断腸亭料理日記2008
2月27日(水)第一食
軽い、二日酔い、で、ある。
仕事の話、で、あるが、大事な報告がひとまず終わったというので
(内容的には、まったく終わっていなく、より重くなって、
継続している、のであるが、、。)
昨夜、まわりの人間と、結構呑んだ、結果である。
ともあれ。
二日酔い、となると、路麺、で、ある。
拙亭の最も近所、小島町のアズマ。
どうであろうか、ここは、真夏はともかく、秋から春には、
一週間に間違いなく、一回は朝、来ているのではなかろうか。
ほっとくと、もっときてしまう。
そば一杯とはいえ、天ぷらものるし、
オフィスワークで、ウイークデーの昼間は
歩くことも少ない生活をしているので、
食べ過ぎはいけない、と、思ってセーブしているのではある。
路麺、路麺、と、毎度書いているし、
なん回か、考察もしている。
路麺とはなにか。
もう一度、定義してみると、
町角にある、立ち喰いそばやで、個人営業の店、
と、いうことである。
まあ、それはよい。前にも書いたような気がするが、
この路麺、というのは、拙亭近所には、妙に多いように
思うのである。
近所とは、台東区。
それも、浅草橋、秋葉原から、御徒町、上野、浅草、三ノ輪あたりまで。
この日記でなん度も書いている、浅草千束のねぎどんを筆頭に、
同じく千束の山田屋、三ノ輪の峠のそば、同じく長寿庵、
北上野の山田製麺所、松ケ谷のえちご、三筋の店名はミスジ、で、あったか、
浅草橋4丁目の、たけみ、ギリギリで台東区の外、
神田和泉町になるが、凸版印刷前の名店、二葉、などなど、、。
いわゆるチェーンの立ち喰そばではなく、
みな、個人営業で、正真正銘、路麺、で、ある。
たいして広くもない地域にこれだけ路麺がある、というのも
東京都内でもまれにみる、密度、ではないだろうか。
台東区のこの界隈以外で路麺が比較的多いのは、
神田周辺、日本橋、新橋、神楽坂、、このあたりであろうか。
なぜ、台東区のこの界隈に路麺が多いのか、の前に、
路麺はどんなところにあるのか、
どういう立地、どういう歴史があるのかを
少しみてみたい。
路麺が生まれたのは、戦後らしい。
闇市、ではないのかもしれぬが、近い時代、で、あろう、
簡易にうどんやそばを食わす業態として、
始まったようである。
闇市というと、ガード下、新橋、神田、御徒町、、
そんな連想が働く。
山の手ではなく、下町。
それも、ちゃんとした官庁街や大企業が並ぶオフィス街、
永田町や大手町、八重洲、ハイソな銀座でもなく、
日本橋も中央通りではなく、少し外れたところ、で、ある。
やはり、あまりいい場所ではないところ。
しかし、なんとなく、うなづける、立地である。
職人やら、大企業ではない会社や商店に働く人々が
ちょいと、朝飯やら、昼飯やらに早く安く、食べられる。
そんな業態として始まり、生き残っているのであろう。
そこまではわかったが、ではなぜ、台東区のこの地域に
さらに多いのであろうか。
特に、今日のアズマの立地はおもしろいだろう。
春日通りと、清洲橋通りの交差点という場所で、交通量は
比較的多いとは思うが、新御徒町の駅ができる前は
御徒町や、稲荷町からは随分と離れたところにあった。
なぜ、こんな場所で成り立っていたのか。
そして、実は、この地域には製麺所も多く、
ねぎどんや、山田製麺所、たけみ、と、もともと、
製麺所であったところも、この狭い地域で3軒もある。
よっぽど、この界隈に住んでいたり、仕事をしている人が、
立ち食いそばが好きなのか?
台東区は、昔からの下町で、かつ、実のところ、
大企業はほとんどない。
職人や、商店に務める人々の多い街。
そして、浅草や上野の中心を除けば、華やかな盛り場でもない。
(もっとも、上野や浅草は、繁華街だが、ハイソではない。)
台東区のこの地域は、そういうところとして、
戦後から今に至るまで、続いている。
きっと、以前には、この台東区以外の神田、日本橋、
築地、新橋、などにも路麺はもっとあったのではなかろうか。
町がきれいになり、再開発されたり、というような中で
なくなっていった。そういうことなのかもしれない。
さてさて、そんなわけで、小島町の、アズマ。
いつもの通り、暖簾をくぐって、カウンターに座り、
「そばで、野菜かき揚げ」、と頼み、出てくる、一杯。
あたたかく、湯気が立ち、べらぼうにうまい、
というほどではないが、しょうゆが強く、
そこそこうまい、週に二回は食べたくなる。
台東区らしい、気の置けない、愛すべき路麺、の
一杯の、そば。
小島町アズマは、そんな店である。
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