断腸亭料理日記2006

下駄やと並木藪蕎麦その2

6月17日(土)第二食

さて、引き続き、土曜日の午後。

落語の稽古がてら、下駄を履いて、ひさご通りの下駄やまで行き、
鼻緒を直してもらい、一杯やりに、並木藪(やぶ)まで。

梅雨の晴れ間、天気もいいせいか、浅草も人が出ている。

並木、とは、雷門の前の通りである。
昔、江戸の頃、このあたりは並木、と呼ばれていたので
並木藪、と、いうことである。

東京の数ある藪そばの中でも草分け中の草分け、
淡路町の神田藪、池之端藪
と合わせて、三藪(さんやぶ)、と、呼ばれているのはご存知の通り。

ビルに挟まれて建つ日本家屋。
店先に植え込みなどもあり、ここだけ、江戸の頃の風情。

戸を開けて入ると、半端な時間ではあるが、
けっこう混んでいる。

土間があり、右側にテーブル席。
左側が小上がりの座敷。

テーブルは一杯。
一番奥、帳場の前、座敷の一角に案内される。

座るとまず、新聞が出される。
ここでは一人の客には、こうしている。

まずは、酒を冷(ひや)でもらう。

店の奥に、菊正宗の一斗樽、菰冠(こもかぶり)がいつも置かれている。
一合徳利にその菊正宗の樽酒。
徳利を入れている袴は、店の焼印の押された白木の一合升。
どうでもいいが、池之端藪は同じ一合升だが、
塗り、で、あった。
このあたりが、池之端藪、並木藪のカラーの違い、であろうか。

猪口は小ぶりなグラス。

盆の上には、そばみそ。

酒がきたと同時に、そばを頼む。

ざる、でもよいが、他に冷たいそばはなにがあったか。
つけとろ、はないか、と、聞いてみると、
ここでは、やまかけ。
これは、つけるのではなく、冷たいそばにとろろを
かけてあるものであるという。
普通、やまかけ、と、いうと、暖かいそばかと
思っていたが、ここでは冷たいものであった。
(まあ、考えてみれば、やまかけ、とは、やまいもをかけたもの、
ということであるから、冷たいものを指しても、
なんら不都合はないわけである。)

池之端は、つけとろ、で、あるが、ここは冷たいやまかけ。
そば屋のメニューというものは、難しいものである。

ともあれ、それを頼む。

樽酒には、独特の杉の木の香りがある。
菊正宗は、吉野杉を使っているという。
あまり呑み慣れぬ筆者は、この香りに、ちょっと呑みずらさを
感じることもあるが、今日はうまい。
喉も渇いており、一合はすっと、呑んでしまう。
待つ間、もう一本

ちょうど呑み終わる頃、運ばれる。

やまかけ。
ほう、なるほど。
つゆのない丼に冷たいそば。
その上に、つゆで割ったと思われるとろろが
かけられている。

そばごと、ぐるぐるとかき混ぜて、すする。

並木藪といえば、日本一濃いつゆ、で、あるが、
さすがに、と、いうべきか、つゆで割ったとろろは、
左程に濃い味ではない。

喉ごしよく、つるつると腹へ入る。

うまかった。

勘定をして、出る。



酒を呑んでしまうと、稽古はできぬ。
赤札堂などに寄りながら、ぶらぶら帰宅。



並木藪蕎麦
TEL 03-3841-1340
〒111-0034 東京都台東区雷門2丁目11−9 
地図




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