断腸亭料理日記2023
4298号
3月11日(土)夜
さて、土曜日。
今日は、うなぎ。
ちょっと久しぶりかもしれぬ。
ご近所、小島町[やしま]。
旧知、で、は、ある。
土曜日というのは、お休みのこともある
のだが、昼間、やっているのを確認して、
内儀(かみ)さんがTELし、夜に予約をしておいた。
最近はいつも予約をしていっているが、
予約時に、注文を聞かれた。初めて、ではある。
待たせぬよう、準備をしておこうということ
なのであろう。
注文はうな重上二つと、同じく白焼き上二つ。
特上と上があるが、基本私はどこのうなぎやでも
一番上を頼まない。
うなぎやの値段というのは、基本大きさで決まるだけ。
うなぎの質ではない。
私の場合大きさには執着はない。
うまいうなぎやであれば、味は同じである。
17時半。
左衛門橋通りと春日通りの交差点を渡れば、
[やしま]。
こちらもお世話になっている元浅草[砂場]の
通りをはさんで、向かい。
17時半、暖簾を分けて入る。
名乗って、ご主人は準備でお忙しいと思い、
そのまま座敷。こちらへというので、窓側へ。
座敷も、座敷用の黒塗りのテーブル。
一番乗り、で、あった。
ビールと。
お姐さんが、肝焼きができますよ、とのこと。
お気を使って下さったのか。
お言葉に甘えて、二本。
ビールと、味噌豆。
ここのお通しは、ずっと変わらない。
味噌豆というのは、ゆでた大豆。
まったく、ゆでただけ。
味噌にする豆なので、味噌豆というのであろう。
こんなものなので全国にあるのであろうが
東京の伝統的なお惣菜である。
江戸落語、というのか、ちょっと長めの小噺にも
なっている。
こんなものだが、食べ始めると止まらなくなる、という。
しょうゆをかけ回し、辛子を加えつまむ。
この味噌豆のお通しをずっと変えないご主人には
敬意を表したい。
予約していたおかげか、白焼きからきた。
二人前。
付いているのは、塩とオリーブオイル、本わさび。
白焼きには、やっぱり私はわさびじょうゆ。
これ以外考えられぬ。
むろん、焼きたてで温かく、うまい。
これぞ、江戸前の味、で、あろう。
白焼きというのは、そう簡単なものでは
ないのかもしれぬ。
東京のまあ、下町で、そこそこ以上のところ
であれば、まず場違いなものは出てこない、
と思っていたのだが、そうでもない。
少し前だが、こんなことがあった。
昨年のゴールデンウイークの混んでいる時期。
時期もわるかったのであろう。
浅草の某老舗で白焼きを頼んだら、かなり
生ぐさかった。焼き冷ましを温め直すと生ぐさい
のか。一度、こんなものを出されると、
まあ、かなり信用は落ちる。
出くわしてしまったことは身の不幸と思って
諦めるしかあるまい。
ともあれ。
肝焼きもきた。
山椒をふって食べる。
先日も書いたが、魚の肝でこのように独立した
料理になっているのは、うなぎだけであろう。
うまいもんである。
うまぎやの肝焼きというのは、こうしてびっしりと
たっぷり、巻き付けて焼く。なぜであろうか。
お重もきた。
肝吸いのお椀を開け、お重も開けて、
山椒をふる。
毎度書いているが、このお重を開ける瞬間
というのは、実になんとも幸せな時間である。
ステーキ、すき焼き、天ぷら、にぎり鮨、
いろいろと、うまいものはあるが、うな重の
ふたを開けて、山椒をふるという一連の動作の
幸せ度は、No.1ではなかろうか。
これから、うまいうな重を食えるという期待の
セレモニーのような時間。
アップ
よい色、で、ある。
これも毎度書いているが、ここの蒲焼は
さっぱり系。
下町、浅草の味。
うまい、うまい。
夢中で掻っ込む。
肝焼きもうまいが、肝吸いもうまい。
プリプニとした食感。
まったくうなぎの肝というのは不思議な存在、
で、ある。
ご馳走様でした。
勘定は合計15,100円也。
ご主人にご挨拶をして、帰宅。
03-3851-2108
台東区小島2-18-19
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