断腸亭料理日記2007
さて、今日は昨日の続き。
ふとしたことで、お知り合いになった、
墨田区文花の「長屋茶房・天真庵」へいく。
戦争直後の建物を改造して、一階が茶房、二階が陶器を中心とする
ギャラリー。
昨日は、到着し、二階を見て回ったところまで。
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下へ降りると、カウンターの上にお酒とご主人である野村氏
お手製の蕎麦ができていた。
茶房としては、コーヒーと蕎麦、というのが
看板である。
コーヒーは、毎日手ずから焙煎し、一杯一杯淹れる。
蕎麦も毎日、手打ちをする、という。
このお店、と、いうのか、「長屋茶房」そのものが一つの
作品なのであろうが、ここは、ギャラリーをみて、コーヒーを飲み
また、蕎麦を食い、酒も呑める、そんなところである。
まあ、不思議といえば不思議な空間であるが、
これがまた、不思議と懐かしく、落ち着ける空間。
上のカウンターというのも、
廃業した居酒屋のカウンターをもらってきた、
というようなものらしく、分厚い一枚板。
煙草なのかなんなのか、ポツポツと焼け焦げがあったりで
よい感じである。
改装のお話やらを聞きながら、
呑み、蕎麦を食い、コーヒーもいただく。
どうも、昨日から、呑みっぱなしである。
あまりにも居心地がよいので、長居になってしまう。
お名残惜しいが、お暇(いとま)をし、ここから、
近所のキラキラ橘商店街、というのをまわり、
向島まで出ようということになる。
この「天真庵」の前の通りは、昨日も書いたが
十間橋通り、という。
北十間川に架かる橋の名前からきている。
墨田区は江戸の頃は、南側は本所で、
江戸府の内であり、町、あった。
しかし、ちょうど、今のこのあたり、浅草通りから北は、
既に郊外となり、寺島村だの、小梅村だの、農村であった。
この、文花のあたりは、吾嬬村。
北十間川、曳舟川をはじめ、中居掘やら、中小の堀川が流れ
大雨でも降れば、すぐに水浸しになった、というような
話も残っている。
志ん生師なども、業平あたりに住んだこともあったようだが、
師の、その名も「なめくじ艦隊」という本も出ている。
この、『なめくじ艦隊』とは、業平の頃、家の中が湿気て、
壁になめくじが何匹も這い、なめくじの本体と、その通った跡が
なめくじの艦隊のようだ、ということなのである。
また、これも志ん生師がいっていたと思うが、
本所(ほんじょう)に蚊がなくなって大晦日
なんという川柳もあり、それだけ、蚊が多かったという。
(ちなみに、本所は、古くは、ホンジョウと発音していた。)
もっとも、こうしたことは本所や、向島に限らず、
浅草にしても、江戸東京の下町は、もともと低湿地であり、
すぐに、水が出る、というのはどこも同じであった。
明治に入り、本所側から、工業地化しはじめ、
錦糸町の精工舎、文花の花王石鹸、
札幌麦酒(吾妻橋、後にアサヒビールに。)
北部では、鐘淵の鐘淵紡績(後の鐘紡)などなど、
大きな工場もできていった。
北部のこのあたりも徐々に、都市化が進み、震災後の
昭和に入り、昭和7年、それまでの南葛飾郡から向島区となる。
その後、本所向島問わず、東京大空襲で壊滅的な被害を
蒙ったことは、ご存知の通りである。
戦後、本所区と向島区は一緒になり、現在の墨田区となっている。
さて、十間橋通りからキラキラ橘商店街まで向かう。
十間橋通りは、東北方向に向かっており、
まっすぐ行くと、右にカーブし、明治通りに当たる。
その手前に、東武の亀戸線という線路を渡る。
東武亀戸線というのは、JR総武線の亀戸から、同じく東武の
曳舟駅までを結んでいる線である。
通りがかりのご近所の小母さんに道を聞きながら、
キラキラ橘商店街を探す。
目的は、コッペパン屋さんである。
十間橋通りから左に路地を入る。
こちら側は、町名は、押上から、京島。
いかにも、下町、という細い路地をいくと、
いきなりそれらしい、商店街に出た。
商店街の通り自体も広くはない。
普通、商店街のイメージとしては、
駅前にできるもの、というのがあると思うが、
下町はそうではない。
むろん駅のそばの商店街もあるが、密集した家々の中に、
ある通りが、いきなり商店街になっている、というところが
少なくないのである。
拙亭の近所でも、佐竹商店街もそうだし、鳥越のおかず横丁もしかり、
江東区の、砂町銀座、なんというのも有名だが、そうかもしれない。
つまり、駅などができる前から、あったか、
あるいは、家が建て込んできて、自然発生的に、
できた、ということなのであろう。
ここも、あえて最寄駅を探せば、曳舟、ということになるが、
別に、駅前から続いているわけではない。
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またまた、今日は、ここまで。
明日に続く。
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