断腸亭料理日記2024

東京風おでん

4670号

10月28日(月)夜

さて、おでん、で、ある。

やっと寒くなってきたので、季節、で、ある。

このところ、おでんといえば、沖縄風、というのか、
しょうゆ味だが、豚足を入れたものを気に入って
作っていた。

名古屋だったり、静岡だったり、牛すじが入る
おでんはコッテリのつゆでうまいのだが、その
同類ということになろうか。

だが、やはり、久しぶりに私の故郷の味、
東京風も作らねば。

おでんというのは、東京で生まれた。
元来はご存知のように、豆腐や里芋、こんにゃくを
ゆでたり焼いたりし、味噌を塗って食べるものが
田楽であったわけだが、それが、つゆで煮込んだ
ものになったのが、現代のおでん。
時期は諸説ある。私自身も調べてみた。以前は
江戸末などといわれていたが、実際のところは
もっと遅く明治も後期、明治20年(1887年)以降に
生まれ、30年あたりの一般化というのが、正しいのでは
ないか、と、考えている。場所は東京。

これは、東京なので、濃いしょうゆ味。
この後、急速に全国に広まり、各地のつゆの味付けで
各地の名物具材が入るようになったと考えている。

東京の濃いしょうゆ味のおでんは、かろうじて東京の
いくつかの店に残っている程度でほぼ東京でも滅んで
しまっている。
東京のしょうゆ味のおでんは、つゆで煮ているが、
しょうゆのみで、色は真っ黒。どちらかといえば、
煮しめといった感じ。東京の庶民の煮物は、出汁など
入れずにしょうゆのみで色濃く煮付ける。これが
品はよくないかもしれぬが、伝統的な姿であろう。

材料は、上野松坂屋へ買出し。
松坂屋の食品売り場は日本橋[神茂]のおでん種を
置いてる。

出る前に、玉子を三つゆでておく。
大根は入れなくとも、玉子は必須、で、ある。

松坂屋の地下で[神茂]のはんぺん。
普段はんぺんはあまり食べないのだが、まあ、
これは元祖なので、買っておこう。
すじも必須。あとは、ごぼう巻きなど揚げ物
いくつか。つみれがほしいが、ない。
置かないはずもないので、切れているのであろう。
あとは[神茂]のものではないがちくわ。
それから、豆腐。こんなものでよいか。
入れすぎても食えない。

帰宅。

[神茂]のすじとはんぺん。

同じく、

ごぼう巻き、やさいのさつま揚げ、がんも。
がんもどきは、練り物ではいが[神茂]も出していた。

ちくわ。

これは、ブランドは知らないものだが、太いおでんに
入れるものではなく、細いものであった。

玉子冷えているので、むく。
ゆで玉子は冷えてからむかないとぼろぼろに
なってしまう。

鍋にしょうゆ、水。これだけ。

玉子を下に入れ、あとはどかどかと。
豆腐は崩れるので、上に。

もう、あとは煮るだけ。

練り物は、意外に早くしょうゆが染みる。

火を付けたり、消したりを繰り返す。

しょうゆの濃さにもよるが、今日は3時間弱。

食べる直前に、はんぺん。
ご存知の通り、はんぺんは煮すぎるとペタンコ
になってしまう。

一皿目。

ビールを開けて食べる。

玉子はもう少し味がしみてもよいが、まあ、そこそこ、
食べられる。

[神茂]のガンモは初めて食べたが、かなりしっかり
している。普通、特に煮るとつゆをたくさん含む
と、思うが、まあ、どちらかといえば、厚揚げ、
豆腐までいかないが。
だが、これはこれで、ちょっとおもしろい。

二皿目。

豆腐も味はもう染みている。

野菜のさつま揚げはきくらげが入って、よい食感。
なかなか、うまい。

ごぼう巻き。
流石に[神茂]なかなか太いごぼうが入っている。
うまいもんである。
○○巻きというのは、よくあるが、やはり
ごぼう巻きが、一番であろう。
なぜであろうか。ごぼうが油と相性がよいというのが
一つあるのであろうが。

そして[神茂]のはんぺん。

元祖はんぺん。江戸中期、ふかひれを中国に輸出した後の
さめの身から作ったと[神茂]は言っている。
でかい。これで、1/4。
一般のはんぺんよりも数割増しのフワフワ。

ともあれ。
すべて、しょうゆの煮しめ、の東京風おでんだが、
やっぱり、私には安心のできる味、で、ある。

 

 

神茂

 

 

 

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