断腸亭料理日記2023

うなぎ・小島町・やしま

4450号

11月18日(土)夜

さて、うなぎ、小島町[やしま]。

超ご近所。
毎度書いている、元浅草[砂場]の春日通りを
はさんで前。
小島町交差点の交番隣。
拙亭から歩いて数分。

ご主人とももう長いお付き合い。

内儀(かみ)さんが食べたいと、予約をしていた。
土日はお休みのことが多いのだが、珍しく
今週の土曜は開けていたよう。

うなぎ自体しばらく食べていなかったような
気もする。
8月の浅草[小柳

が最後か。

9月に沖縄へ行っていたというのもあるが、
うなぎを食べたいと思い付かなかったのであろう。
食べないようにしていたわけでは毛頭ない。

東京で生まれ育ち、うなぎ蒲焼は私の故郷の
誇るべき伝統食であり、飛び切りのご馳走。
大好物。これは変わらないのだが。

うなぎを食べる間隔というのは、どのくらいが
よいのだろうか。
ヘンな言い方だが、こんなことを考えたことがある。
同じように間隔を気にしてしまうのは、同じ
東京名物の、鮨、天ぷらも。
2か月か、1か月か、さらに短いか。

どれもむろん安くはない。
好きなものは毎日でも食べたい?。
だが、財布にはやさしくはない。
このせめぎあい、バランス?。

天ぷらよりも鮨の方が、頻繁に食べたくなる。
鮨は、3週間。天ぷらは1.5か月程度、2か月を越えても
よいか。このあたりが落ち着いたとこと。
うなぎ蒲焼だったら、以前は1か月1回程度が適切では
ないかという結論に達していた。
(皆さんはいかがであろうか。)

そういう意味でも、ちょっと間があいていた
という感覚である。

店に入り、ご主人に挨拶。

座敷に上がり、テーブルに掛ける。

瓶ビールをもらう。

プレミアムモルツ。

お通しは毎度書いている、味噌豆。
辛子じょうゆに青海苔。

乙、で、ある。

味噌豆は、江戸落語にも登場するが、
もう、ここでしか見られなくなったものと
いってよろしかろう。
なくなってほしくないもの。

注文は、白焼きと、うな重。
どちらも、小さい方。

ビールから酒にかえる。
ぬる燗。

お新香もくる。

少し前から、酒は剣菱(黒松)になっている。
東京の和食の老舗は、菊正宗を使っている
ところが今でも多く、伝統的に馴染み深い。
剣菱は、それを上回るポジションといって
よいのだろう。伝統的に。
今も価格は菊正よりちょい高め。歌舞伎や浮世絵の
酒樽には剣菱の印が入っているのをよく見る。
落語でも、うなぎやは時間がかかるので、酒を呑んで
つなぐのが通例。それでうなぎやの酒は、よいもの、
という認識があった。

白焼きがきた。

添えられているのは、塩とオリーブオイル、生わさび。
私はやっぱり、わさびじょうゆ。

むろん焼きたてで、皿も温められたもの。
生ぐさみなどまったくなく、香ばしく、柔らかく、
あまい。
これぞ、江戸前の味。

白焼きというのは、難しい。
浅草のよく知られた老舗でも、時によって
妙に生ぐさいものを出されたことがある。
焼き方もあるのだろうし、焼きたてで温かい
というのはとても重要な要素なのであろう。
一度冷めたものを温め直して出されたのか。

食べ終わる頃、お重がきた。

肝吸い付き。

開ける。

やはり、このふたを開ける瞬間というのは
ワクワクドキドキ、なに事にも代えがたいもの。
今から、うまいうな重が食べられる、と。

そして、恭(うやうや)しく山椒を振る、儀式にも似た動作。

お重を左手に持ち、蒲焼と飯に同時に箸を入れ、
同時に、口に運ぶ。

夢中で掻っ込む。

食べる前の儀式は恭しいが食べるのは、やはり
こうでなくてはいけない。
ある年配の有名人が、丼物は手に持って食べ終わるまで
置いてはいけない、と言っていた。
やはり、そういうもののように私も思う。
丼の発祥は、時間がない昼時にそれまで別々に
食べるご飯の上におかずをのせた、と。(これは
人形町[玉ひで]の親子丼発祥の逸話だが。)

ともあれ。

勘定は二人で、15,000円也。

ご馳走様でした。
今日もうまかった。

 

03-3851-2108
台東区小島2-18-19

 

 

 

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