断腸亭料理日記2006
10月14日(土)夜
今日は、浅草観音裏の鮨や、一新。
結婚記念日ということで内儀さんのリクエスト。
ご店主はお年も筆者らより少し上と、比較的お若いが、
江戸前の丁寧な仕事をする人気店。
この春頃から行き始めたところ。
午後、予約のTELをする。
当日で、大丈夫かと思ったが、OK。
19時タクシーで向かう。
入ると、先客が二組。
芸者さんであろうか、着物姿の女性もいる。
ここで見かけたのは初めて、で、あるが、場所柄であろう。
カウンター、奥から三つ目と四つ目の席に座る。
瓶ビールをもらう。
店はご主人と二人。
今日は女将さんではなく、今一つ慣れていない感じの若い衆。
おまかせで、つまみからにしてもらう。
煮浅利、甘だれ付き。
平目。
炙り〆鯖。
流行(はやり)で、あろうか。先日の太助寿司でも出た。
中トロ。
水分が少なめ、と、いう書き方もヘンだが
水っぽさ、のようなものがまったくなく、あまく、うまい。
冷蔵ケースを使わない、というのが、こういうところにも
出ているのであろうか。
本みる貝と、青柳のような、鳥貝のような、石垣貝。
石垣貝は、太助寿司ではないが、他の鮨やで食べたことがあった。
多少、珍しいものなのであろう。
鰹。
戻り鰹。いわゆる、土佐作り。炙りたてで、香ばしく、うまい。
焼き白子(まだら)。
これは、かなり、うまい。走り、である。
御徒町の吉池にもあったので、出回り始めていたのは知っていた。
筆者、白子は、ちょっとでも生臭いと、食べられないのだが、
これは、抜群に鮮度がよいのであろう。
いつもながら、ここのつまみはバラエティーもあり、
どれも、うまい。
握り
新いか。
すみいかの子供。柔らかく、あまく、香りがよい。
さより。
鯖。
マグロづけ。
かさご昆布〆。
昆布〆にしたものは、初めて食べたが、あまみがあり、うまい。
赤貝。
トロ。
うまい。
海老。
「マキ」という言い方をしていたが、車海老。
小さいものが、サイマキエビ、大きくなると、車海老。
10cmまでの中間の大きさのものが、マキエビというらしい。
ここへくると、必ず出る。
茹で上がったものを、今日は若い衆が剥いて、ご主人が握る。
ここの看板ともいえる、自慢のものだろう。目から鱗が落ちるうまさ。
これだけうまい、えびを出す鮨やは、他には少なかろう。
穴子。
熊笹で、ここは、ほんのり炙る。繊細で上品な仕事。
海苔巻。(干瓢巻)
以上。
お勘定、二人で、¥30000ちょい。
さて、ここ、一新は、基本的に、おまかせ、がよいのだろうと
思っている。(太助寿司も同様だが。)
段々、わかってきたのだが、ここはつまみ、にぎり、ともに、
お勘定は、大体揃えた金額にしている。
その範囲で、その日のベストのものを出す。
そういう出し方だろう。
これは、あたり前のことのようだが、逆にいうと、
勝手に、頼んではいけない、ということなのである。
おすすめ、で、ないものは、格段に質が違う、ということ。
これは、むろん、鮨やそれぞれの商売の仕方によって違うと思われる。
客数も多く、ねた数も多く、どれもそこそこのレベル以上を
揃えている、という店もある。
(例えば、天神下の一心。)
ここ、観音裏の一新は、いつきても基本的には満席で、
結果的にではあるが、一日の客数は、限定、といってもよいだろう。
その中で、お得意の、細かい事前の仕事をしている。
計算されていることは、いうまでもない。
おすすめでは出さない、品揃えとしてのねたも、ここには、多少はある。
見ていると、いわゆるお好みの、頼み方をしている人もいる。
(同じものを二回頼む、というのもこれに含まれる。)
これは、ここでは、マナー違反とまではいかないが、
あまりよい食べ方ではないのだろう。
むろん、金は払うのだし、好き嫌いもあり、客の勝手だ、
という議論もあろう。しかし、それは、野暮、というもの。
かなりの常連で、ご店主が、好み、もよく知っており、
「今日の○○は、だめだよ」といってくれるくらいになっていれば、
いいかもしれぬ。
そうでなければ、こうした店では、やめたほうが、よい。
アガリ、だの、オアイソ、だの、符丁(寿司職人の身内の言葉)を
連発するのと、同じように、鮨やそのもの、や、味を知らないことを
自ら表明しているように、思える。
こんなことも、鮨やでの、振舞い方として大事なことであろう。
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