぬが、
古風な感じを出したかったのかもしれぬ。

西日本の蕪と東日本の蕪とは、
違っているのは、ご存知であろうか。

私もこれは、名古屋に転勤して、初めて知ったものである。
(名古屋では小蕪も売っていたと思うが。)

西日本の蕪は、大きく、粘りなどもあり、
和食のかぶら蒸し、などは、金町小蕪ではできない。
ものの本によると、西日本の蕪は、在来の日本種のもので、
江戸東京野菜の金町小蕪は西洋から入ってきたものの
系統であるという。

現代では、東京生まれの金町小蕪の系統の生産量が
全国的にみても、最も多いという。

ともあれ。

内儀さんが帰宅し、作り始める。

番組でもやっていたが、葉っぱは、塩もみに。

先に塩もみから。
葉っぱは根元から切り、洗い、さらに細かく切る。

味噌汁には蕪3個の二つ割りでよいだろう。
一把の残りは、薄く切って、葉っぱと一緒にボールで塩もみ。
蕪自身も塩もみだけでも、十分うまい。
ラップをして、置いておく。

蕪の味噌汁。

皮はむかず、そのまま。
鍋に入れ、水から煮る。

茹ってきたところでいつもの通り
網に鰹節を入れ、蕪を煮ながら、出汁も取る。


(この網は、急須に入っていたものの再利用である。)

このあたりがプロとは違うところ。
近藤先生は別に取った出汁に茹でた蕪を入れる。

プロはむろん、これでよかろうが、
家庭ではこんなことをする人はいない。

また、味噌汁の場合、実になる野菜を水から煮て
その煮汁に味噌を溶いて、味噌汁にすることによって、
野菜の出汁もそのまま味噌汁にすることができる、と
いう利点もある。
また、先のように鰹の出汁も網を使って、
実の野菜とともに煮れば、時間も手間もかからない。
(これは、確か、ためしてガッテン、でやっていたような
記憶がある。野崎洋光さんであったか、、?)

塩もみ。

20分経過。

味見。

ふむふむ、よいであろう。

皿に盛り、削り節もまぶす。


ちなみに。

毎度書いているが、この削り節は、
先の出汁用のものではなく、東日本で鰹節といっている、
粉がふいた(カビを付けた)いわゆる本節の削り節。
東京などで小さなパックに小分け包装されている
にんべん、などのものはこちら。

出汁を取るのは、かび付けをしていない鰹節、
荒節の、削り節。こちらは大きな袋で
売られていることが多い。

かび付けされた本節は、香りはよいが、出汁を取る場合、
煮すぎると、香りは飛んでしまう。これに対して
荒節の方は、多少時間はかかるが、濃い出汁が取れる。

同じ削り節でも実際にこれら二種は、製品規格上の名前も
区別されている。前者は“鰹節”削り節、後者が“鰹”削り節、
で、ある。(袋の裏を見れば、書いてある。)
生食用には鰹節削り節、出汁用には鰹削り節と、
私は使い分けている。
(鰹節削り節を出汁に使う場合は、鰹削り節で出汁を取り、
最後に入れ、すぐに火を止める。ダブル使い、で、ある。
プロなどは、こういう使い方もするやに聞く。)

塩もみ。


蕪も、葉っぱも、塩もみで、即席でもうまい。

また、昆布を細く切ったものを一緒に入れて、
数日置いても、またうまい。

蕪の味噌汁は、飯にぶっかけた。


これは、うまい。
蕪の食い方として、これ以上ないであろうと、
私は思う。

さらに、この蕪の味噌汁の、
蕪を煮崩したものを、飯にかけてもよい。

池波先生はこれを船頭飯、といっているのだが、
梅安に出てくる。

煮崩れた蕪を食べたご経験は、皆さんおありであろう。
これはこれで、また、うまい。


ともあれ。

蕪の味噌汁、庶民の普通の食卓のものとして、
大治郎でなくとも、うまい。







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