断腸亭料理日記2005

板橋・中華・蜃気楼・中編

さて、板橋の、ちょっと、へんな中華料理店。
(もちろん、よい意味で。)
昨日は、プロローグ。小籠包、くらげ、まで。


次に、いか、が出た。

ぶつぶつ、輪に切って、炒めてある。
下には、きゅうりの千切り。

一口食べる。
これは、これは、うまい。

調味料は、まずは、唐辛子、それから、花椒。(ホワシャオ。
中国四川料理で多用される、山椒。日本のものよりも
苦味が少なく、さわやかで、痺れるような辛味が特徴である。
拙亭にも常備してあり、麻婆豆腐には欠かせないものである。)

そして、つゆには、いかのワタが、からんでいる。

うーん。実は、それだけではない。
なにか、もう少し、入っている、ようである。聞いてみたが、
「ヒ、ミ、ツ!」だそうである。
(魚醤系、ではなかろうか、、、。)

あまりにうまいので、皆が心配するなか、残っていた、
真っ赤なつゆも、すべて飲んでしまった。

酒は、ビールから、紹興酒に替わっている。
この紹興酒が、また、うまい。

紹興酒というものも、ピンからキリまであるようである。
中国や、香港へ行ったことのある方であれば、ご存知かと思うが、
現地では、紹興酒は、最も安い酒、のひとつでもある。
筆者の経験は、10年以上前であるから、あまり参考にならないが、
上海で、当時は一本、数元(数十円)、のものからあった。
(あまりに安いためか、一本では、なかなか売ろうとしなかった。)
(それをそのまま日本へ入れ、数百円、飲食店では、
千円以上で売っている。そんなものもあるのではないかと、思っている。)
瓶(かめ)に入れ、中身を入れ替えられてしまえば、良し悪しの
基準がよくわからぬ日本人には、もう、ほとんど区別がつかない。

しかし、これはまったく違う。
すっきり上品、と、いったらよいのであろうか。

うまい。

さて、次。

次は、手羽先。
から揚げ、で、ある。
パリパリに揚げられ、唐辛子と、やはり、花椒が、しこたま。
手羽の表面には、しょうゆ、であろうか、味が付いてもいる。
また、食べやすく、割られてもいる。

手羽先から揚げ、というと、どこぞの名物になっているが、
あれは、甘い。(胡椒もかかる。)それも、うまいのであるが、これは、
甘くはなく、パリパリとピリピリと、そして痺(しび)れる、花椒。
ちょっと新鮮。

いうまでもなく、ベラボウに、うまい。

相当に、ご主人は花椒がお好きなようである。

さて、次。

これは、ちょっと、びっくり。
ここでまた、点心系で、ある。


どんぶりに入れられ、水餃子?かと思ったら、ワンタン、である、という。
なにがワンタンかというと、皮がワンタン。
スープに入っていようが、いなかろうが、皮がワンタンであれば、
それは、ワンタン、ということか。

具を皮で包み、茹でて、調味料がかけ回してある。
ワンタンである所以(ゆえん)は、包まれているので、定かではないが、
皮が四角い、と、いうことであろう。

かかっているのは、しょうゆベースに、ラー油、
唐辛子も入り、お得意の、やはり、花椒。

このあたりで、気が付いた。
それぞれものに入っている唐辛子のことである。
中華お得意の豆板醤、ではなく、生、
あるいは、乾燥の唐辛子、のみのような、、。
または、豆板醤でも普通の豆板醤ではない、のかも知れぬ。

辛さの度合いではなく、深みが違う、というのか、、。
辛味度は高いが、なにか、さっぱりとした、
軽い辛味、といったらよいのか。

豆板醤も発酵調味料である。醗酵したなにものか、
これが、味の深みと、香り、中華料理、あるいは、
四川料理“らしさ”、には欠かせないものになるのであろう。
しかし、それはまた、一面、日本人には、くどさ、
のようなものにも、感じられることがあろう。
ここの辛さは、そんな意味で、日本人に合った、さっぱりした辛味、
のような気がするのである。

ともあれ、ワンタン。
形も大ぶりで、肉がたっぷり。
皮は、ツルツル。

食べ応えも、味もしっかりした、もの。
充実した「雲呑」、で、ある。

うまい、うまい。

絶好調、で、ある。

(この項、つづく。)



電話: 03-3964-6657
住所: 板橋区板橋1-33-1




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