断腸亭料理日記2023

そば・室町・砂場

4345号

5月26日(月)第一食

さて、月曜日。

なにを食べようか。
天気もよい。暑くなるか。

そば。

室町[砂場]まで行ってみるか。

毎度書いているが、あのあたりまで、自転車でも
そう遠くはない、のである。

日焼け止めを塗って、帽子をかぶってUVカットの
長袖パーカーを着て出掛ける。

清洲橋通りから神田川、靖国通りを越えて、
神田金物通り、中央通り、今川橋の次の交差点を
右に入ったところ。

ここは中央区日本橋室町四丁目で、この一本前が境で、
千代田区神田鍛冶町一丁目。
今川橋は元は龍閑川(神田八丁堀)という堀に架かっていた
わけだが、ここが神田と日本橋の境。
ここは日本橋の最北端。だが雰囲気は、まあ、神田であろう。
ちなみに、今川焼はこの今川橋の袂でやっていた店が最初で、
今川焼というようになったと聞く。(江戸中期ともいうようで
なかなか古い。 ウィキ

さて、室町[砂場]。
創業は明治2年(1869年)。
現在まで同じ暖簾のそばやで経営が変わったりしているが
最古は麻布[永坂更科]。室町[砂場]はその次でよいのか。

が、今日は、ちょっとした疑問に突き当たった。

現代の地図。

明治の地図を見てみよう。明治40年(1907年)

今の室町[砂場]のあたりと思われるところに星印を
入れてみた。

当時の室町という町名は中央通り沿い、日本橋の袂から
北へ三区画。三井本館あたりまでで今よりはもっと
狭い範囲であった。

明治のこのあたりの町割り、町名は、江戸期と大幅には
変わっていないのが特徴であろう。
中央通り沿いに、室町の次は、本町、本石(ほんこく)町
ときて、今の室町[砂場]のあたりは、本銀(ほんしろがね)
町となっていた。

室町という町名が北へ拡大して、今の範囲になったのは、
関東大震災後。

室町[砂場]はどういうことであろうか。
創業の場所が今の場所ではなく実際に室町であったのか。
同じ場所であれば、本銀町[砂場]という名前で
あったのか?。

が、これ、なんのことはない、ウィキに答えがあった。

(どうでもよいが、このページやたらと詳しい。
書かれたのは関係者で調査でもされたのであろうか。)

やはり、名前が違っていたのである。
創業といっている明治2年(1869年)には本石町[砂場]
といっていたという。場所も区画整理などで多少動いている
という。そして、昭和7年(1932年)に、町名変更に合わせ、
室町[砂場]と改称しているとのこと。
なるほど。
室町[砂場]になったのも戦前で、既に90年を越えている。
この名前で立派な暖簾である。

14時すぎ、到着。
入ると空席はあるが、多少待たされた。
まだ、席数を減らしているよう。

10分程度で案内される。

まずは、お酒を冷(ひや)で。

冷といって、常温ですね、などと言い返されなくてよかった。
これだけで、だいなしである。やめてほしい。

お通しは、梅くらげ、か。

季節のおひたし、というのと、あさり?。
お姐さんに聞くと、時雨煮のようなものです、とのこと。
頼んでみた。

やはり、ここ、乙、で、ある。
盛り付け、彩り。

おひたしは、小松菜に椎茸か。

あさりは、時雨煮というほど色は黒くないが、
そこそこしっかりした味付けで、うまい。

そして、そば。
いつも通り、そばつゆに小さなかき揚げの入った
冷たいつけそば。

いつも天ざるだが、今日は天もり、にしてみた。

ここは、ざるが白い更科粉で、もりが黒い挽きぐるみの
黒いそば粉のそば。つゆと天ぷらは同じ。

よい香りで、よい喉ごし。

なにか食欲に火が付く。
どんどん手繰る。

ここ、静かなのがとにかくよい。
こういう空間、貴重であろう。東京から絶滅寸前?。

ほぼ皆、男性一人、そして年齢が高い。
九十近いか、越えられているか、と見受けられる方も
いらっしゃる。

外国人はむろんのこと、おそらく観光客すらいない
のではなかろうか。

今日などはウイークデーの半端な午後で、週末であれば
また違うのかもしれぬが。

段々、行くそばやが減ってくる。
時代の変化には勝てなかろう。

ともあれ。

そばだけ、おかわりももらってしまった。

ちょっと食いすぎ。

ご馳走様でした。

 


室町砂場

中央区日本橋室町4-1-13
03-3241-4038

 

 

 

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