断腸亭料理日記2006

上野御徒町・

厳選洋食さくらい

12月11日(月)夜

前から知っていたのであるが、どうも、ネットでの評判が悪い。

yahoo

東京グルメ

上野御徒町、上野広小路、春日通り沿い南側、ビルの上。
おしゃれな洋食屋、で、ある。

いつできたのであろうか。
さほど古くはあるまい。

信用するかどうかは別として、
文春の「東京いい店うまい店」にも載っている。

一人でいってみた。

エレベーターで上がると、窓が大きく、なるほど、ニューヨークの
ような内装デザイン。

調理場がガラス張りで見え、その前がカウンター。
喫煙というと、窓側の席に案内された。

そういえば、喫煙の方がよい席、というのは、今の時代、
いかがなものか、というコメントもあった。

カウンター席の方が、カップルを想定しているのか
そちらが、禁煙なのかもしれない。

真ん中に、階段があり、上の階にも席がある。

エビスの生をもらう。

メニュー数は多い。つまみの類も充実している。

季節である、牡蠣フライと、文春でおすすめであった
黒豚のしょうが焼き丼、ハーフで。
(正確には、文春では、黒豚のしょうが焼き単品かと思われる。)

座ると、ミックスナッツが小皿に入って出てきた。
これをつまみながら、ビールを呑む。

牡蠣フライである。

最初に、タルタルソースとウスターソースが、同量ずつ、
ポットに入って一緒に出てきた。
タルタルソースの好きな筆者には、これはうれしい。
たっぷりかけられる。

牡蠣フライ。
まず驚くのは、色が白めであること。

考えてみれば、フライもの狐色でなくてはならない、ということはない。
火の通りと、揚げ色というのは、必ずしも一致しない。
これは自分で揚げ物をしてみればすぐわかることである。
低温でゆっくり揚げると、色は付かなくとも、火だけは通る。
しかし、意図はなんであろうか。
狐色に揚げた方が、香ばしくなるし、
また、うまそうに見えると思われる。

食べてみる。
小ぶりの牡蠣が、むろん、きちんと揚がっている。
びっくりするほどではないが、まあまあ、上々ではなかろうか。

ある程度、タイミングをみているようである。
食べ終わって、皿を下げ、いい頃合いで、しょうが焼き丼がきた。
ここのご飯ものは、大きいので、ハーフでちょうどよい、と、いう。


豚肉スライスの縁の部分のみ、焦げ目が入っている。
たれがかかり、肉の下に、キャベツの千切り。海苔。

赤だしに、お新香。水も運ばれた。

食べる。

いうとおり、なかなか、これはうまい。
たれの加減もよいし、油なのか、脂なのか、適当にからみ、
あとを引く味である。海苔もよい。

豚肉のスライスはかなり薄めである。
縁のみに焦げ目が入っているのは、塊のまま、焦げ目をつけ、
あとから切っているのであろうか。

ともあれ、満足度は高い。

赤だしは、なめことわかめ。これも、うまい。
お新香は、きゅうりの浅漬けに、柴漬け、大根。
そこそこ、吟味してあるように思う。

勘定は、¥3000程度。

接客も特に、問題はないように思われた。

なにか、今日は、チェックするような書き方になってしまった。

冒頭に書いたように、ネットでの評判が悪いこと。
いわく、厨房に、ほ○だし、が置いてあった、
接客に腹が立った、この品質でこの値段は高い、
高級そうなファミレス、
なにが「『厳選』洋食」なのかわからない、、、。

東京の洋食屋の値段帯としては、安くもないが、高くもない。
ほ○だしが入っているのかどうかまではわからないが、
味やテクニックとしても、悪くはない。
そこそこ吟味もされているようにも思われる。
(若干、テクニックに走り過ぎのきらいはあるかもしれぬが。)

考えるに、どうもここ、
突っ込まれる余地が多いのではなかろうか。

基本的に、東京の洋食屋は歴史のある老舗が
大きな地位を占めている。
良くも悪くも、老舗は動かない。
培われてきた味やサービスは、嫌いな人がいても、
それなりに、愛する人がおり、
世代交代もし、生き残ってきている。
それは、それぞれの店が、ある種の普遍性を
やはり、どこかに持っているからに他ならない。
(これはなにも洋食屋に限ったことではなかろうが。)

それに対し、新規の店は、むろん、そういった
ものは持っていない。
では、(筆者なども含めて素人の)客に四の五のいわせないために、
なにが必要なのか。
ひとつは権威、であろう。浅草の大宮など、
シェフはフレンチの修行をきちんとしている、といわれ、
食べてみれば、実際に、ちゃんとしていることは、わかるのだが
その半分は、そう思って食べている、という可能性は高い。
しかし、それで十分でもある。

ある種、どの有名店や老舗にも一つや二つの欠点はあろうが、
それらを補って余りあるものがあれば、人は評価し、通うのであろう。

やはり、ここ、一言でいえば、いろんな意味であまい、
と、いうことだろう。

けっして、雰囲気も、味も接客も悪くはないが、
突っ込まれてしまうのは、先の権威のような、
ズバッとした主張が、ないから。
(もしくは、客によくわからない、定まっていないように見える。)
そんな気がするのである。

HPに、家族中心でやっていると、書いているが、
あまさ、の、原因は、若い、と、いうことかもしれない。

店は十分、流行っているようだ。
しかし、今、ネットでの評判は馬鹿にはできない。
ネガティブなコメントを一度読んでしまうと、
行く気にはならないのは、人情である。
(老舗や、主張がある店では、さほど問題もなかろうし、
また、そういう店は、思ったよりも、悪くは書かれない。)

さほど悪くはないのに、損をしている。

夜、10時までやっているようである。
便利な場所にもある。
筆者には、また来てもよい店である。


HP


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