断腸亭料理日記2023

断腸亭の夏休み2023 慶良間〜八重山 その18

4428号

引き続き、竹富島。

竹富島にあった西塘御嶽(ニシトウオン)というものから、
琉球・沖縄の伝統的宗教について書いてきた。
集落に一つ、御嶽(オン、ウタキ)と呼ばれる集落の
祈りの場があった。

 

そして、昨日出したが、もう一度、
これ。

これは、先の慶良間渡嘉敷島の阿波連にあった鳥居。
ちょうど、ダイビングのボートが出る阿波連の港、
桟橋の近くにあったのだが、先の理由で、中に入るのは
遠慮した。

これ、なんだったのか?。
やっぱり、御嶽・ウタキなのか?。

なんと、グーグルマップに名前がのっていた。
これ、イビガナシーというよう。
ウタキとはいっていない。

そして、お世話になったホテル[ケラマテラス]の
ダイビングサービスのページにちょっとした説明が
書いてあった。

「旧暦の3月26日に、港のイビガナシー(神社)で、
漁師やダイビングショップの人たちが海の安全を祈願します。」
(本文まま)と書かれている。
おそらく社長が書かれているのだろう。こうした伝統の行事、
神事を大切にされているのがよくわかる。

イビガナシーを神社と本土人にわかりやすいように
書かれていると思うのだが、イビガナシーは神社ではなく、
イビガナシーなのであろう。
(ついでだが、昨日見た竹富島の西塘御嶽にも鳥居があるが
やはり本質的に日本の神社とは別のものであることは明らか
である。)

イビガナシー、調べてみると、やはり集落のウタキとは
また違ったもののようなのである。

沖縄本島東部、中城村の海岸に屋宜のイビガナシーというのが
あり、また渡嘉敷島近くの離島、渡名喜島、粟国島の2か所、
例が見つかった。

粟国島の例

を見ると、ウタキもありながら、イビガナシーも
別のものとして存在している。

渡名喜島の例

は、昔話で、「石の間から海亀が出てきたので、
その家の人が捕まえようと思い追いかけてゆき、東の
浜まで来るとその浜に突き出た石の中に姿をくらまして
しまった。」これをイビガナシーとして祀っている、と。
(「沖縄渡名喜島の実話・伝説・昔話」東喜望(1990
白梅学園短期大学紀要))

イビガナシーの言葉自体を調べると、イビとガナシーに分かれ
イビは日本語の石と考えてよいか。
特に、ウタキの最も神聖といわれるところ(石)を、
イビというよう。 (沖縄県立図書館

ウタキの神聖な場所=石というのは、おそらく依り代
(よりしろ)ということであろう。

ガナシーは沖縄の言葉で広く使われるが、敬称。
ウスガナシー(国王様)、ウヤガナシー(親御様)。

石様、という感じであろうが、イビガナシーを訳す意味はあまりなさそう。
おそらく神そのもの、あるいは神の依り代。

日本でも古い神社、おそらく、縄文あたりまで
さかのぼる、の(古い)ご神体(依り代)は石、特に巨石の例は多い。
思い付くだけでも、福岡県宗像大社、広島県厳島神社、
長野県諏訪大社などある。

そして、イビガナシーは、海辺、特に離島の海辺に多くある。

ウタキの本体は、その集落の祖先神だが、イビガナシーは
それとはまた違った、海にまつわる神様という理解が
できそうか。
沖縄の伝統的宗教にはこういう例もある、ということであろう。

さて。もう一つ。
先にちょっと書いたが、竹富の西塘御嶽と渡嘉敷の
イビガナシーを見たが、どちらにもある、鳥居。
これ、私にはどうしても気になる、のである。
鳥居は、明らかに日本の神社のもの。
本来はなかったのでは?と。

調べると、やはりそのよう。
明治になり琉球王国を事実上廃し、正式に日本領とした
明治政府は、ウタキなどに、国家神道化、日本の神社の
象徴である、鳥居を建てるように指導(強制?)した
ようなのである。

これは戦後になって、取り払われる例もあったようだが、
既にその頃には、沖縄でもある意味、鳥居が定着して
しまい、そのまま置かれているところも多いと。
[ケラマテラス]の社長(?)がイビガナシーを神社と
書いていたのは象徴的かもしれない。

琉球・沖縄の伝統的宗教事情、
内地の人間はほぼ知らない。
言葉も違い、また内容が複雑、難解といってもよく
わかりにくい、ということもあるだろう。
現状、どんな風に継承されているのか、実態は
今回だけではわからぬが、渡嘉敷阿波連のイビガナシー
では、春に今も海の祭は行われているよう。
貴重な民俗文化財、やはり、内地人もできるだけ理解し、大切に
するべきもの、であろう。

さて。

竹富島、歩いていると、あまりに暑い。
熱中症、寸前かもしれぬ。

小さな食堂へ入ってみる。
エアコンなし。
だが、アイスがある。

これ、ご存知であろうか。

ブルーシール。

沖縄のアイスといえば、なぜかこれ。
どこにでもある。
私は塩ちんすこう味、というものにした。

さっぱり。
うまい。

 


つづく

 

星のや・竹富島

 

 

 

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