断腸亭料理日記2004

池波正太郎流・大根鍋

10月28日(木)夕食
寒くなってきた。

今日は、一日二日酔いの影響で、夕方にはぐったり。

20時頃、オフィスを出る。
何を食べよう。

さっぱりしたもの。
「大根鍋」にしよう。

これも、もともとは、池波正太郎先生流である。
「仕掛人梅安」シリーズには、とにかく、大根の鍋がよく出てくる。
これを、書かれていたとき、先生自身も、凝っておられたようである。

またまた、ちょっと、引用。

「ですが、この・・・・・・その相手を一日だけ生かしておきますと、
一日だけ、世の中が迷惑をするということで・・・・・・」
 半右衛門がいいさしたとき、おせき婆が酒を運んであらわれた。
火鉢に小鍋が掛けられる。
昆布を敷いた湯の中へ、厚めに切った大根が、もう煮えかかっていた。
これを小皿にとり、醤油をたらして食べる。
何の手数もかけぬものだが、大根さえよろしければ、こうして食べるのが
梅安は大好物であった。

「仕掛人・藤枝梅安「梅安蟻地獄」」池波正太郎著 講談社文庫 から
「闇の大川橋」

この料理日記を書き始めた、ほんの初期、既に、真似をしている

「梅安」には昆布出汁だったり、油揚げだったり、
千六本であさり剥き身だったり。何回も出てくる。
エッセイにも書かれており、こちらには、鶏で出汁をとってもよい、
と書いてあったので、これも試し、筆者は鶏に、落ち付いている。

帰りがけ、出汁兼用の、鶏手羽先と、大根半分。
今日は、豆腐も入れてみよう。木綿のよいものを買う。

帰宅。

まず、火鉢に火を入れる。

比較的、大きな鍋に、水から手場先を入れ、
大根は、すぐ食べるために、小さく切ったものと、
後から食べるために、大きく切ったものと二種類入れ、
そのまま、鍋に入れ、煮る。

小さく切った、大根が煮えるまで、10分ほど。
灰汁はすくっておく。

土鍋を用意し、小さく切ったものと、手羽を二つほど、と、汁を取り
豆腐は、ここで入れる。煮過ぎると、“す”が入る。

火鉢へ移動。

こういう場合、酒の燗に困る。

陶器の火鉢のため、五徳が一つで土鍋をかけると
酒の燗をつけるための、鉄瓶(てつびん)が掛けられない。

酒の燗も同時につく、長火鉢・・・が、欲しいと、思う場面である。

鉄瓶は、ガスで加熱し、燗をつける。(菊正宗)

食べる。

醤油だけで食べる。

騙されたと思って、やってみてほしい。

大根とは、こんなにうまかったのか、と思う。
そういう食べ方である。

大根を喰い、豆腐を食い、柔らかくなった手羽を喰う。
酒を呑む。

手羽の出汁も出て、醤油をたらし、つゆも、のむ。

火鉢、大根鍋、燗酒。
寒くなると、よい。


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