断腸亭料理日記2024

神田須田町・鳥すきやき・ぼたん その1

4514号

2月26日(月)夜

さて。

またまた、寒くなっているが、今日は鍋。

内儀(かみ)さんが、神田須田町、鳥すきやきの
ぼたん]の予約をしていた。

18時から。

春日通りでタクシーに乗って、神田須田町まで
向かう。
御徒町を抜けて、湯島天神下から例の昌平橋通りに
入り、昌平橋を渡り、二つ目の信号で降りて、歩いて
向かう。

[いせ源]や甘味の[竹むら]の通りの手前角。

[ぼたん]の角なのだが、軒行灯(のきあんどん)がある。

前にも書いたが[ぼたん]の玄関はなぜか、この
[いせ源]などのある少し広い通り側ではなく、
曲がった、路地にある。

以前はこの広い通りがなく、路地しかなく、こちらに
玄関ができた?とも考えたのだが、それも不自然か。
もしかして、方位の関係、縁起担ぎ?。
広い通り側だと、北向きになるが、路地側だと、
東向きになる。
わからぬが、もしかしたらそんなことなのかもしれぬ。

門。

看板に墨で鳥ぼたん。

奥の紺の暖簾は中央に白抜きで鳥。
右に、旧町名の連雀、左にぼたん。

入って、下足の小父さんに名乗って、上がる。

お二階へ、とのこと。

二階というのは、初めてである。
あまり使っていなかったのではなかろうか。

幅の広い木の梯子段を二階へあがると、大広間。
どのくらいあるのか、かなり広い。

ここにお膳と焜炉を並べて、広い入れ込みとして
使っているよう。

お膳。

欄間。

ここも、東京都指定の歴史的建造物。
戦前、昭和5年(1930年)頃の建築という。
やはり、この界隈、戦災を受けていないのである。

数寄屋造りといってよいのだと思うが、
浅草の[今半別館]のこれでもか、という豪華な
ものではない。
まあ、シンプル。

ちょうど床の間の前。
座って、ビール。
キリンラガー。

お通しは、まぐろ佃煮。

基本ここは、鳥すきやきのコースのみ。
一人前9,000円也。

お膳の隣に墨の熾きた焜炉。
黒くなってよくわからぬが、これは鉄鍋。

その隣にももう一つお膳があり、ここにお姐さんが
鶏やらねぎやら、鍋の具を運んでくる。

鶏肉は、もも、胸、皮、レバー、砂肝。
そして、丸めたつくね。

そして、白滝、焼豆腐、ねぎ。

ねぎはかなり立派。太い。
毎度書いているが、きっちり太さが揃っている。
おそらく、浅草[葱善]の千住葱であろう。

やはり最初はお姐さん。

鶏皮から入れ、脂を出す。

そして、割り下を入れ、鶏肉それぞれ、白滝、ねぎ
焼豆腐を入れる。

鳥すき焼き、とこの店では言っている。
まあ、鳥鍋、軍鶏鍋といってよいのだろう。

ここも池波レシピ。
池波正太郎先生が行き付けであった店。

戦後も行かれているとは思うが、毎度出てくる、
株で儲けて、遊びまわっていた十代の頃。
友人とここで腹をこしらえて、吉原へ、という
コースであったと、エッセイに書かれていた。

池波作品「鬼平犯科帳」に毎度お馴染み、本所二つ目
軍鶏鍋や[五鉄]というのが出てくる。
そこには、笹がき牛蒡が入るものが出てくる。

[ぼたん]では、笹がき牛蒡は入らないし、
どうであろうか、他の鳥鍋やでも見たことはない
ような気がする。やはり、ねぎ、白滝、焼豆腐
なんというあたり前のものが多いだろう。
牛蒡が入る店、例があったのか。
池波先生の創作ではないのだろう。

自分で軍鶏鍋をやってみるとわかるが、鶏肉、
特に、ももや胸の正肉は、レバーやらと比べると
煮えるのに、少し時間がかかる。

それで、ここは胸やらももは、かなり薄く
スライスで出される。

それで火が通るまで、そうそう待たねばならない
ということには、ならないですむ。

煮えてきた。

 

つづく

 

ぼたん

 

 

 

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