断腸亭料理日記2006

札幌・カレー食堂・心

9月10日(日)第二食

さて、今週末は北海道の妻の実家で、亡き義父の七回忌。
土曜の朝、飛行機で向かい、午後、妻の実家で和尚さんがきて
身内だけの法事。
この日は、妻の実家に泊まり、今日、夕方帰京、
という日程である。

北海道の食い物全般については、長くなるので
また別の機会にすることにする。

昨日の夜、義弟夫婦に「北海道(札幌)で、うまいもの、
っていうと、なに?」と聞いてみると、やはり「スープカレー」
という。なるほど、やはりそうであるか。
もう、北海道もラーメンでもない、のか。
札幌発祥で、東京などにも広がっている、スープカレー。
あるいは、進出している店もあるようだ。

有名なところを聞いてみると「心」というところ。
この店も、東京にも進出し、FC展開も始めているようだ。
場所は、札幌駅の北側で、北大のそば。北15条西4丁目。

札幌駅から、タクシーで向かう。

筆者、北海道の地番の付け方を理解していない。
住所の北15条西4丁目に交差点で降りるが、それらしいものはない。
ぐるっと回って、16条の通り側にあった。
15条と16条の間が、地番として、15条ということであった。

話の通り、午後二時と半端な時間であるが、
数人の行列ができている。

「カレー食堂 心」という。
並んでいる間に、イケメンのお兄ちゃんにメニューを渡される。

10分ほどであろうか、中へ案内される。
店の中は奥に座敷もあり、テーブル席は20席弱、といったところ。
席の空きよりも、作るテンポで客を案内しているようである。
筆者の注文は、一番ノーマルそうな、骨付きチキンのスープカレー。
辛さを選べるが、筆者は、30倍。
「30倍以上はマニア」などと書いてあるのでその手前。
妻は、北海道人らしく、ラムのスープカレー、6倍。

席に座り、ほどなく出てくる。

深めのボール状の器である。
小ぶりなラーメン丼といってもよいようなもの。
大きな骨付きのチキンとにんじん、じゃがいもなどが
ごろごろと入っている。

ご飯の方だが、なぜか、3cm角の正方形に切られた
焼き海苔が載っている。
筆者の方は辛くしたからか、かなり赤め。
妻の方は、黄色みが濃い。
また、バジルであろうか、黒っぽい細かい破片のようなものも
表面に浮いている。

スープを飲んでみる。
辛味もさることながら、けっこう濃い味である。
第一印象は、まずくはない。けっこううまい。

具がゴロゴロ入っているので、ボリュームがある。
辛さもあり、ちょっと集中して食べる。
にんじんはカレー煮込みではなく、別に熱を通してある。
じゃがいもは、皮付きのまま、揚げてあるようである。
このじゃがいも、共和町というところ
(妻によると、小樽の先らしい。)のものという。
とてもじゃがいもとは思えぬほど、甘い。
サツマイモのようである。
(ついでだが、ご飯もこの町の米らしい。)

食べ進んでいくうちに、だんだん味の全体像のようなものが
わかってくる。
最初に感じた、濃い、という印象は、
油(脂?)がそこそこ多目であること。
そこで、スープであるが、意外に、印象としてはとろみ感も、
同時に感じるように思う。
ベースの味は、トマト、玉ねぎであろうが、そこに、
ウスターソース、にんにく、などの味も、比較的強く感じる。

全体をまとめると、欧風カレー、をスープ方向に移動させた、
というもののように感じる。
(ホームページでだしは、フォンドボーと書いている。
やはり、「欧風」の方向であろう。)

先日の五反田の「うどん」のマスターの持論、
油とスパイスは少なめ、が、食べ飽きない、毎週でも食べたい
カレーの秘訣であるという。これには説得力がある。

そうした意味で、ここのスープカレーは
満足感は高いかもしれぬが、どちらかといえば
ヘビー、毎週は食べられない、といえるかもしれない。
(だが、人によっては、時として食べたくなる、
いわゆる、やみつき、度のようなものは
高いかもしれない。)

さて、本場、札幌のスープカレーを食べたわけであるが、
スープカレー、とはいったいなんであろうか。
むろん、この店以外にも札幌にも何軒もあり、
味も違うのであろう。

カレーというもの、味の範囲はとても広い。
様々な味が、カレーという名前で供される。
カレーをとても大雑把に分けると、欧風カレー、家庭のカレー、
インド風カレー、この三つくらいであろうか。

スープカレーというのは、そのまま飲める、スープ状のカレーで、
先の三分類とは、ちょっと分け方は違うが、
新しいジャンルを作ったもの、と、いえるかもしれない。

これはコンセプトの勝利であろう。
近いものはむろんあったのであろうが、
スープカレーという表現をすることによって、
新しいジャンルができたのである。

もう一つ、スープカレーがヒットしたポイントは
大きな野菜をゴロゴロと入れたこと。
身体によさそうな印象をあたえ、女性にうけた。
そんなところであろう。

スープカレー、今日の「心」のご店主が元祖なのかどうか、
筆者はわからないが、なかなかよいセンスであったのであろう。

HP




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