断腸亭料理日記2024

神田須田町・あんこう鍋・いせ源 その1

4690号

12月1日(日)夜

さて、日曜日。

12月に入った。

今日は神田須田町のあんこう鍋[いせ源]に
予約をした。

今日はよい天気。

最高気温は16.6℃(13時31分)。
12月1日の平均最高気温は、14.1℃。

このところこんな感じだが、やはり少し暖かい。

予約は18時。

タクシーで向かう。

春日通りを真っすぐ西へ。御徒町を抜けて、
湯島天神下を左。昌平橋通りを真っすぐ。
昌平橋を渡って、二つ目の信号で降りる。

須田町のこの一角だけ、道が斜めになっており、
ちょっとわかりずらい。
これは江戸からのもの。
江戸の頃、昌平橋と明神下の通りは同じ場所に通っている。
ただ、万世橋は明治になってからなのでまだなく、
ちょうど万世橋と昌平橋の間あたりに、筋違(すじかい)橋
・筋違御門があった。これは江戸城の外郭の門なので、
警備のための大番屋もあり、その前は大きな広場であった。
今の中央通り、将軍などが上野寛永寺に墓参に行く、
御成街道がここを通っていたわけである。
神田川はここは東西真っ直ぐではなく、少し右に傾いており、
これに合わせて筋違橋も傾き、それに合わせて前の須田町・
連雀町の通りも傾いているのである。お分かりになろうか。

ともあれ。

タクシーを降りて、軍鶏鍋[ぼたん]、あんこう鍋の
[いせ源]、その前が、私は行かないが甘味処の[竹むら]が
並んでいる通り。

もうこの時刻は真っ暗。

いせ源の看板。菊正宗。

この風情、[いせ源]は国指定の歴史的建造物。
ちなみに[ぼたん][竹むら]も同様。
この界隈、戦災で焼けていないので今もわずかに
これら戦前の建築が残っている。

正面。

味のある玄関。

「名代 あんこう鍋 いせ源」の看板。
黒に赤と緑のデザインが意外に斬新。
なかなか立派だが、これは比較的新しそう。

その下に「千客万来」があって、なに色というのか、
薄茶の暖簾、丸にいせ源。

右側のなんというのか、ショーウインドー的な部分。

まず、右側の看板がおもしろい。
あんこうではなく「塩ゆでかに 江戸前料理」。
以前、大正、戦前あたりまでであろうか、あんこう鍋
以外にも様々な鍋を出していたと、聞く。
その後、メインのあんこう一本になったよう。

そして、下に生のまるのままの鮟鱇。
氷が鮟鱇の上下にあって、上の網の中にも氷。

鮟鱇の吊るし切りというが、以前はここに
ぶら下がっていた。

江戸・東京だけなのか、全国的なものなのかわからないが、
料理やの場合、その店で食べさせるものを店先に出して
おくというのは、昔からのスタイルといってよいのだろう。

両国の[ももんじや]も今ははく製だが、
以前はほんものの毛むくじゃらの猪をぶら下げていた。
また、うなぎやでは、桶や飯台、あるいは小さないけすに
生きたうなぎを入れておき、客は、見て選び、こいつを
裂いてくれ、というものであったようである。

ともあれ。
暖簾を分け、硝子格子を開けて入る。

赤い店の半纏を引っかけた下足番の小父さん。

名乗って、靴を脱ぎ、あがる。
番号の入った下足札をもらって、幅の広い階段を昇り
“お”二階へ。

“お”二階の仲居さんに、札をみせて、座敷へ。
道路側の座敷の中央付近。

ここは、個室ではなく、仕切りや屏風もなく
畳にお膳がぎっしり並ぶ、いわゆる入れ込み。
そう、隣の[ぼたん]も基本入れ込み。
例えば、この近所でもうなぎやの明神下[神田川]は
きちんと襖の戸がある個室。
やはり、この違いは、肩肘張らぬ庶民的か否か。
まあ、端的にいえば値段の違いか。
ただ、もちろん、今はここも[ぼたん]も価格は
とても庶民的ではない。歴史的な経緯が残っている
ということになろう。
現代的には、違和感があるかもしれぬ。

朱塗りのお膳。

ガスのコンロ。

ビールと、あんこう鍋、一人前4000円也で、
二人前を注文。

以前はあったかどうか覚えていないが、10000円〜の
コースもあるよう。
ただ、ここではこれだけで、私は十分。

が、今日は内儀(かみ)さんの希望で、
から揚げを一つ。

鍋がきた。

肝も入った、鮟鱇、身とコラーゲンのある皮。
三つ葉、椎茸、きぬさや、銀杏、白滝。
つゆはしょうゆのちょい濃いめ甘辛。
で、ここで悲しいお知らせ。
東京の白いうどが入るのがきまりなのが、今年は、
採れていないとのこと。夏の猛暑のせいであろうか。

白滝がここは特注。そう!、あの細いタイプ。

ビールはキリンラガー。
お通し。

やはり、気取らない。
蓮根のキンピラ。


つづく


いせ源
h

千代田区神田須田町1丁目11番地1
03-3251-1229

 

 

 

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