断腸亭料理日記2005
11月3日(水)夜
秋である。肌寒くなって、風邪も流行っている。
秋となれば、やっぱり、一度、食べておかなければならない。
落ち鱸、で、ある。
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亡父遺愛の銀煙管(ぎんぎせる)を手にした平蔵が、さもうまそうに
煙を吐いたとき、久栄と侍女が酒などを運んであらわれた。(中略)
それは、鱸(すずき)の塩焼きであった。
「ほう、落ち鱸か・・・」
「五鉄(ごてつ)が届けてくれまして・・・」
「さようか。うまそうじゃな」
「先ず・・・」
と、久栄が酌をした。
池波正太郎著 鬼平犯科帳15 特別長編「雲龍剣」より
「落ち鱸」 文春文庫
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太助寿司は、鱸は届けてくれない、、、。
(冗談です。)
懸案であった、鱸である。
それも、落ち鱸。
早い時間に行けばあるであろう、と、午後、御徒町の吉池に行く。
あった、あった。
船橋、だそうである。エドマエ、えどまえ。江戸前、である。
一切れ¥250。
これならば、よかろう。
三切れ、購入。
それから、目に付いたのが、宇和島産、鯛。小鯛、と、書いてあるが、
筆者などの目には、ちっとも小さくはない。
20cmはあろう。¥350。
安いのでは?「刺身、塩焼き」としてある。
ふむふむ、刺身でもいけるのか、これも、購入。
帰宅。
鱸。これは、もう七輪、であろう。
炭を熾す。
これは、ガス。そして、ベランダの七輪に移し、
さらに、今度は扇風機をあてて、キンキンに熾す。
塩をし、焼き始める。
秋刀魚や、焼鳥ではないので、さほど、煙も出ない。
時間はかかるが、さすがに、炭である。
よい具合に焼き上がる。
炭は、火鉢に移し、鉄瓶で燗をつける。
酒は、いつもの、菊正宗。
やっぱり、そろそろ、火鉢で、燗酒の季節になってきた。
七輪で焼いた、江戸前の、落ち鱸、火鉢、燗酒。
もう、これ以上の、贅沢は、ないのではなかろうか。
幸せ、で、ある。
皮の間にふんわりと、脂。
あまい、プリッとした、身の味。
しょうゆなど、かけないで、塩だけがよい。
それだけ、デリケートな味なのである。
一合の酒で、二切れを食べる。
食べ終わり、今度は鯛、である。
鯛は、鱗(うろこ)を取り、おろして、半身は、冷蔵庫。
昆布と、鯛の頭で出汁を取る。
鯛茶漬け、である。
皮のまま、ぶつぶつ切って飯の上へ。
そして、上から、熱い出汁を注ぐ。
身が、軽く、まるまる。
これも、しょうゆはいらない。塩のみ。
ここまでやれば、まずい、はずがない。
半生の身は、脂もある。
また、うっすらと脂の浮いた、つゆが、うまい。
筆者、実のところ、鯛は、つゆが、最も好きである。
まさに、堪能。
今日は、落ち鱸塩焼き、鯛茶漬け、と、少し、贅沢か。
しかし、旬のものであれば、さほど、高価なものではない。
手間さえ惜しまねば、うまいものは、食えるのである。
ともあれ、大満足、である。
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