断腸亭料理日記2023

神田須田町・あんこう鍋・いせ源 その2

4461号

引き続き、須田町のあんこう鍋[いせ源」。

 


鍋がきた。

具は、あんこうの身、あん肝。
この二つは調理済み。

あんこうは、皮もポイント。
コラーゲン、で、ある。
あん肝はなかなかぶ厚い。

野菜。
白い棒のようなのは、うど。
ご存知東京野菜、白うど。
多摩育ち。
畑の中に室(むろ)を掘り、日を当てないで
栽培し、白くする。

絹さや、生椎茸、銀杏、三つ葉。
ゆずの千切りが上にパラパラっと。。

これに、野菜ではないが、焼き豆腐。

野菜は生だが、あんこう、あん肝は火が
通っているので温まれば、食べられる。

白身だが、プリプリ。
特に皮のコラーゲン。

つゆは、ちょっと甘めの甘辛の出汁。

以前と比べてこのつゆ、少し変わって
ないだろうか。
なにか、出汁感が強くなっていないか。
うまくなった?。
気のせいかもしれぬが。

内儀(かみ)さんなどつゆだけ飲んでいる。

うども色が付いてきた。
よい食感と、香り。

うまい、うまい、どんどん食べる。

そして、これ。

そう、白滝。

おわかりになろうか、通常よりもずっと細い、
のである。

極細といってもよいだろう。

毎度書いているが、こうした鍋、などに入れる
白滝は、細い方がうまい、というのが持論。

味が染みやすいし、なにより食感がよい。
段違いであろう。

うちの内儀(かみ)さんも好きなので、白滝だけ
お姐さんに追加を申し出る。

と、お姐さん、うちのは特注なんですよ、と。

ほう、そうであったか。
それは初耳。
だが、なるほど、さもありなん。

雷門の牛肉店[松喜]で扱っている白滝は
細くて好きなのだが、特注というだけあって、
それよりも細い。

鍋を食べ終えると、おじやを頼む。

お姐さんは、ご飯を持ってきて、少なくなった
つゆを足し、ご飯を投入。

お姐さんもいうのだが、絶対に手を出してはいけない。
さもなければ、こっぴどく、叱られる。

玉子を投入。
レンゲで、軽く割って、軽く混ぜる。
軽く、がポイント。

和食ではセオリーだが、玉子は混ぜすぎてはいけない。
白身の腰を残して火を通すのを、よし、と、する。

水分を飛ばし、ねぎを散らし、出来上がり。

飯椀に持って、

食う。
これがまずかろうはずがない。
まさに、よい塩梅。

お新香はたくあん、きゅうり、そして、
いつもあったような気がするが、長芋。
これは甘酢漬け。サクサクとしたよい食感。

食べ終わり、下足札を持って、立つ。
これが会計の目印。

梯子段を降りて、降りたところが帳場。
勘定は、14,300円也。

玄関の天井。

なかなか気付かぬが、帰りにこれは見てほしい。

格天井(ごうてんじょう)のようになっているが
柄(がら)、これ、なんだと思われようか。
正宗、というのが読めると思うが、その左に
白い菊の花が描かれている。
正宗に菊の絵で菊正宗。
これは、菊正宗の以前の樽のデザイン、なのである。
戦前のものか。
今いう、タイアップであったのか。

店の印半纏の下足番のおじさん。

印半纏というのも、今はもう、
なかなか見なくなった。

神田須田町あんこう鍋[いせ源]、
希少な店である。

ご馳走様でした。

うまかった。

 

いせ源

千代田区神田須田町1丁目11番地1
03-3251-1229

 

 

 

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