断腸亭料理日記2005

南千住・尾花・前編

4月17日(日)第三食

さて、南千住・尾花である。

皆さんは、南千住という駅で降りたことが
おありだろうか。

南千住は、筆者の住まう東京都台東区の北隣、荒川区である。
JRでは常磐線、南千住駅。
地下鉄もあり、東京メトロ・日比谷線、同じく南千住駅。
そして、この8月には、拙亭の近所も通る
つくばエクスプレスが開通する。

このあたり、南千住の歴史を語り始めると、キリがない。
江戸の頃、明治、大正、昭和、書けること、書けないこと、
取り混ぜて、様々である。

日光・奥州両街道の江戸から一つ目の宿。
いわゆる、四宿(ししゅく)のうちの一つ。千住宿。

これは、現、北千住とあわせて、「千住」であった。
北千住は、大千住。南千住は小千住と呼ばれていた。

鬼平犯科帳でも

「家数は約五百。このうちの七十余軒が旅籠屋で、
その中の二十二軒が飯盛女を置く食売旅籠だというから、
相当のにぎわいを呈していたわけだ。」
(鬼平犯科帳10から「犬神の権三」文春文庫・池波正太郎著)

と、池波先生は書かれている。

また、南千住といえば、山谷、を、思い浮かべられる方も
多いかも知れない。(ちなみに、山谷の中心は台東区、である。)
大阪、西成の釜ヶ崎などと並び称される、日雇い労働者などが多く泊まった、
簡易宿泊施設、がある、いわゆる、ドヤ街。

常磐線のガードの先、明治通りの交差点は
泪橋、という名前である。
泪橋、といえば、あしたのジョー。
この界隈、矢吹ジョーの育った、舞台でもある。
いわゆる山谷の中心は、この泪橋の先である。

南千住駅の隣りには、JR貨物の隅田川駅。
そして、その東が旧汐入。

(参考)
http://www.linkclub.or.jp/~k-nomura/tokyo/shioiri.html

また、ご記憶の方もおられようが、1995年、
警察庁長官であった国松氏、が狙撃されたのも、
たまたまであろうが、このあたり。
(長官が住まわれていたのが、南千住6丁目の
高層マンションであった。そこが現場である。)
なにか、そんなことも思い出される。

少し前であれば、道を歩くにも、
少し緊張をしなければいけないような雰囲気。
また、昼間でも、車で走る場合は、徐行をし、
酔っ払いのおじさんに気を付けなければいけない。

しかし、それも今は、山谷も含め、
隅田川貨物駅北側、東側、旧汐入の再開発、などなど、
だいぶきれいになってきているようである。
(このあたりの話、また、大江戸スローライフなどで、書いてみたい。)

前置きが長くなってしまった。

南千住の駅を降り、西側。
駅前ロータリーがあり、ちょっと、さびれた感じ。
今でも、御徒町の立ち呑みよりも、ディープな感じの
もつ焼きや、などが軒を連ねる。
道なりに左へ行き、常磐線のガードを左に見て
信号を渡る。

渡ったところが、小塚原(こづかっぱら)・回向院である。
ねずみ小僧次郎吉の墓は、有名である。
北はここ、南は、大森・鈴が森。江戸の頃の刑場である。

その、回向院の前を通り、常磐線沿いに、路地を入る。
小ぎれいになった、宿泊施設が2軒ほど右側に見え
尾花が、ある。

常磐線がガタゴトと上を走る、土手下。
(当然、尾花は、常磐線の列車からも見ることができる。)

門があり、玉砂利が敷き詰められている。
右側に、赤いのぼりが立った、お稲荷さんの社(やしろ)が
お祀りしてある。

そして、その左奥に建物があり、玄関。
玄関左側には、列ができたときのための
緋毛氈(ひもうせん)の掛けられた腰掛が並ぶ。
恐れてはいたが、今日は、待っているのは一組ほど。
筆者は、妻と二人のためか、待たずに入れた。

店名が大きく染め抜かれた、藍色の大きな暖簾が下がり、
初夏ともいえる陽気の、日曜日の夕方、開け放たれた、玄関。
靴を脱ぎ、下足のおばさんから、札をもらう。
剣酢漿草(けんかたばみ)の紋が染め抜かれた、
中の茶色の暖簾をくぐり、畳敷きの入れ込みへ上がる。

何十畳あるのであろうか。かなり広い。
左側は調理場。ガラス張りで見えるようになっている。
塗りのお膳が並び、お客は、びっしり。
みな、ワイワイと呑み、うなぎを食う。

向かって正面に立派な神棚が見える。

神棚を左に見て、お膳の間を縫って、仲居さんに、案内された
右、最奥のあいているところに向かう。

このあたりで、尾花のうなぎへの、期待感は最高潮に達する。

・・・。


※どうしても、このあたりから書かないと、筆者の「尾花」は
語り尽くせない。お許しを・・・。長くなるので続きは明日。


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