断腸亭料理日記2024

桜鍋・森下・みの家

4582号

6月9日(日)夜

さて。

一週間たってしまったが、お祭りの夜。

深川森下の桜鍋[みの家]へ。

ほぼ一年ぶりになるよう。

毎度書いているが、鍋というのは今は冬のものだが、
以前は、夏のものであった。
暑い時期、体力が落ちるので、力らを付けよう、
というのもあるし、暑いときには、熱いものを
食べるというものであった。
もちろん、冷房などない時期。
よけい暑いのだが、それがよかった。
例えば、甘酒なども冬のものではなく、夏飲むもの
であった。

ちょっと半端な時刻だが、16時半頃。
ここは、通し営業なので、OK。

森下までは、大江戸線で新御徒町から三つ目。

蔵前までは本所で森下から深川。

本所は墨田区、深川は江東区。
今もそうだが、この区境は、上に高速が走る堅川
かと思うと、そうではなく、堅川の南に鋸の歯のように、
食い込んでいるのである。かなり妙である。

区境というのは、むろん明治以降だが江戸期から
堅川の南に本所松井町、同林町というのがある。
これは地域名を表す、通称なのか。
隅田川の西側、私のすむ浅草、下谷あたりは、浅草、
下谷という行政単位があったわけではなく、通称であった
と思われる。
しかし、本所深川については、多少違っていたのでは
ないか、と。江戸開府時は隅田川の東側は江戸に
含まれてはいなかった。
当時、本所深川は湿地帯で、隅田川西側の人口増加により
土地が足らなくなり、幕府が旗本に指示し埋め立てを行い、
人の住める土地にした。
(例えば本所は旗本、徳山五兵衛などが名が知られている。
深川は深川八郎右衛門という者。この人物は初期の
埋め立て者で、地名にも名を残し、後の町役人であったか。)
つまり、公的な指示で埋め立てられたので、境界が最初から
決められていたのではないかと。

閑話休題。

店の外。

時期的に、白い暖簾は、麻。
登録商標、桜になべ。
な、は、変体仮名のな。奈良の奈を崩したもの。
上には金看板。地は青くなった銅なのであろう。

暖簾を分けて入る。
予約はなし。
今はできるようだが、昔は特別室以外は予約は不可で
あった。まあ、この時刻なら問題はなかろう。

下足札をもらって、上がる。

大きな入れ込みの座敷。
ステンレスにガスコンロが並ぶ、長いお膳が
ずっと奥まで続く。
案内され、座る。

桜鍋(一人前2450円也)、二人前とビール。
鍋ができるまで、べったら漬けも。

刺身だったりその他色々あるが、基本頼まない
ことにしている。むろん、意外に高く付くし、
鍋がうまい。

玉子がくる。

鍋もきた。

鍋は磨き込まれた銅製、名入り。
ここ、ビールのグラスもそうだが、ほとんどの
ものが店の名入り。

江戸甘味噌かと思っていたら、八丁味噌
らしい。かない甘いので、もちろん、それだけ
ではなかろう。
白いのは脂。

ザク。野菜のこと。

長ねぎと麩、白滝。
やぱり入れる。

白滝は、特に細いものではないか。
猪鍋は長く煮なければいけないが、馬は逆。
すぐに堅くなるので、色が変わったら、どんどん
食べなければいけない。

まったく、忙しい。

玉子をくぐらせ、

食べる。

食べられたことがある方はおわかりになろうが、
桜肉というのは、さっぱり。
昔は、馬なので、けっとばし、などと呼ばれていた。

どんどん、食べる。

どんどん、食べる。

そして、ご飯、なのだが、、、肉を食べ切ってしまっていた。

もう肉を一皿もらおうか。ロースを追加。

そして、ご飯とお新香。

ご飯一人前と、お新香。

玉子の残りと、肉、そして、この、どろどろに
なったつゆ、というのか、たれ、というのか。

もしかすると、これがもっともうまい、
かもしれない。
なにしろ、脂が溶けだした甘い味噌味のたれが
まさに堪えられぬ。

席で勘定。

ご馳走様でした。


桜なべみの家

江東区森下2丁目19番9号
03-3631-8298

 

 

 

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