断腸亭料理日記2023
4473号
12月19日(火)第一食
そばやの[尾張屋]から田原町界隈のことを
振り返っている。
戦前、昭和15年(1940年)の地図を見ていた。
戦前のこのあたりというと、もう一つ触れておきたいことがある。
なにかというと、地下鉄のこと。
道路に太線が描かれているが、これは地下鉄ではなく、
東京市電の線路と停留所、電停(でんてい)。
昨日出した明治40年(1907年)の地図にも既に描かれている。
雷門、上野間が開通したのは明治36年(1904年)。(当時は
東京電車鉄道という民間の経営。)
道路にはもう一つ、細い線と小さな〇も同時描かれているのに
気が付く。これはバスとバス停か。当時、東京市営バスは
既に運航している。震災で市電が打撃を受け、小型の
乗り合い自動車を東京市が始め、既に定着していたよう。
田原町という市電の電停はT字路の前後にある。田原町と
いう町は江戸から雷門通りの南北両側なのでこれは
当然であろう。
ただ、今は、田原町というと、国際通りと浅草通りの
交差点を思い浮かべる。
なぜかというと、そう、地下鉄銀座線の田原町駅があるから。
現銀座線の浅草、上野間が開通したのは昭和2年(1927年)。
ご存知の方も多かろう。わが国最初の地下鉄。当時の社名は
東京地下鉄道。ちなみに、銀座線は道路の上から掘って、
後からふたをする、という作り方をしていた。それで、
どこも浅いのである。田原町駅もこの時に開業している。
それで、上の地図には記載して然るべきだが、なぜか
漏れている。地下は地図には載せない?、、理由は不明。
さらに上野、新橋間延伸は昭和9年(1934年)なので
この頃には十分に機能していたと思うのだが。
ともかくも、この時代、浅草というところ、最初の
地下鉄が通るほど、栄えていた、といってよかった
のであろう。
さて、田原町界隈のこと、一先ずこんなところ、か。
[尾張屋]であった。
そう[尾張屋]といえば、荷風先生であった。
荷風先生が[尾張屋]で昼飯を食べ始めるのはおそらく
戦後が主であったろう。
当時、浅草六区興行街は戦災から復興し、戦中の締め付け
からの反動であったのであろう、ストリップが大流行で
あった。
先生はストリップに毎日足しげく通い、踊り子の女の子の
楽屋にも出入りするようになる。そんな写真も残されて
いる。
そんなことなので、通っていたのは実のところ[尾張屋]に
限らなかった。洋食の[リスボン][アリゾナ]なんという
名前も出てきていた。
今日は、15時前。
そこそこ、1階のテーブルは埋まっている。
荷風先生の写真と向かい合う反対側のテーブルに掛ける。
一杯やるのだが、つまみはなんにしよう。
一品のつまみもここはいくつもあるのだが、
鴨ぬき、なんぞどうだろうか。
寒くなったので、鴨の季節。
こここで鴨南は食べたことがあったっけ。
お酒ぬる燗と、鴨のぬきって、できますか?。
はい、と、お兄さん。
“鴨のぬき”の“ぬき”は“ぬ”にアクセントを
置くのが正解。
まあ、流石に、浅草の老舗そばやで、鴨ぬきが
できない、などというところはないか。
ぬる燗。
大関の一合瓶と、そば味噌。
あ、板わさももらおうか。
鴨ぬきは少し時間が掛かるだろう。
と、思ったら、すぐにきた。
長く切ったねぎと、スライスの鴨肉。
お、そうか。脂身は別に入れているようだが、
けっこうノーマル。
つくねを入れるところもあるが。
この長く切ったねぎがよい感じ。
熱いつゆがうまい。
温まる。
鴨ぬき、天ぬきなど、昔から東京のそばやの
酒の肴、で、ある。
つゆで酒を呑むというのに違和感を持つ方も
ひょっとしてあるかもしれぬ。
私も、最初はそう思っていたのだが、これが
どうしてどうして、合うし、よい、のである。
板わさもきた。
ここの板わさはこんな感じ。
蒲鉾と、海苔で巻いた中はいかの刺身を三つ葉で
巻いたもの。
たっぷりのわさびがよい。
片付けて、そばを頼もう。
やっぱり、ノーマルなざる。
きた。
徳利のつゆを全部そば猪口へ。
ここは更科系の白いそば。
箸先にわさびをちょいと付けて一箸分取り、
持ち上げる。
一口にちょうどよい量と長さにしなければ、いけない。
これがだめならば、もう一度つまみ直すべき、
で、ある。
ちょうどよい量と長さがつまめたら、
そば猪口を左手で軽く持ち、背筋を伸ばす。
そばの先、1/3ほどつゆにつけ、一気に手繰る。
一噛み、二噛み、、、のみ込む。
よい喉ごし、うまい、うまい。
一気に平らげる。
うまかった、うまかった。
ご馳走様でした。
台東区浅草1-7-1
03-3845-4500
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