断腸亭料理日記2023
4434号
10月20日(金)夜
さて、金曜日。
毎度お馴染み、浅草・弁天山[美家古寿司]。
先月、沖縄に行っていたので、
ちょっと久しぶり。
数日前に内儀(かみ)さんが予約をしていた。
夜、6時。
タクシーで向かう。
暖簾を分けて、入る。
つけ場には若親方。
挨拶をして、カウンターの若親方正面に掛ける。
テーブルも含めて、にぎわっている。
満席。
掛けてビール。
瓶のキリンラガー。
お通しは、まぐろ血合いの佃煮。
さて、つまみ。
毎度だが、たこは?。
なし。あー。
やっぱり、江戸前仕事のたこはあれば食べたい。
残念。
ではなににしよう。
これも、いつものことだが、鰹は食べたい。
もちろん、鰹なら、ある。
もう、落ち鰹か。
ん!。
ガラスケースの中、蝦蛄に目がとまった。
わりにいつもあったとは思うが、
蝦蛄はあまり食べない。
が、ちょっと気になった。
なにかというと、色が付いている。
ただゆでただけではなさそう。
鰹と、蝦蛄!。
と、その前にこんなものを出してくれた。
見た通り、左が下足で、右が煮凝り。
下足は、すみいかの下足。
緑色のものは、山椒の葉の塩漬けとのこと。
始めて。
若親方の工夫か。
ご存知の通り、山椒の葉は木の芽、などともいい、
そのままで使うが、さわやか。
塩漬けにして、香りは多少抑えられ
塩味を加えるということか。
煮凝りは、なんの魚を使ったのか聞き落として
しまった。
さっぱり、うまい。
そして、鰹と蝦蛄もきた。
まず、鰹。
すだちが添えられている。
魚やでも鰹は今、たくさん売られている。
毎度書いているが、私はまず、買わない。
こうして、プロの目と手を経たものと、
雲泥の差があるから。
鰹というのは、あまり言われないが、足が速い
と思うのである。
血の味が鰹ではなく、みずみずしいのが
鰹の味。
そして、蝦蛄。
やはり、出汁を煮含めさせてある。
気持ち甘いか。
ただゆでて甘いたれをかけたものしか
食べたことがなかったが、これも
江戸前の技、なのであろう、
さて、ここから、にぎり。
いつも通り、いかから。
もちろん、すみいか。
もう10月、ノーマルサイズのすみいか。
子供のすみいか、新いかというのは、ほんの一瞬、
なのである。
むろん、普通のすみいかとして、うまい。
プチっとした歯切れと、あまみ。
次は、白身。
鯛と平目昆布〆。
どちらも厚みがわかるであろう。
今、一般の平目や鯛のにぎりはもっと薄かろう。
仕事をした白身は味が濃縮されている。
で、あれば、厚く切って方が、うまい、
ということになるのか。
昆布〆、というのは、どこのもの、
なのであろうか。
むろん江戸前の技でもあるが、富山や金沢、
北陸では白身以外にも多用される。
どこが本場なのか。
あたり前のものとして、全国にある、あった
のか。
今、フランスなどにも昆布は入っている
と聞くが、この昆布〆の手法は、かなり
偉大だと思うのだが。
いか、白身の次は、光物。
まずは、小肌。
半身でにぎり一つ。
皮に四本の包丁の刃が入っている。
黒い斑点のグラデーション。
美しいではないか。
これぞ、江戸前のにぎり鮨。
強くもなく、浅くもない、よい塩梅の〆加減。
うまい小肌のにぎり、で、ある。
つづく
台東区浅草2-1-16
03-3844-0034
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