断腸亭料理日記2006

帝国ホテル・ラ ブラスリー・1

「ムッシュ村上」

7月16日(日)夜

昨日(7/15)、第二回をやっていたが、NHK土曜ドラマ「人生はフルコース」。
ご覧になった方はいらっしゃるだろうか。

昨年84歳で亡くなられた帝国ホテルの村上信夫シェフの話しである。
主演は高島政伸氏。

筆者は、一回目も二回目も視た。
正直のところ、かなり感動した。

実のところ、たまたまであるが、先週の「土曜スタジオパーク」の
高島氏出演分の番組ガイドからみていた。帝国ホテル全面協力。
ドラマの中で使われている包丁なども村上シェフ(帝国ホテルでは
ムッシュ村上、と呼ばれているという。)の遺品を使っている。
あるいは、出てくる料理は実際に帝国ホテルのシェフ
(ムッシュ村上のお弟子さん)達が作っている、とか。
また、高島政伸氏のドラマへの力の入れ方も並々ならぬものがあり、
実際に、包丁を握る稽古を三か月もし、玉ねぎを切る手並みも
鮮やか。また、高島氏の役者としてこの村上シェフへの入り込み方は
すごかった。番組では、帝国ホテルの名前はNHKであるからだろう、
天鴎ホテルという名前に変えられているのだが、
「土曜スタジオパーク」でも『帝国ホテル』を連発し
小野文惠アナウンサーを困らせていたり。

ともあれ、帝国ホテルの村上シェフ。

日経新聞の「私の履歴書」やら、東京オリンピックの選手村レストランの
料理長をした話しは、同じくNHKのプロジェクトエックス。
ご覧になった方もおられるかもしれない。
あらためて筆者が書くまでもなく、著書や評伝も多数出ている。

戦後、今に至るまで、日本のフランス料理、洋食、
いや、家庭の洋食にまで影響を与え、礎を築かれた方。
元、帝国ホテル専務取締役であり、総料理長村上信夫氏。
その功績だけでなく、多くのお弟子さん達に慕われた人柄も含め、
偉大なムッシュ村上、と、お呼びしなければいけなかろう。

さて、これはもう、行ってみなくてはいけない。
むろん、帝国ホテルである。

そして、目当ては、帝国ホテル伝統のシャリアピン・ステーキ。
シャリアピン・ステーキという名前は
誰でも一度くらいは聞いたことがあろう。
日本中の洋食レストランにあるメニューであろう。
筆者の最近の経験では、本所石原のクインベル
ここで、妻が食べていた。
その、シャリアピン・ステーキの元祖が、ここ、帝国ホテルだと
いうこと。筆者はまったく知らなかった。
ドラマの第一回で取り上げられていたエピソードである。

現在、帝国ホテルのメインダイニングは「レ セゾン」。
こちらは、フランス人の有名シェフを招聘し、
ムッシュ村上の伝統の帝国ホテルフランス料理は食べられない。
番組で、高島氏も言っていたが、インペリアルタワーB1、
「ラ ブラスリー」で食べられる。

前日、予約し、妻と共に出かけてみることにする。
帝国ホテルは日比谷。

猛暑のため、昼間はかなりいい加減な格好をしていたが、
少し、服装を改め、家を出る。

18時過ぎ田原町から銀座線、銀座で降り、
2〜3軒、書店を覗き、帝国ホテルへ向かう。

(例の雑誌「IPPO」を捜してみるためであった。
拙亭近所の書店では見当たらず、
出版社から送っていただいたのだが、自分でも購入する目的と、
実際に、店頭に置かれているのを見たかった、
と、いう他愛もない希望からであった。)

帝国ホテルというと、筆者は、まあ、さほど、縁があるわけではない。
むろん、泊まったことはない。立川志らく師の真打披露パーティー、
1階と17階のラウンジに何回か、来たことがある程度。

外濠通り、東芝ビルの旭屋書店から、泰明小学校脇を通り、
JRのガードをくぐり、左側、帝国ホテルのタワーである。

19時、タワー側のエントランスから入り、すぐの螺旋階段を降り、
「ラ ブラスリー」、で、ある。
今、帝国ホテル全館で、帝国ホテルフランス料理の歴史を展示しており
この、「ラ ブラスリー」前でもその一端が展示されている。
数多くの賓客をもてなした、料理の歴史である。
シャリアピン・ステーキ誕生のこと。(これは後述する。)
そして、なかでも、エリザベス女王来日の時に
迎賓館で帝国ホテルが料理を出したというエピソード。
国賓が迎賓館に滞在する際には都内の
ホテルが順番に担当することになっているらしい。
そして、たまたま、帝国ホテルの担当であったという。
この時、女王に褒められ、女王の名前を付けることを許された、
車海老の料理がある、といったこと。

店入り口で、名前を伝える。
店内は比較的カジュアルな雰囲気。そして、かなり賑わっている。
電話では喫煙席を希望していた。
しばらく待ち、入り口から入って左側のスペース、喫煙なのであろう、
に、にこやかに、案内される。
こちら側には、バーカウンターもあり、そのそば。
壁際のテーブルである。

席に座り、まずは、飲み物のメニューが渡される。
気の利いた食前酒でも頼めばよいのだろうが、
この暑さである。一杯目は、ビール、恵比寿の生を頼む。

さて、オーダー。
オードブルは、筆者はテリーヌ、そして、
妻はこれも帝国ホテル伝統のニシンの酢漬け。
メインは二人とも、シャリアピン・ステーキ。


さてさて、長くなりそうである。
今日はこの辺で、続きは明日。




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