断腸亭料理日記2009

断腸亭、モロッコへ行く その3

さて。

断腸亭の夏休み、モロッコへ行く、その3

カサブランカの中心街を歩いてモロッコ料理レストランへ
昼飯を食いに行く。

場所はハイアットに近いが、アールデコな街並みの新市街。
その中に、モロッコ風の瑠璃色が印象的な、細かいタイルの
モザイクで装飾を施したエントランス。
Imilchil(イミルシル)というモロッコ料理のレストラン。





そういえば、この瑠璃色を基調とする、細かいアラブ風の装飾は
先に、“モロッコ風の”と、書いたが、昨年のドバイでは
そういえば、あまり見かけなかった。
正確にいうと、模様は同じように見えるのだが、色、で、ある。
ドバイにはこの瑠璃色はなかったように思うのである。

これは、ホテルのロビーだが、やはり、多く瑠璃色が使われている。

モロッコでは、モロッコ料理や、だったり、陶器の灰皿から調度品、
室内の装飾、など、モロッコをイメージさせたいものには、
いたるところで、この模様に、ラピスラズリ、と、いうのだろうか、
瑠璃色が使われている。

我々の眼には新鮮な、この冴えた青紫色は元来、中国西域から、
中央アジア、アフガンから、アラブで好まれた色であろう。
そういう意味では、イカニモ、な、色。

そうした、イカニモ、アラブらしい演出をしよう、と、いう場合には
モロッコでは使われる、と、いうことなのか。
庶民の住居などにも特に使われてもいないようであった。
また、マラケッシュのちょっと高級なホテルの
インテリアなどではこの色は、あまり見られなかったので
最近のトレンドではない、と、いうことかもしれぬ。
たとえば、今の東京のお洒落な和食やでは、イカニモ和風な
演出はあえてあまりしないように。


ともあれ。

イミルシル。

木の重いドアを開けると、中はアンダーな照明でデコラティブな
アラブ風の内装。先客はなし。にこやかに店のおじさんが迎え、
入口すぐのテーブルに案内される。

テーブルが、浮き彫りが施されている金属。
銀、で、あろうか。

ビールをもらう。


モロッコはイスラムの国であるが、ローカルのビールも
作られている。
これは、その名も、カサブランカ、というブランド。
味は、日本人の舌でも特段の違和感はない。

さて、なにを頼むか。
(英語のメニューがあるところでは、気を利かせて
それを持ってきてくれる。)
モロッコ料理は、初めてなので、まずはノーマルなもの。
タジン料理、というのが一つ。
これはガイドブックによれば、

「モロッコ人が毎日食べている煮込み料理。厚い陶製の皿に材料を入れ、
そこに三角のふたをかぶせて弱火にかける。中身は鶏肉、羊肉に野菜など
さまざま。サフランやパプリカなどのスパイスで味をつける。」
(地球の歩き方)

とのこと。

チキンのタジンと、それから、内儀さんの希望で、ラム肉のタジンも。
内儀さんは北海道の出身でこっちへくれば、ラムが食えると
楽しみにしていた。

内儀(かみ)さんの希望で、スープ。
これも、モロッコの名物、と、いう、ハリラ。

それから、クスクス。
これもモロッコの代表料理、で、あろう。
同じく、ガイドブックには

「北アフリカを代表する煮込み料理。スムールという粗粒状の小麦を蒸して、
野菜と羊肉や鶏肉、魚を煮て、中身とスープを分けて出す。これらをスムー
ルにかけて混ぜて食べる。うま味の決め手は各家で違うスパイスの調合。」(同)

だ、そうな。

スムールというのは、材料の名前で、クスクスは料理の名前であった。

スムールは「デュラムセモリナ小麦を水で湿らせてから挽き、
乾燥させたもの。」(フランス料理情報サービス)

これもパスタの一種で、日本でも売っている。


そういえば、作ったこともあったっけ。
これ、モロッコ料理にけっこう似たもの、で、あった。)


パンがきた。
モロッコのパンである。
このパンとはこの後も、ずっとつき合うことになる。
丸く、ちょっと薄め。
メジナの街角で、お婆さんが売っていたり、露店で
ケバブをはさんだり。旧仏領のモロッコでは、フランスパン
(バケット)も同じくらいメジャーだが、やっぱり、このパンが
モロッコ人にはお好みのよう。
バケットほどは硬くはないが、適度の硬さがあり、
なかなか香ばしくうまいパンである。

付いてきたのは、手前の赤いのが、ちょうど中華の
豆板醤のような、唐辛子のペースト。むろん辛い。
左の茶色いのが、クミンのパウダー。上の白いのは塩。

ハリラ


モロッコでとてもポピュラーなスープのよう。
この後も、なん回か出てくる。
入っているものは、ひよこ豆やらレンズ豆やらの豆類、
それから、肉、トマトなど。ポイントは、生のコリアンダー、と、
生のミント、の葉が入っているということ。
豆がたくさん入っているので、ちょっとトロミがあり、
お粥のような感じもするもの。
(実のところ、生のコリアンダーはちょい苦手、なので、
私には、このスープ、いま一つ。)


チキンのタジン。
三角のふたは取られている。

鶏のもも肉。左の黒いものがデーツ。
多少クミンなどの香辛料が効いているが、
デーツがこれだけ入っているので、とても甘い。
甘いが、なかなかに、うまい。


ラムのタジン。
やはり、柔らかく、これも、うまい。


クスクス。
蒸したものか、柔らかい野菜がのっている。
(スープのようなものはついていない。)
その上にのっているのは、レーズン。
最初に、特徴はスパイスの調合などと説明されていたが、
これは、特段に尖ったスパイスは入っていない。

全体として、モロッコ料理は、甘めのようであるが、
どれもうまかった。
ここは、情報通り、で、あった。

勘定をして、出る。

ここから、城壁の中、メジナへ向かう。
メジナの中には、スーク=市場がある。

ドバイもそうであったが、スークには、なんでもある。
衣料品から靴、おもちゃ、家電品、スパイス、野菜、肉、魚、
パン、菓子、などなどほぼ生活に必要なものは、なんでも。
細い曲がりくねった路地に、所狭しと店が軒を連ね、品物が
置かれ、ぶら下げられている。

やっぱり、ここも、観光客向け、というのではなく、
地元の人が買い物にくる場所、といったところであろう。


こうした場所では、あまり、カメラを構えられないので、
写真はこれだけ、で、ある。

それなりに見ていておもしろいのだが、
肉、魚を売っているところは、ちょっと、
においがきつかった。

カサブランカは海辺でもあり、魚も豊富。
見たところ、大きな鯵など、我々に馴染みのあるものもあるのだが、
炎天下、氷もなしに、バケツに入れられており、
せっかくの魚が、グッタリ。
(我々は見るからに観光客で、買うはずがなかろうに、
覗き込んでいると、やっぱり、売り込むのはなぜであろうか。
まさか、築地の魚河岸を観光している外人に仲卸の皆さんは、
売り込みはしまいに。)

これは、香港などもそうだが、鶏なんぞは、生きたまま
籠に入れて売っているのだが、やっぱり、いい気持ちはしない。
(籠の中で、目もうつろで、ぐったりしている鶏を見ると、
かわいそうな気もするし、インフルエンザは大丈夫か、
などと、息を止めて通りすぎたくなってしまう。)

メディナを出て、再び、新市街の方へきて、
庇の下の歩道に面した、カフェでほっと一息、一休み。


やっぱりフランス式なのであろうか、
cafe(キャフェ)、と、いえば、エスプレッソが出てくる。

ここからまた、タクシーの運転手と格闘し、
ホテルまで戻る。

この晩の夕飯は、最初なので、ホテルのレストランで。

せっかくの、カサブランカなので、シーフードを、
と思い、頼んだ、海老と魚の串焼きのようなもの。


monkfish、と、いっていたような。
モンクフィッシュとは、鮟鱇、の、こと。

そういわれると、白身でプリッとした食感は、鮟鱇、らしい、、
のだが、ちょっと、生ぐさいし、海老はもっと、、、。

昼間、スークで売られている魚を見ているからかもしれぬが、、、
火を通しても、鮮度の落ちたものは、どうにもならない。

カサブランカでは、シーフードを食べねば、などと
ガイドブックには書かれているが、これでは、とても、、、。

と、いうような、感想を、海外で、いってはいけないのかもしれぬ。

しかし、それにしても、やっぱり、世界中で、日本人ほど、
魚にウルサイ人種はいない、だろうと、しみじみ、思われる。
だからこそ、鮨がこれだけ世界に広まった。

船に揚がった魚は、生き〆をし、傷が付かぬように
また、鮮度が落ちぬように、一本一本箱に入れ、温度管理も、、、
こんな魚の扱い方は、モロッコ人からすれば、夢にも思い描けなかろう。

日本人ほど魚介類が好きな民族は世界にどこにもなく、
それらをどうやったらよりうまく食えるか、を、
もうなん百年間も考えており、今も考え、これからも
考えていくであろう、、、。

世界に出ると、自分達というものがよりはっきりと、
見えてくるものである。



といったところで、今日は、これまで。
つづきは、また明日。







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