断腸亭料理日記2006
今日は昨日の続き。
浅草観音裏の『江戸前』の鮨屋・一新。
すみいか、鰈昆布〆、さより、星鰈、鯵、まで。
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さて、次。
づけ。
づけ、とは、賢明なる読者諸兄はご存知であろうが、
まぐろのしょうゆ、づけ、で、ある。
東京でも普通の鮨屋には、ほとんどない、ねた、で、ある。
冷蔵設備のなかった頃、一般に家庭でも、余ったまぐろを
保存するために、しょうゆ(しょうゆのみでは濃過ぎるため、
普通は、ニキリに漬けることが多いようである。)に漬けた。
『江戸前』を標榜する店では、あたりまえのねた、で、もある。
また、トロではなく、赤身を、づけ、にすることが多かったことから、
普通の赤身のことを、漬けていなくとも、づけ、ということもある。
これも、あまく、うまい。
次は。鰹?。
聞いてみると、初鰹、で、あると、いう。
やっと三月である。もうそんな季節なのか。
今は、鹿児島から、初鰹はくる。
やはり、鰹も、もののよさと、拵(こしら)えが
ものをいうねた、なのであろう。
初鰹といえば、昔から、江戸っ子の好物としてあまりにも有名である。
「女房を質に置いても」食べたい、などといわれていた。
しかし、筆者は、今まであまりうまいものであると
思ったものはほとんど、ないかもしれない。
もどり鰹はまた違う味だが、魚屋で買う初鰹など、
脂もなく、生臭く、血の味が強い。
たいしてうまいものではない。
しかし、ほんとうは、こういう味であったのか、で、ある。
先の鯵、同様、絶妙の仕上がり。
生臭さや、血の味とは無縁。さっぱりと、あまい。
次。
トロ。
中トロと、大トロの中間くらいであろうか。
どこのものかは、聞かなかった。
他のものも同様であるが、ねたの温度に随分気を使われて
いるのではなかろうか。
ことに、こうした、脂の多いものの場合、
温度は、重要であろう。
温かい、ということは、ありえなかろうが、
冷たすぎても、いけなかろう。
なじんでいる、というのか、こなれている、というのか、、、。
うまい。
途中で、ビールから、酒。
北海道の男山。冷、で。
男山は以前、家で、呑んでいたことがあった。
生元系の酒が中心であったと思うが、
これは、吟醸系のよい香りがする酒である。
(生元系とは、筆者が家でいつも呑んでいる菊正宗が
代表例であろう。お燗によい酒。山廃などもこの系統である。
これに対し、吟醸系は、香りが命であるため、
あまり、燗酒には向いていない。)
さて、次は海老。
これは、今日の一番かもしれない。
茹でる都合であろう。
他のお客にも、一度に出てきた。
車海老である。
ざるにのせられて、色の良い、茹でた皮付きのままの海老を、
付け台に運んできた。
刺してあった串を抜き、一匹ずつ、皮を剥いていく。
串は曲がるのを防ぐため、なのであろう。
頭の部分が少しついて、握られてきたが、
見た目は、普通の、ボイルの海老、と、ほとんどかわらない。
出前で鮨をとっても、ほとんど、海老は入っている。
今、そこそこの鮨屋でも、ブラックタイガーを使っているところが
多いのではないかと思う。
たいていの茹でた海老は、パサパサとし、たいしてうまいものでもない。
出前の鮨の中では、縁起物、くらいの存在であろう。
しかし、これには、目から鱗、で、ある。
茹で方もあるのであろう。
実にみずみずとし、うまみに溢れている。
こんな茹で海老は、初めて食べた。
玉子、海苔巻。
かんぴょうは、味濃く煮られている。
最後に、巻き物をもう一本。
好物の、ひもきゅう、を、巻いてもらう。
仕上げに、ゆっくり、熱いお茶を飲む。
十二分に、満足。
噂通り、よい腕の、よい鮨屋であろう。
〆て、酒込みで、二人で¥16,000
握りだけならばこの程度、と、いうことであろう。
最後に一つだけ、書いておきたいこと。
これは、店の責任だけではなかろうが、
たまたま、居合わせたのか、客筋の悪さ、、。
お姉ちゃんを連れて、携帯電話の音を出して使い、
また、話もする。若そうだが、今だにいたのか、
というような、俗物。
社長などと呼ばれ、どこか田舎の、お坊ちゃんなのか、、。
(太助の親方であれば、怒るであろう。)
有名店の宿命というべきなのか、
常連のようであるが、こうした客がいるだけで、
二、三割方、うまいものも、まずく感じてしまう。
※店の雰囲気等を鑑み、今回は、写真は抜きです。(当然ですね。)
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