断腸亭料理日記2007

断腸亭の正月・

鴨鍋・蛤の湯豆腐

さて引き続き、相も変らぬ、断腸亭の正月。

鍋二題。

まずは、元旦の夜。

鴨鍋、で、ある。
これも、ここもう何年も、正月の料理になっている。

昨年

なぜ、と聞かれても困るのであるが、
まあ、好きだから、ということになろうかとは思う。
筆者にとっては、とっておき、押しも押されぬ、No.1の
鍋である。

鴨は池波作品にはよく出てくるので、
筆者の池波レシピページにも、何度も登場している。

ねぎにしょうゆ、というものある。

これは、昨年のIPPOの取材で、初めて作った。これはこれで
うまかったのだが、やはり、芹とともに、甘辛の玉子で食うのが
正月らしくて、よい。

暮れ、雑煮の準備とともに、ハナマサで合鴨胸肉の冷凍と
芹を三把、買っておいた。

作り方はいわゆる、牛のすき焼き同様。
まあ、江戸の鍋は、ほとんどがこの甘辛の鍋、というのは
間違いがないところであろう。

まずは、鉄鍋を熱し、肉からはずしておいた、脂身を焼き、脂を出す。

そこへ、しょうゆ、酒、砂糖を入れ、
鴨肉、芹を入れ、焼いて、玉子をくぐらせて、食う。



これは、これは、べらぼうに、うまい。

鴨肉もよいが、芹がまたよい。

鴨にはねぎ、と決まっていると、思われるむきも
多いかも知れぬが、芹も負けず劣らず、鴨の脂に合っている。
昔から、芹も鴨鍋には決まり物でもあったのである。

鴨肉の料理はすべからく、そうであるが、
肉に火を通し過ぎぬこと。

ぼんやりしているうちに、肉は縮んで、硬くなり、
見る影もなくなる。
ちょっと忙(せわ)しないがパッパと焼いて、パッパと食う。
そういう鍋、で、ある。

さて、二日、夜。

今度は、蛤、で、ある。

豆腐を入れなくとも、蛤のみでもよい。

鍋に水を張り、塩だけを入れ、蛤を入れる。
ふたをし、蛤の開くのを待つ。


この汁で、酒を呑むのである。
蛤の汁、というのは、こんなにもうまいのか、ということが
よくわかる。

熱い蛤の汁が、腹に染み渡る。

そして、ことのほか、酒、それも日本酒に合う。
汁で日本酒を呑む、というのも、
この蛤の汁、ならでは、のこと、かとも思う。

また、蛤は、春のもの。
正月の汁、と、しては、欠くことができぬものと、思う。

ともあれ、断腸亭、定番の、正月鍋二種。

よい正月である。

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