断腸亭料理日記2022

神田須田町・鳥すきやき・ぼたん

4206号

11月11日(金)夜

さて、鍋が続くが、今日は神田須田町の
鳥すき焼き[ぼたん]。

先シーズンは今年の1月に行っていた。

また、10月末には、二軒隣のあんこう鍋[いせ源

へ、行っていた。

数日前に内儀(かみ)さんが予約をしたのだが、
18時半以降は一杯であったよう。
人も出るようになり、人気か。

それで、17時から。

もう17時でもだいぶ暗くなった。

ここは先に書いたように[いせ源]の並びではあるが
[いせ源]があって、もう一軒あり路地、そして[ぼたん]
の並び。
[いせ源]はこのちょっと広い東西の通り側に玄関があるが、
[ぼたん]は細い南北の路地側が玄関になっている。
なぜであろうか。

かなり不自然であろう。

[ぼたん]の創業は明治30年頃という。
[いせ源]はそれ以前、幕末にはここにあったよう。
ただ、どちらも建物の建築は大正の震災後、昭和初期
であることには注意しなければいけない。

!。現代の地図は拡大して見ると[いせ源]の前と
[ぼたん]の前は通りの幅が違うのに気が付いた。
[ぼたん]側の方が広い。
ひょっとすると時期が違うのではなかろうか。

試みに、明治40年(1907年)の地図を見てみよう。

前名の連雀町である。
かなり細かい部分なので、正直のところよくわからない。
[いせ源]前の東西の通りもなく、[ぼたん]の玄関前の
南北の路地すら書かれていない。

どういうことなのであろう。実際と異なっている、
省略されている可能性もある。

仮説である。震災前か後かわからぬが[いせ源]玄関前の
通りは、先にできていた。それで幅が違う。
だが、これは[ぼたん]の角で行き止まり、ここは
T字路であった時期があった?。
それが震災後の区画整理で今のように西側の五差路へ
通じた?。

青い線で仮説を入れてみた。
こんな感じであったのか。

[ぼたん]の敷地はこの路地に面していただけで、
そちらに玄関があり、通りができてもそのままにしてある、
ということ。少なくとも震災後かつ、区画整理前、微妙だが、
そんな頃?。(数年の違いであろうが、そんなことがあろうか。
今度聞いてみようかしら。)

ともあれ。

門構えがあって「鳥ぼたん」の木の看板。
数歩の三和土(たたき)があって紺の暖簾と格子戸。
暖簾には、右に連雀、真ん中に大きく鳥、左に小さく
丸にぼたん。

下足があって、あがり、座敷へ案内される。
さすがにまだだれもいない。

座って、ビールと鍋を頼む。

すぐに銅板が張られ、カンカンに熾きた備長炭が
山盛りに入った焜炉が運ばれる。

お通しと玉子。

お通しはまぐろの佃煮。
この佃煮、なかなかうまい。

ビールはキリンの大瓶をもらった。
鳥すき焼きというくらいで、溶き玉子をくぐらせて
食べる。

鉄鍋、鍋の具もお姐さんが運んできて、すぐに
焼き始める。

つゆは甘辛い江戸前のもの。
具は鶏、ねぎ、焼き豆腐、白滝。

シンプルとってもよいかもしれぬ。
このシンプルさも江戸前であろう。
ただ、鶏肉は、かなりのバリエーションがある。
薄く平たく切ったもの、皮やら身やら細かく切ったもの。
レバー、砂肝も小さく切って入っている。
そして、丸めたつくね。

お姐さんによると、この鶏は千葉の「錦爽(きんそう)どり」
という名前らしい。皮が薄く脂肪が少ないとのころ。
8か月の若鳥というのだが、なるほど、かなり柔らかい。

白滝はここも例の細いもの。これがよし。

この鶏、それぞれかなり丁寧に仕込まれている。
鶏肉、というのは、意外に筋が多いのであるが、
ほぼ取り去ってある。

また、煮る割り下。
これもただのしょうゆと砂糖の甘辛では、おそらくない。
出汁なのか、わからぬが、別のうま味が感じられる。
これもこの店の只者ではないところである。

二人前でもこれ、我々の腹ではなかなかの量。

終盤。

肉や、豆腐、具をを残しておかなければ、いけない。
ご飯を入れておじやにもできるが、
玉子でとじてもらい、

親子丼にする。
残さないと、ただの玉子丼になってしまう。

これもお姐さんの仕事だが、きれいに作るもの
で、ある。

ご飯の上へ。

これがまずかろうはずがない。

やはり、親子丼というのは、鳥鍋、軍鶏鍋が盛んであった
江戸・東京の鳥鍋やで生まれた、というのが、さもありなんと
腑に落ちる。(人形町[玉ひで]で明治24年(1891年)に
生まれたと。)

座敷で勘定。二人、ビール込みで19,700円也。

ご馳走様でした。

 

ぼたん

 

 

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