断腸亭料理日記2024

浅草・そば・尾張屋本店

4665号

10月23日(水)第一食

曇り。
雨もポツポツきそう。

だが、気温高く多少蒸し暑い。

さて、なにを食べよう。

今日は浅草方面だ。

そば、久しぶりに[尾張屋]へ行こうか。

鴨せいろあたり。

[尾張屋]でも鴨せいろは食べたことがあると思うが
どんなものだったか、はっきりとは覚えていない。

14時ちょうど頃、到着。

暖簾を分けて入る。

そこそこ空席も多い。
私のような者には、このくらいだと居心地がよい。

右側のテーブル席へ。
ちょうど、元祖断腸亭永井荷風先生の写真が
正面に見える位置。

テーブル上の品書きを手に取ると、、、
ん!。

松茸。
そばを始め、様々な松茸料理の写真。
もちろん、土瓶蒸しもある。

そうか、もうそんな季節であった。

ここでは、毎年、松茸の土瓶蒸しを食べるのが
私のささやかな恒例になっている。

よし。
今日は、呑むつもりではなかったが、
方針変更。

土瓶蒸しで一杯やろう。

お酒冷(ひや)で一合。
それから、土瓶蒸し(2200円也)。
鴨せいろも頼んでしまう。

お姐さんは、おそばはずらしますか?、
すぐに、できてしまいますので、
お声をお掛け下さい、と。

鴨せいろならば呑みながらでも手繰れるので
成り行きで出してもらってもよかったのだが、
言葉の通りにしてもらう。

私は、東京の人間で秋になったからといって
松茸を食べる習慣はない。
ただ、秋の記念として、土瓶蒸しくらいは食べて
置きたい、と、まあ、気は心の思いではある。

酒とそば味噌がきた。

ここは大関のガラスの一合瓶。

一杯、二杯。

土瓶蒸しもきた。

開けて、すだちを絞り、添えてある猪口につゆを注ぐ。

一杯。
香りもさておき、よい出汁。
松茸、蒲鉾、三つ葉、銀杏。

松茸も一つ、つまむ。

調べたら、正岡子規にこんな句を見つけた。

虚子を待つ松蕈鮓(まつたけすし)や酒二合 子規

リズムが流石。

子規は西日本の人だからであろうか、松茸が好物であったよう。
松茸をたくさん詠んでいる。
松茸寿司というのは、にぎりのようである。
焼いたもの、あるいはゆでたもののスライスをにぎるよう。

この句は、亡くなる5年前の明治30年(1897年)。
おそらく、根岸の子規庵。
病状は出ているが、活発に活動している。
根岸で松茸の寿司、とは、どうしたのであろうか。
近所の鮨やではあるまい。
だが、この頃とはいえ、東京でも松茸は手に
入ったのであろう。母上、または妹御に作ってもらったのか。
あるいは、前書きに「碧梧桐(へきごどう)先づ到る」と
あるので、彼が調達してきた手土産かもしれぬ。

私はというと、酒を呑んで、松茸をつまんで、つゆ呑んで
いるうちに、さすがに薄汗がでてきた。

鴨せいろも頼む。

ここのそばは、更科や砂場ほどではないが、多少色が
白に寄っている。
ちょっと上品。

薬味はねぎに、わさびではなく、おろし生姜。
鴨せいろでもわさびを出すところも多いと思う。
個人的には、わさびが、よいか。

鴨肉からつまむ。
薄めのスライスだが、焼いたもの。

ん!。

燻製か?、なにか香りも付いている。

変えたのか、以前からこうであったか。
覚えていないが。
が、なかなか、よい香りとうまみで、よろしい。

別に切った脂身もつゆに煮出してあるよう。

うまい、鴨せいろ。

ご馳走様でした。

 

 

台東区浅草1-7-1
03-3845-4500

 

 

 

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