断腸亭料理日記2005

新宿・居酒屋・樽一

4月25日(月)夜

さて、いよいよ、夜、歓送迎会である。
そして、久々の落語である。

昼間は、仕事もそこそこ、忙しい。
さほどに、緊張することもなく、本番が近付いてきた。

場所は新宿歌舞伎町。樽一、という、居酒屋である。
街は、人出は多いが、例の、石原さんのお陰(?)で、
少し落ち着いたような、気もする。

場所は、歌舞伎町のメインストリート。
(ここ、通りの名前は、なんといったのであろうか。)
ドンキホーテの通りである。

高校時代には、ちょうど、インベーダーゲームが大流行しており、
筆者、このあたり、よく徘徊をしていたものであった。
ちょうど、ドンキホーテの前、今は、居酒屋のビルであるが、
当時、1Fは確か、ゲームセンターであったと思う。

その並び、数軒おいた、雑居ビルの5Fである。

ここ、樽一は、鯨が売り、と、いうことである。

店の中は、さほどきれいでもないが、テーブル席に、
座敷もあり、思ったより広い。

筆者達は、宴会でもあり、一番広い座敷。

メンバーが揃い、乾杯。
落語をやるため、筆者は、ビール一口ほどでやめておく。
刺身盛り合わせ、鶏カラなど出てくる。

一応、持参してきた浴衣に、着替える。
着物は、更衣室などなくとも、
その場で着替えられるのが、よい。

宴会芸は、本来は、後の方がよいのかも知れぬが、
筆者が呑めないので、先に、やらせてもらう。

噺は、黄金の大黒。
本来は、15〜20分くらいのものであるが、
10分くらいに短縮する。
宴会などの場合、10分程度が限度であろう。

これは師匠、立川志らく師の教えである。
往々にして、みな、好きなものだから長く演りたがる。
名人であれば、長くても許されるかも知れぬ。
また、飽きさせない技量もある。
素人である。まして、余興。聞こうと思って来ているのではない。
面白くもない、下手な噺を延々と聞かされる方は、
たまったものではない。まさに、※寝床、である。
それこそ、5分でも、できるように、しておかなくてはいけない、
と、いうのである。

そこで、10分。

噺の内容は、貧乏長屋が舞台。
大家(おおや)さんの坊ちゃんが、近くの普請場(ふしん)で
純金無垢(むく)の大黒様の置物を掘り出す。
喜んだ大家は、長屋の住人を集めて、お祝いの宴会を催すことにする。
長屋の連中は、一着の羽織を代わりばんこに着て、
トンチンカンなお祝いの口上を代わる代わる、
言いに行く、、、というようなもの。

全体に、明るく、笑いの多い噺で、談志家元をはじめ、元来は
故小さん師匠(談志家元の師匠)を頂点とする、柳家の
得意とする噺でもある。
筆者の演るものは、志らく師のコピー、である。

ともあれ、汗だく、になりながら、なんとか終了。

稽古不足は如何ともしがたい。
“デキ”は6割5分といったところ。

さて、樽一、の話しをしなくては、ならない。
この店、鯨と同時に、三陸の魚介類が得意である。
金華山の、松藻(まつも)という海草が出た。
お吸い物などに入れる珍味であるという。
もずくのようなものかと思うが、乾燥させ、
炙ってあった。

また、コンロで炙った、笹かま、も、うまい。

そして、最後の、鯨のハリハリ鍋というのが、なかなかよい。
鯨の、皮に近い部分なのかと思われる。
いわゆる、鯨ベーコンのような、白い
部分をうすく切ったものを軽く湯通し(しゃぶしゃぶ)。
水菜とともに、ポン酢しょうゆで、食べる。
鯨ベーコンのような臭みもなく、適度な脂と
歯ごたえがあり、うまかった。

この他にも、ほや、をはじめ、
酒呑みにはうまそうなものが揃っていた。
宴会には、おすすめである。

HP



※寝床(ねどこ)
これも落語の、噺の名前であるが、
慣用句になっていたものである。ある大店(おおだな)の旦那が義太夫に凝り、
奉公人や、店子(たなこ)に無理やり、
とても聞くに堪えないものを聞かせる、という噺である。
そこから、こうした上手くもない自分の趣味を、
周りに無理やり聞かせることを、寝床、というようになった。
「ドラえもん」のジャイアンの歌、と、いうと、わかりやすいか。
今は、ほとんどわかる人も少なくなった、かと思うが、
落語からきた慣用句は、意外に多かったのである。



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