断腸亭料理日記2004
9月5日(日)夜
そろそろ、風邪ともおさらばしたい。
しばらくご無沙汰で、行かなくてはならない、と
思っていた。
根岸の洋食、香味屋(かみや)である。前回。
今、東京下町の洋食屋としては、いろんな意味で最高峰ではないだろうか。
歴史から見れば、煉瓦亭の創業109年には及ばないが、
香味屋も大正14年(1925年)創業、今年で、79年。立派な老舗である。
味もよいが、値段もよい。
台東区根岸。
江戸の頃、根岸は、根岸の里などとよばれ、江戸の郊外、
大店(おおだな)の寮(隠居所だったり、妾宅であったりした、別宅)などが
点々とあり、風雅な場所であったという。
その後、明治以降はいわゆる、花街として栄えた。
このため、この店も、今は最寄りは鶯谷という立地であるが、
歩くと、少し、ある、妙な場所。
街の方が先にできていたのである。
今でも、香味屋の界隈には、そう思ってみると、
街の造りというのか、家並みにそんな匂いもする。
一応予約する。
拙亭からは車で10分ほど。
予約するまでもなく、さほどに混んでもいなかった。
牛テールシチューに、妻が牛タンのクリームコロッケ
取り合わせサラダ。大盛ライス。
筆者は、とにかくデミグラスソースが食べたかった。
ほどなく料理が運ばれる。
大きな牛テールにたっぷりと、デミグラスソース。
付け合せの野菜は、ポテトサラダ、ブロッコリー、にんじんのグラッセ。
ポテトサラダはカレー風味で、焼いてある。
ブロッコリーとにんじんは、ふっくら瑞々しく仕上げられている。
牛テール。最近では、イタリアンのカプチノ
で食べたが、カプチノのものは、とろとろのゼラチン質であったが
今日の香味屋のものは、もう少し、固めにしっかりと仕上げられており、
肉を楽しむように、なっている。
さてさて、お楽しみのデミグラスソース。
もうこれは、筆舌に尽くしがたい。絶品。
もちろん、日本人の口にも合っているのであろうが
ここのデミグラスソースほど、ご飯にあっているものを食べたことがない。
デミグラスソースというと、なにか、粉っぽかったり
フレンチだと、焦げた、苦味、赤ワインの苦味のようなものが強かったり、
果ては会社の社食のハンバーグなどになると、
糊が入っているようなベタベタ粘るようなものもある。
なにか、形容をしなくてはならないが、
あと味が非常に、よい。
へんなクセのようなものは、まったくなく、さわやか。
フルーティー、などという言葉が思い付いてしまうような
当然、旨みはたっぷりありながら、
フレッシュで、すっきりした味なのである。
大盛のライスで、デミグラスソースを味わい尽くした。
おいしゅうございました。
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