断腸亭料理日記

鰹節のにぎりめし

8月4日(木)
深夜。

暑さと蝉の声に、寝付かれず、池波正太郎を
読みながら、
エアコンを、点けたり、消したり。

と、

『 炊いたご飯へ、鰹節のかいたのをまぜ入れ、
醤油をふってやんわりとかきまぜ、
ちょいと蒸らしてから、これをにぎりめしにし て、
さっと焙った(あぶった)海苔で包む。
これが、大工・松五郎の毎日の弁当であっ て、、、』
(池波正太郎「お千代」、新潮文庫「おせん」 より)

こんな一節に出くわした。

懐かしい、おかかの握り飯である。

無性に食べたくなる。

冷蔵庫に、冷や飯はある。
海苔はないが、まあいい。

拙亭には、あの、鉋(かんな)をひっくり返したような、 鰹節削り器と、鰹節が ある。

作る。(というほどでもないが。)

冷や飯を、飯椀に盛り、ラップをかけ、レンジで加熱。

この間に、鰹節をかく。

(鰹節を「かく」。という言い方も、非常に懐かしい。
少年のころの、祖母の言葉を思い出す。
よく、母に、かかされ、指を切った、ものである。
ついでだが、鰹節も、「かつおぶし」ではなく「かつぶし」である。)

ちょうど、蒸れたのを見計らい、かいた、鰹節を混ぜ入れ、
しょうゆをふり、さらに混ぜる。

ここで、まず、茶碗を両手で、ゆすり、中の飯を、ころがす。
こうすると、柔らかいが、握り飯、状のまとまりになり、握りやすくなる。

(これも、行儀は悪いが、食べ残しの飯を食う知恵として、少年時代に憶えた。
塩を振り、簡易の握り飯にして食べる。)

これを、先ほどのラップに包み、ラップの上から握り、握り飯にする。

完成。
ビールを開け、食べる。

まったく、こんなものから、遠ざかっていた。
おかかの握り飯、猫まんまである。

しかし、改めて、うまい。

拙亭には出汁(だし)用の西日本の削り節もある。
しかし、『かく』という言葉から、無意識に、
東京から持ってきた鰹節を、かいて、いた。
よくしたものである。

そのまま、食う、かつぶしの、うまさは、
生臭味がなく、デリケートな香りのある、
東日本の鰹節ならでは、のことであった。

※平均点 2.765 合計34人

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