断腸亭料理日記2009

穴子料理・日本橋・玉ゐ

7月6日(月)夜

さて。

またまた、穴子。
日本橋に穴子専門店があると、人に聞いた。
初耳であった。

日本家屋でなかなか趣きがありそう、と、いう。

場所は、永代通りからちょうど、高島屋方向に
路地を入ったところのよう。

営業時間も9時ラストオーダーと比較的遅い。

8時前に仕事を終え、オフィスを出る。
市谷から日本橋だと、東西線。
東西線までは、歩いて、神楽坂か、
市ヶ谷駅からJRに乗り、飯田橋から、か。

今のオフィスは、市ヶ谷駅に近いので、JRで。

東西線の日本橋駅で降りて、永代通りの高島屋側に出、
店は、三井住友銀行の脇の路地を入り、すぐ左側。

江戸の地図を出しておこう。


(日本橋のこの界隈は、いわゆる区分図にあたる、
切絵図が手元になく、江戸全図から。)
小さくて、恐縮、で、ある。

日本橋は、今は、中央通りに沿って、両側が日本橋。
永代通りまでが一丁目。高島屋、丸善までが二丁目。

昔は、中央通りに沿って、両側に通(とおり)町の
一丁目から、四丁目まであった。
しかし、この通町は、文字通り中央通りに沿ったところだけで、
すぐ裏は、それぞれ別の町名であった。

ご近所、中央通りをはさんでちょうど反対側にある、
小体で乙な、蕎麦や、やぶ久にはよくくるが、こちらは、呉服町。

永代通りをはさんで、反対側の、洋食や、たいめいけん、は
青物町(あるいは、音羽町か。)であった。

そして、この玉ゐのある界隈は、平松町と呼ばれていた。

店の前まできてみると、


なるほど、話通り、なかなか日本家屋の乙な店構え、で、ある。

こんなところにこんな店があるのは、知らなかった。

8時半前、空席もちらほら。

カウンターのような席もあったり、
奥に向かって、階段があり一段上がった造りになっている。

奥へ、と、案内される。

座って、瓶ビール。
エビス。

ここは、穴子専門店なのだが、箱飯と店では呼んでいる
うな重のような、大中小三種類のお重が中心である。
それも、穴子は煮たのと焼いたのと、二種類がある。

メニューを見ると、刺身などがついた、
中の大きさの箱飯のセットがあり、これをもらうことにする。

まず、刺身からきた。


穴子の刺身、と、いうのは、初めてであるが、
これはちょっと、瞠目に値しよう。

白身であるが、時期もよいのだろう、
しこしこした歯応えに、脂がたっぷりあり、うまい。

箱飯。


薬味などがついている。

蒲焼の上に、肝、の、ようなものも乗っている。

手前から食べてみる。
これは、焼いたもの、蒲焼、で、あろう。

ふっくらと焼かれ、脂もありうまい。

うなぎの蒲焼との違いは、脂はあるといっても、
穴子は、海の魚で、うなぎよりは淡白である。

先に書いたが、この店では、煮穴子と、蒲焼穴子を選べ、
箱飯は、真ん中の、中、の、大きさから、両方のせる、
というのも頼める、と、聞いていたのだが、
注文の時に、特に聞かれもしなかった。

半分食べて、もう一つの切り身を食べてみる。
これも見た目には、同じよう。

蒲焼としても柔らかいので、食べても、よくわからぬ。
同じ、蒲焼、かもしれぬ。

ともあれ、うまいものは、うまい。

そこそこ食べると、茶漬けにするための
出汁が運ばれる。

お椀に盛って、出汁をかけて、穴子蒲焼茶漬け。


わさびをつまみながら、すすりこむ。

これも、なかなか、乙なもの、で、ある。

うまかった。

会計をして出る。

調べてみると、この店は、建物も含め老舗のような趣き、であるが、
実際は、開店は、2005年で、4〜5年しか経っていないらしい。
なんでも、戦後すぐの酒屋の店舗を使っている、と、いう。

なるほど。
商売上手、で、ある。

しかし、味は、なかなかどうして、うまい。

この店がどういう経営であるのか、よくわからぬが、
この近所の宝町にも支店があり、また、最近は、日暮里駅の中にも
店を出した、という。このあたりも
ある程度、手広い商売(チェーン化?)を志向しているようにも見える。

老舗のように、見える、見えてしまう(?)のは
お客にとっては、必ずしも、わるいことではないだろう。
趣きがあるし、落ち着ける。

一点だけ、いうとすると、客あしらい。
これが、いま一つ。

老舗然としているので、なんとなく、
そういう目で見てしまったのだろう。

客商売のサービス態度、の、ようなものは、
開店数年の店では、老舗のように、こなれたものになるのは
よほど、しっかりした教育をしていなければ、
むずかしかろう。

(そういう意味では、ここの客あしらいは、一般の居酒屋などと
比べれば、普通、と、いうこと。)

老舗の客あしらい、と、いうのは、むろん、店により、
いろいろあるが、それなりに、芯が通ったものがある。
(高飛車なら高飛車で、ある意味芯が通っている店もある。)
よいにつけ、わるいにつけ、それが老舗というもの。

このあたりの、ギャップのようなものを
この店では、感じた、と、いうことである。





東京都中央区日本橋 2-9-9
電話 03-3272-3227


HP





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