断腸亭料理日記2008
2月28日(木)
今日は、食いものの話ではない。
ちょっと、毛色が違うが、橋、の、名前のこと。
昼をはさんで、九段下方面に打合せに出た。
先日、三崎町の路麺、とんがらしの回で、
日本橋川について少し触れたが、この九段下、
靖国通りが日本橋川に架かる橋は、俎板(まないた)橋という。
ここもご同様に、首都高が上を走り、たいして見栄えもしないが、
江戸から続く橋の名前である。
俎板なんてまた、妙な名前であると、以前から思っており、
由来を調べてみると、なんのことはない、簡素な橋で、
俎板のようであったから、ということで、
たいしておもしろくもない。
ここは江戸の頃から、やはり、細い通りではないと思われるが、
こんな名前がずっと残っているというのも
逆におもしろいかもしれないが。
と、いうようなことで、少し、東京の橋の名前を調べてみた。
橋の名前の中で、この俎板橋なんというのは、
やはり珍しい方である。
素材の名前、と、でもいったらよいのか。
同じようなのでは、板橋。
板の橋だから、板橋。シンプルである。
土の橋で、土橋、というのもある。
新しいから、新橋。
これも近いかもしれぬ。
また、よくあるのは、地名である。
隅田川では、駒形橋、蔵前橋。
両国橋も、ちょっと洒落が入っているが
武蔵と下総で、両国、まあ地名の変形か。
または、ある種の意味を込めたもの。
長く続いてほしいという意味で、永代橋。
日露戦争の戦勝を祝って、勝鬨橋。
変わり種をみてみよう。
落語、十徳に出てくる、一石橋(いちこくばし)。
これも、先日の日本橋川で触れた。日本銀行のそば、常盤橋の次。
橋の両方に、後藤さんという家があり、大水で橋が流されてしまった時に
金持ちの両後藤家が出し合って架けた。
後藤(五斗)、後藤(五斗)で、一石、という洒落であるという
ことなのである。
(真偽のほどは、よくわからないが。)
鎧橋(よろいばし)。
これはご存知であろうか。
昔は、渡し(舟)の名前。
同じく日本橋川、兜町、証券取引所前に架かる橋。
鎧と、兜の組み合わせ、で、ある。
これは、今でも付近にある、鎧稲荷というお稲荷さん。
そして、その境内に源義家縁(ゆかり)の兜岩というのがあり、
鎧と兜は、これらに因むらしい。
神話系、とでもいったらよかろうか。
もう一つ、神話系。
これも有名かもしれぬが、面影橋。
神田川(江戸川)に架かる橋で、高田馬場の近く。
都電の駅名にもなっている。
なんでまた、こんなおセンチな名前であるかと思うのだが、
戦国時代の伝説のようである。
(詳細は長くなるので、新宿区のページをご参照されたい。)
同じく、神話系で有名なのは、業平橋。
いまさら、筆者が書くまでもなかろう。
(以前にも書いている。)
名にしおはば いざこと問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしや
有名な伊勢物語に出てくる在原業平の歌。
これに因んでいる。
並べてみると、意外に、東京にもこんな神話めいたものが
多少はあった、というのに驚くほどである。
書き始めたら、きりがない。
おもしろいものが随分ある。
(この企画、もう一回書いてもいいくらいである。)
もう一つだけ。
泪橋。
これは、南千住、駅そばのガードから、南へいって
明治通りの交差点の名前になっている。
以前は、浅草から、小千住へ向かう奥州街道が
思川という細い川に架かる橋の名前である。
あしたのジョー、に出てきたりするので、
知っている方もあるかもしれない。
この悲しい名前の由来は、小塚原(こづかっぱら)の刑場に
向かう罪人の家族が涙を流す橋であったから、と、いうことである。
(因みに、小塚原が北の刑場であったのに対して、
南は、大井の先の、鈴ヶ森。ここの立会川に架かる橋も
泪橋といったらしい。)
そんなこんな、東京の橋の名前、で、あった。
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