断腸亭料理日記2025

断腸亭イタリアへ行く その38 まとめ6
(イタリアから日本の地方の独自性について考える。)

4766号

さて、全国の伝統的な祭りから、高円寺阿波おどりのような
商店街の任意の祭をみてきた。

まあ、高円寺阿波おどりは、中断の危機もあったというが
基本、たくさんの住民があり、また当時人口も増えている
東京の中央線沿線という地域であり、大成功例であった
のであろう。
逆に人口も減少傾向にある街の、シャッター商店街を
活性化するために、祭をやろうとする場合は、ずっと
ハードルは高かろう。
公的な支援もありさらに、様々な別の工夫が必要なので
あろう。

さて。話題転換。現代の祭といえば、フェスというのがある。
いわゆる、たくさんある夏の音楽フェス、で、ある。

これがどれだけ地方活性化に役立っているのか、わからない
のであるが、一つだけ、ちょっと私の趣味もあり、例を
紹介したい。

なにかというと、昨年9月、宮崎県宮崎市のひなたサンマリン
スタジアム宮崎、ジャイアンツがキャンプをする球場で、
日向坂46が、開いた「ひなたフェス2024」である。

これ、全国的にはあまり話題にならなかったと思うのだが、
坂道推しとしてはちょっと残念なのである。
ただの坂道ウォッチャーでファンの見た感想ではあるが、
書いてみたい。

日向坂46は、ソニーミュージックで、秋元康プロデュースの
三つある坂道グループの一つ。一昨年2023年、連続出場を
続けていた紅白落選。そんなこともあってか(?)、
オフィシャルに言っていたわけではないが、2024年の一大
起爆剤として、宮崎のスタジアムで、ワンマンフェスを
やろうと考えた。

東京のアイドルグループがなぜ宮崎かというとグループ名の
日向(ひなた)はヒュウガでもあり、宮崎のこと。
メンバーは番組などでも宮崎になん度もロケに行ったり
かねてからグループの第二の故郷的な場所ではあった。

「宮崎でフェスをやりたい!」。当初は、年初にとある
メンバーの思い付きで喋ったこと、といっているが、
これまんざら嘘ではないのではないかと思っている。
まさかねー、と、私も思っていた。

だが、驚くべきことに、これに宮崎市長が乗っかった。
そして、さらに宮崎県知事も、大乗り気。
そりゃそうか。地方都市とすれば、東京のアイドルグループ
がフェスを開てくれるなど、願ってもない僥倖、と。
実際のところ、現地の反応に運営とソニーミュージックは、
え?!マジ?と焦ったのではなかろうか。
ともあれ、春までに、じゃ、やろうか、と動き始めたのである。

これ、実に、準備がたいへんだったのである。
宮崎で音楽フェスをやった例は過去にない。
二日間、宮崎市でのべ4万人程度の動員を見込む。
野球のオープン戦の経験はあるが、ここまで人が集まる
経験はなかった。宿泊施設、交通手段、どれもとても
宮崎県と宮崎市のキャパを越えていた。
見ていても、なかなかドタバタしているのが垣間見えた。
運営も、遥か宮崎までファンを2万人×2日も呼べるのか、
というのも大問題であったろう。

そして、覚えておいでであろうか、8月、日向灘で南海トラフ
由来の地震があった。あれ、直前であったのである。
もし、フェス開催中に地震、津波があったらどうするのか、と。
これも、気をもんだ。果たして開催できるのか、と。

結果、開催。青天にも恵まれた。むろん地震も津波もなく。
概ね成功であったといってよかったのではなかろうか。
チケットは完売ではなかったようだが、やはり2日で4万は
入ったよう。
フェスの九州全体における経済波及効果は43.3億円。
(九州経済調査協会)(野球日本代表(侍ジャパン)の合宿
29億円を超える経済効果とも。)

宮崎県と宮崎市は全面協力。そして宮崎県の各市町村、さらに、
県内はもちろん、九州各県の交通機関、宿泊施設にも協力要請。
宮崎市から隣接する鹿児島、熊本などへの臨時バスの手配
などもされ、宿泊施設を近隣へ分散させた。
県、市、運営では、地震、津波も、おそらくフェス開催中に
起こった場合、避難等のシナリオを用意していたはずである。

音楽業界には地方フェスの専門家、スタッフもおそらくいる
のであろう。そういう人々も集結したはず。
日向坂46はソニーミュージック所属で、所属事務所
「シードアンドフラワー」代表はソニーミュージックの
執行役員でほぼソニーミュージックと一体と考えてよい。
おそらくソニーミュージックも企業として、かなり本気で
取り組んだのではなかろうか。
やる以上、ソニーのグループとして地方自治体に対してむろん、
無責任なことはできなかろう。

「プロジェクトX」でやってほしいくらい。
きっと様々なドラマが裏であったはずである。

開催翌日の、フェス実行委員会(であったか)のコメントが
かなり泣かせた。
文面からおそらく、ソニーの責任ある方の文章であったろう。
地元、宮崎県、その他各方面への感謝と、このご縁を大切に
したい、と。
あー、燃え尽きたんだなー、と、感じさせた。
もうしばらくやりたくない、か。わからぬが。

この先は、蛇足。
だが、日向坂46は2024年も紅白落選。嗚呼。
一度書いたような気がするが、背景は色々あったろう。
ひなたフェスは、NHKの好きな地方活性化の役に
たっているはずだが、だめか。
落選が決まった日、たまたまツアー中でキャプテンの佐々木
久美(当時)はライブの舞台から、2024年の日向坂46の活動に
悔いはありません、と語ったのは、立派であったし、これも
泣かされた。
その後クリスマスの東京ドーム公演までたどり着いたのだが。

ともあれ。

このひなたフェスの事例。
やはり、稀有であろう。
よくやった。ソニーミュージックと宮崎県。
全国レベルで誰もほめていないので、書こうではないか。
一(いち)アイドルグループと一音楽会社がやることとしては、
なかなかなかろう。偉かった。
まったく、全国的には便のない宮崎に2日間4万人を
集めたのは。

さて、ここからなにを学ぶべきか。

稀有ということは、誰もやらないのである。
手間も掛かるし、とにかく大変であったろう。
ソニーミュージックもひなたフェスはまさか赤字では
なかったろうが、明らかに通常業務ではなかった。
宮崎県も官民挙げて協力してくれたが、ソニーもそこそこの
ヒト・モノ・カネを投入したはずである。リスクもあった。
言ってはいないが、紅白に出られるかも、と思っていた。
でなければ、ここまでしなかったのでは、なかろうか。
だとすれば、まったくの期待外れ、大がっかり。
くたびれもうけ、とは思いたくないが。

先の九州経済調査協会のひなたフェスレポートによれば、
『経済効果にとどまらない、共感の輪を広げつながりあう
「エンタメ×地域」による新たな価値共創のあり方を提示』
した、としている。

であれば、まあ、よかった、か。


つづく

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメール、ダイレクトメッセージはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹助を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 | 2021 11月 | 2021 12月 | 2022 1月 | 2022 2月 | 2022 3月 |

2022 4月 | 2022 5月 | 2022 6月 | 2022 7月 | 2022 8月 | 2022 9月 | 2022 10月 |

2022 11月 | 2022 12月 | 2023 1月 | 2023 2月 | 2023 3月 | 2023 4月 | 2023 5月 |

2023 6月 | 2023 7月 | 2023 8月 | 2023 9月 | 2023 10月 | 2023 11月 | 2023 12月 |

2024 1月 | 2024 2月 | 2024 3月 | 2024 4月 | 2024 5月 | 2024 6月 | 2024 7月 | 2024 8月 |

2024 9月 | 2024 10月 | 2024 11月 | 2024 12月 | 2025 1月 | 2025 2月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2024