断腸亭料理日記2022

浅草・弁天山美家古寿司 その1

4222号

12月4日(日)夜

さて、日曜日。
今日は鮨。

ここのところもうずっとなん年も、鮨やといえば、
浅草・弁天山[美家古寿司]、で、ある。

前回は9月なので、少しあいてしまった。

他に、東京に鮨やはむろんたくさんある。
高価なところ、新しい試みをしているところ、
予約が取れない話題の有名店、などなど。

だが、ご近所浅草でもあるし、私には一番
合っている。

少し前に予約をしておいた。
日曜は、通しで18時までとのこと。
16時半から。

内儀(かみ)さんと、タクシーで向かう。

江戸通りから馬道通り。
伝法院通りの信号で降りる。

[美家古寿司]は馬道通り沿い左側。

馬道通りというのは、東武浅草の吾妻橋西詰の
交差点から、土手通りまでの間をいう。
以前調べたが由来は定かではない。

少し前にも書いたが、馬道から土手通りは吉原へ向かう
ルートで、馬で行ったから、というのもがあるが、これは
おそらく間違い。
馬道の名前自体は江戸以前からのよう。
家康が入る前の江戸は室町期の太田道灌の旧江戸城はあったが
さらにそれ以前は、江戸湾奥の寒村で、浅草は江戸から少し離れた
浅草寺門前町で奈良時代以前にさかのぼることができる。
この通りは浅草寺の東に接してる。浅草寺に馬がおり、
その馬の通り道であったから、というのもある。

ともあれ。

暖簾を分けて入る。
お姐さんが顔を出す。若女将は今日はお休みか。
一応名乗る。
入ると、手前に親方、正面に若親方。

カウンター、若親方前に掛ける。

ビールをもらう。

お通しは、北寄のひも、か。
薄い甘酢漬け。

鮨やらしい各種一人前や、つまみの付いたコースも
あるが、お好みで頼んでいる。

つまみから。
つまみは、たこがあれば頼むのだが、ないよう。
東京だと三浦半島の相模湾側、横須賀市佐島が
昔から有名だが、やはりあまり獲れないよう。

それで、鰹とたこの代わりに煮いか。

手前は、甘いたれ(ツメ)。
右は、辛子じょうゆ。

むろん、たれはいかで、辛子じょうゆは鰹。

つまみだとどうしても鰹を頼んでしまう。
鰹は好きなのだが、自分で魚やで買って食べる気には
ならない。
プロの目利きと腕に任せたい。
やはり鰹の場合、プロと魚やで買うものと、味が違いすぎる。

春も、前回、9月も生であったが、今日はたたき。
どういう区別であろうか。聞けばよかった。
むろん、うまい。

煮いかはにぎりでもうまい。
江戸前技の種。
生のいかを握るようになったのは、明治になってからで
意外に新しいのである。

つまみを平らげて、にぎり。

生姜の酢漬け。いわゆるガリ。
ここは自家製。一般のガリは甘すぎる。
江戸前はやっぱり、スッキリ、キリッと。

最初は、白身、平目の昆布〆から。

ニキリ、しょうゆを酒で割って、煮立て(煮切り)、
アルコールを飛ばしたもの塗る。
江戸前仕事だが、このくらいは東京のどこの鮨やでも
やっている。

ニキリを塗っているのでちょっとわかりずらいが、
昆布〆の色、飴色である。ケースの中のサクだと
よくわかる。
ここは厚めに種を切るのでうまみがよくわかる。

次は、同じく白身で鯛。

これは皮を残し湯をかけた湯引き。
やっぱり、厚い。

いか。生のいか。

江戸前は、すみいかを使う。
もうこの季節なので、身が厚い。
ただ、歯を入れると、ぷちっと切れて柔らかく、
あまみがあふれてくる。これが身上。

すみいかは、東京周辺だけの江戸前の言い方であろう。
全国的には、甲いか。なぜか東京ではスミの付いた
黒いままで流通し、売られるのですみいかという。
東京湾にもすみいかはまだいるらしいが、流通するほど
獲れていない。三河湾だったり、九州だが、東京用に
洗っていない黒いものも売っている。

初夏が産卵期で、3〜4月には大きく堅くなるので
東京の鮨やでは、あおりいかなどを使うところも多いが、
ここはその頃でもすみいかを使う。
8月には3〜4cmほどの子供が獲れ、新いかという。
私も買うが、べら棒に柔らかい。

次は、これ。

かんぱち、でよかったか、しまあじではなく。
しまあじと食べ分けるのはかなりの至難であろう。
目隠しで出されたらほぼわからない。
サクッとした歯ごたえと脂ののり。


つづく

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

 

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