断腸亭料理日記2009

上野・とんかつ・双葉

7月10日(金)昼

さて。

金曜日、で、あるが、今日はよんどころのない
家の用があり、休みを取る。

外を回る用と、家での事務作業。

外での用は、午前中に済み、御徒町に戻ってくる。

昼は、御徒町にしよう。

なにがよかろうか。

このところ、とんかつが食いたかった。
とんかつといえば、上野・御徒町。

上野・御徒町といえば、とんかつ。

上野・御徒町はとんかつの発祥の地、と、いわれている。
この件については、一度考えてみた。

「とんかつ史?考察」

洋食やのメニューであった、カツレツが分離独立し、
和食のとんかつや、という業態が生まれ、一般化したのは
明治末から、大正、昭和の初め、と思われる。

この頃に創業しているとんかつやが、この界隈には、
複数軒ある、ということ。

ぽん多

が、明治三十八年、

蓬莱屋

は、大正三年、井泉は昭和五年。
(井泉はほうぼうにあるが、上野のこの店には
私はいったことはない。)

上野とんかつ御三家という言い方があるのかどうか
よくわからぬが、この老舗三軒に、もう一軒有名なのは、
双葉。

双葉は比較的新しく、戦後、昭和四十三年という。
(双葉は、池波先生も、いかれたと、書いていたように思うのだが、
どこに書いていたのか、今回探したのだが、わからず、
出典を明示できないので、今日は一先ず、
断腸亭として、池波レシピには入れないこととする。)

ぽん多、蓬莱屋には、いってみた。
どちらも、味もよく、個性もあるよい店であった。

そして、まだ食べたことがなかった、双葉。
ここは、有名であるが、これない理由があった。

営業している時間が極端に少ないのである。
営業日が火、水、金、土の四日間。
その上、昼のみ。

それでも、やっているはずの時間に、なん回か、きたことはある。
その度に、列になっていたり、店の前に「只今満席です。」と
札が出ており、あきらめていた、のであった。

今日は、ウイークデーであれば、大丈夫であろう、
という頭、も、あった。

場所は、寄席の鈴本の裏、といえばわかりやすいか。
広小路から路地を入ったところ。

12時半すぎ、店前にきてみる。
と、やっぱり、「只今満席です。」の札。

えーー!。
まじかよ、、。ウイークデーなのに、、、。

この「満席」の札と、「お子様お断り」の貼り紙も
同時に入口に掲げられており、この二つが、
入りにくくしていたのである。

今までは、ここであきらめていたが、
今日は、戸を開けてみる。

すると、少々、お待ちください、と、女将さん。
一杯ではあるが、中で待っている人もおらず、

この時間であるので、入れ替わりの頃であろう。
少し待てば、入れそう。

入口の椅子に座って待つ。

案の定、5分もかからず、座れる。

暑かったので、ウイークデーであるが、
昼から、やっぱりビール。

今日は、ほんとうに、蒸し暑い。

扇子をパタパタ。
(今日の扇子は、鳩居堂で買ったもの。
あれから、日によって、気分で、扇子を持ち替えている。)


ウイークデーの昼に、ビールを呑むのは、それでも
なんとはなしに、後ろめたいものがある。

ここは、ロースかつと、その定食しかない。
定食にはせずに、頼んだのは、ロースかつのみ。

待つこと、10分ほどであったか、きた。


揚げ色は、比較的、薄め、ではなかろうか。
ラードの香りはあまりしない。
軽めか。

食べてみる。

これは、これは。
うまいぞ。

柔らかく、うまみ、あまみのある肉の味。

脂身はほとんど取ってあるようだが、それでも、
このうまみは、なまなかなものではないだろう。
肉が違いそうである。

ビールを呑みながら、じっくりと、味わう。

しみじみと、うまいとんかつ、で、ある。

食べていると、頼んだわけではないが、キャベツの
お代わりを持ってきてくれた。


ここのキャベツは、芸術的に、細く切られているのでは
なかろうか。
細いので、お代わりも簡単に平らげる。

うまかった、うまかった。

お勘定をして出る。

女将さん、若いおねえさん(娘さんであろうか)、
ご主人の三人が、なん度も、ありがとうございます〜〜、
ありがとうございました、と、送り出してくれる。

それまで抱(いだ)いていた、敷居の高そうなイメージは、
とんかつの味と、この応対で、一気に吹き飛んだ。

営業時間の短いのは、肉をそうとうに吟味している、と、
いうことでなかろうか。

そして、子供お断り、も、店の雰囲気を
大切にしたいということだろう。

これらは、とりもなおさず、お客に、満足のいく、とんかつを
味わってもらいたい、という真摯な姿勢、ではないだろうか。

どうであろうか。
私としたら、前二軒と比べても、ここのとんかつと、
店を、筆頭に挙げたい。

上野、とんかつ、双葉。
よい店であった。

そんなこんな。

ここから、店を出て、広小路を渡り、ぶらぶらと、アメ横へ。




住所 東京都台東区上野2−8−11 
電話 03-3831-6483





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