断腸亭料理日記2006

両国(本所・亀沢町)・

江戸蕎麦・ほそ川

7月9日(日)夜

少し前から来てみようと思っていた店。
まあ、いうところの、趣味蕎麦、だろう。

「PEN」という雑誌。
(いかにも、スノッブ、といった趣。)
何号か前で、(趣味)そば、を特集をしていた。

毎度のことであるが、喧嘩を売るつもりはない。
人の好き嫌いに、文句はつけない。
好きな人がいるのであるから、売る人がいる、
雑誌の記事を書く人がいる、と、いうことである。

筆者は好きになれない、と、いうことだけである。

(端的にいうとすると、食い物は様々な歴史を背負った
文化であること。(店であれば、接客やインテリアも含めて。)
それも忘れないでほしいということ。
そして、値段の高い安いや、珍しいかどうか、
あるいは、人がなにか言っていた、ということではなく、
自分の目で舌で、その食い物の本質なりを見ること、
本当のものを見分けることが大切である、ということである。)

ともあれ、その雑誌の特集を、勉強のために、買って読んでみた。
嫌いなりに、知っておかなければ、ならないと思ったのである。

その中で、江戸蕎麦・ほそ川。
場所が、両国、本所・亀沢町。ご主人は葛飾生まれ。
日本料理の修業をされ、そばに目覚め、埼玉の吉川で、そば屋を開業。
その当時は出前もし、丼物もある普通のそば屋であったという。
その後、段々に十割そばなど、そば自体を追求。
2003年にこの地に開業した、という。

筆者は、ご主人の葛飾生まれと、きちんと日本料理の修業をされた、
というところ、この場所に店を開いた、というところを
信用しようと思ったのであった。

本所亀沢町。

江戸の地図


大江戸線、両国駅。江戸東京博物館の東側。
清澄通りから、一本入った路地にある。

雨である、下駄を履いて、内儀さんとともに、出る。
拙亭のある元浅草からは、大江戸線に乗っても二つだが、
行きは都バス(錦糸町行き)で、石原まで乗ってみた。

路地は少しわかりにくいかもしれない。
清澄通りから、東へ入り、さらに右に曲がる。

料亭風とでもいうのだろうか、
丈の長い麻の暖簾が下がっている。

予約は受けない、といっていたが、一応、事前に電話をしておいた。

日曜日の夜であるが、若い女性やら、団塊おじさん一人やら、団塊夫婦やら、
意外と、最近見かけるのが、四十代にはまだ間があると思しき、
若目で、一人でいる男性。(暗そうな?)
趣味そばの客層、なのであろう。

すべてがテーブル席であるようだ。
アンダーな照明で、塗りの壁。
花瓶の花も、乙に活けられている。

まずは、ビールをもらう。

つまみ。
(そば前、などという言葉もある。そばの前に呑む酒のこと、あるいは
つまみのこと、あるいは、そういう行為全体を指す、と、
いろんな説があるようである。)

穴子煮凝り。松茸天ぷらがあるというので、もらう。

松茸天ぷら。
スーパーなどにも出始めているが、まだ走り。中国産であろうか。
さすがに、日本料理の修業をされた方。
そばやの天ぷらでもなく、趣味そばの天ぷらでもなく、
会席の天ぷらであろう。
薄衣で、さっくりと固めに揚げられ、よい歯ごたえと、香り。

穴子煮凝りもうまい。
甘辛の濃い味は、東京人にはうれしい。

酒に換える。まずは磯自慢。(静岡の酒、吟醸系。)
最近家で呑む酒が菊正宗一本のため、吟醸系は、なんとなく、
香りが強すぎるように、感じてしまう。
そして、次。大七を冷(常温)で、もらう。
大七は福島二本松の酒で、生元系の辛口。
(大七も好きな酒であったのだが、大七であれば、
同じ辛口生元系で、菊正宗で十分であろう、と、いうのが
筆者の行き着いた、結論であった。
生元系の辛口は、東京のしょうゆの濃い味にとてもよく合っている。)

追加で、ごぼうの天ぷら。
これは、ちょっとびっくり。
かき揚げ、かと思っていたのだが、左にあらず。
ごぼうは太いものであろうか、
2cmほどの幅で、薄く、長く短冊に切って、やはり、薄く固めの衣で
揚げてある。
これが食べてみると、あまい。ちょっと、唸らされた。
あまいごぼう、というのは、初めてではなかろうか。

さて、肝心のそば。

内儀さんは、普通のざる。
筆者は、田舎そば。
田舎そばは、太打ち、の、ようである。

そば。
田舎の方は、濃い目の色で、腰が強く、噛みしめて食べる。
つゆは筆者には過不足のない濃さ。

そば湯が、変わっている。
これ、どうも、卵白が入っている。
そば湯自体に、なにか他のものを入れてあるのは、
筆者は、初めて。
ようは、別の味がするのである。
そして、これが、格別に、うまい。
そば湯、というよりは、別の料理、と考えた方がよいような
ものではなかろうか。

うまかった。
勘定をして、出る。
(二人で、¥7000程度)

帰りは、大江戸線で帰宅。

なかなか、よいのではなかろうか。

むろんのこと、趣味そばにありがちな、高飛車な態度、
押し付けがましさ、ということもなく、不愉快な思いもない。

雑誌などで取り上げられると、行く方も、緊張してしまうのだろうが
逆に、こうした店ほど、普通に酒を呑み、そばを喰いに
くつろぎに、行った方がよいのだろう。



ほそ川
TEL 03-3626-1125
〒130-0014 東京都墨田区亀沢1丁目6−5 





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例の雑誌取材「IPPO(いっぽ)秋号」ニューズ出版、
断腸亭登場分、今週末、7/15発売だそうです。
(江戸のスローライフ、剣客商売、秋のメニュー、そんな感じです。
最終的な、タイトルは、忘れました、、。)
着物を着て、扇子を広げて、江戸文化研究家(?)として、登場しています。
書店で見かけたら、立ち読みでもお願いいたします。

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