断腸亭料理日記2009

蛤フライ・煮蛤

7月6日(金)夜

上野のとんかつや双葉を出て、広小路を渡り、ぶらぶらと、アメ横へ。


一応、いつもの、魚やをのぞいてみる。

今日、目についたのは、、、
蛤。
(蛤は、別段、今日でなくとも、ほぼ、いつもあるが。)

これも先日の池波先生の「食べ物日記」からなのだが、
蛤のフライ。
比較的よく、ご自宅での食卓にのぼっていた。

自分自身、あまり食べた記憶があるメニューではなかったので、
食べたいと、思っていたのである。

フライにするとなると、大きなものでなくてはいけない。
今、大きなものは、吉池でもそうとうに高い。
(一つ500円程度かもしれない。)

ここのものは、むろん小さいものだが、一山どさっとあって、
500円。

小さいものでもいいから、やってみようか。

購入。

とんかつで、ビールで、少しもの足りぬ感じもしており、
ここからの帰り道、上野藪に入り、せいろ一枚。


帰宅し、蛤は、塩水のボールに入れて置く。

あとは、残りの事務作業を7時頃まで。

さて、作業にひと段落つけて、蛤。


(右側にあるのが、貝むき。)

夏なので、鮮度に一抹の不安があったのだが、
塩水に漬けておいた蛤は、ボールから外へ水を吹くほど、
元気がよい。
これならば、大丈夫そうである。

小さいが、むき身にし、フライに挑戦してみよう。
大き目のものを選(よ)ってむいてみる。

口を開けているもの、指で広げながら、貝柱のある場所、
と、思われるところに、貝むきの歯を入れ、
貝殻に沿って、貝柱を切るように、歯を動かす。
貝柱は二か所あるので、もう一か所も切り、こじ開ける。
下側になった身の下にも歯を入れ、こちらも貝柱を切る。

よく、浅蜊などもそうだが、貝をむいているのを
見たことがあるが、プロは目にもとまらぬ早業。
数秒でむいてしまう。

私などは、むろん、もっと時間はかかるが、
前述の要領でむけば、一応のところ、問題はなくむける。

蛤も、このくらいの貝の大きさだと、むいてみると、
浅蜊程度。

これをフライにするのは、どうにも頼りない。
が、まあ、やってみるか。

都合6〜7個。

残りは、鮨やの蛤、煮蛤(ニハマ)を作ってみるか。
煮蛤、といっても、あれは一度、茹でてから、漬けこむ。

先にやっておく。
鍋に水を入れ、蛤を入れ、貝が開くまで、煮立てる。

開いた所で、これは置いておく。

さて。
フライ、むき身の衣づけ。
いつもの通り、小麦粉、玉子冷水に小麦粉を溶いたもの、
パン粉の順でつけ衣づけ。

フライ油を用意し、揚げる。
小さいので、すぐ、で、ある。


ソースで、あろうか、塩でもよいのか?
一先ず、ソースで食べてみる。

うーむ。
やっぱり、これだけ小さいと、味がよくわからない。
(衣とソースの味、か。)
だめか、、、。

大きなものでなければ、、。

今度大きいのを奮発し、再挑戦してみようか。
(大きいもので500円。まったく高いものである。)

さて。
湯がいたもの。

こちらは、茹で汁は、吸い物になるので、とっておき、
貝だけ取り出し、貝殻から外す。

漬け込み用のつゆ。
酒としょうゆ、気持砂糖も加えて、
火にかけ、煮切る。
漬ける時間で鮨やでも濃さは変えるらしい。

早く食べたいので、ちょっと濃いめかな、
と、思われる濃さに。

2〜3時間で食べてみる。

穴子の甘いタレも鮨や同様にかけてみるが、
鮨やで食うものほど、やっぱり、迫力がない。

味は決して、まずくはないが、やっぱり、大きさ。
味が濃くなりすぎるので、残りはつゆからはあげておく。

翌朝、これは、飯を炊いて、のせ、たれもかけて、
蛤飯(?)にし、食べてみた。(茹で汁はつゆ、と、して。)


やはり、ここまできて、やっと、"らしい"感じがしてきた。
つゆも、蛤の吸い物である。うまい。

ともあれ。

大きさがこれほどものをいう、ものも珍しいかもしれぬ。
蛤の場合、吸い物であれば、小さくとも、らしい味は、
変わらないと思われる。
しかし、フライにしろ、漬け込みにしろ、大きくなくては、
うまさ半減、いや、存在感すらなくなってしまう。

昔は、大きいものがたくさん獲れ、漬け込みの鮨ねた、に、
しても、フライにしても、できてきたメニューだったのだろう。

大きいのが少なくなり、価格が上がったのは、乱獲、
環境の悪化、ということなのか。

安くて大きな蛤は、もう夢の話なのか、、、。






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