断腸亭料理日記2022

鶏と大根の鍋

4019号

1月24日(月)夜

まったく、寒い。
私だけであろうか。

暦から外れている年もあるが、今年はぴったり。

先週木曜1/20が大寒であった。

今年は節分が来週木曜2/3、翌金曜2/4が立春。
ちなみに、旧の正月は火曜日2/1。

あと一週間。
もう少しの辛抱である。

ともあれ、今日も鍋。

鶏と大根の鍋」にしようと考えた。

簡単で、うまい。

なん度も書いているが、池波レシピ。
「梅安」である。(四)梅安針供養、である。

梅安の品川台町の自宅兼、針治療院。
今の、五反田の山手あたりである。
仕掛人の元締めが訪ねてきて、桜板にのせた焜炉の上で、
鶏と大根を煮て二人でつつく。
季節は、寒中ではなく、もっと早い、晩秋といったところ。

この「針供養」という巻は、章は分かれているが、長編。
話が進み、季節も進み、最終章が「寒鯉」で寒中。
そして大団円が、温かい熱海の湯。

「寒鯉」は季語でもあるよう。
寒中の鯉は動かず、餌も食べないので、釣りにくい。
ただ、釣れればうまい、という。
寒さに埋もれる抽象的な存在としても
理解されるという。

寒鯉を真白しと見れば鰭の藍 水原秋櫻子

寒さに埋もれる、白い鯉。
白い鯉は、自らの投影ということか。
気高さ、高貴さのようなイメージになるのか。
だが、白い鯉自体珍しかろうが。

寒、が入る季語は、調べるとかなりの数があるのに驚いた。

寒鶯、寒鴉、寒菊、寒灸、寒稽古、寒月、寒桜、寒雀、寒卵、
寒椿、寒釣、寒凪、寒念仏、寒の雨、寒の水、寒梅、寒晴、
寒紅、寒参り、寒見舞、寒餅、、、まだまだあるよう。

私が好きな子規の句に寒月のものがたくさんあった。

寒月や枯木の上の一つ星

寒月や猫の眼光る庭の隅

子規の句は写実、ということになっているが、
やはり、わかりやすい。
寒さと光、なのか。
この寒月は、満月なのか、三日月なのか、あるいは
半月ぐらいか。寒いのだが多少の温かみを感じるのは
気のせいか。

いろいろ読んでみると、詩心はおろか、想像力もない
私には存外の世界ではあるが、あたり前だが、
どれも、外であるし、寒、というものを正面から
とらえている。
これが日本人の季節感なのか、詩人の季節感なのか。
私などやっぱり、火鉢にあたってぬくぬくとしていたい。
今であれば、マンションの部屋で火鉢にエアコン、
さらに床暖房であるが。

では火鉢、炬燵(こたつ)で子規先生の句はないかと探すと
もちろんあった。

わびしさは炭團(たどん)いけたる火鉢哉

丁稚叱る身は無精さの火鉢哉

股火鉢なんという言葉があったが、そんな感じ。

置炬燵雪の兎は解けにけり

並べけり火燵の上の小人形

火燵でもこたつ。

よみさしの小本ふせたる炬燵哉

これだけは荷風先生。

ただやっぱり、寒さの中のわずかな温かさが伝わってくる。
自分では詠めないが、さすがである。
俳句というもの、よいものである。

ともあれ。
今は、東京も温かくなっているのであろうし
以前の日本家屋は、気密性はなく、隙間風も入る。
そうとうに寒かった。

寒中は寒いもの。
なんだか叱られているよう。

鶏と大根の鍋であった。

大根半分と、鶏手羽大パックを買ってきた。
油揚げはなし。

大量の手羽を圧力鍋で煮る。

煮えた。出汁も出る。

2/3ほど手羽を別鍋に分け、
残りに1/4に切った大根を圧力鍋に入れて再度煮る。

土鍋に移して、火鉢へ。

大根。しょうゆをたらして、食べる。

なんだか潔い。

こんなものだが、これがうまい、のである。

手羽。

柔らかく煮えているので、うまい。

鍋で煮えた大根は温まる。

残した手羽は、甘辛に煮る。

 

 

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