断腸亭料理日記2022

日本橋高島屋特別食堂・うなぎ・五代目野田岩

4141号

8月1日(月)第一食

また?。
ではあるが、うなぎ。

暑いと、やっぱうなぎ。
あまりにも単純か?!。

が、いつもの行動範囲では、おもしろくない。

日本橋高島屋の[野田岩]。

かなり久しぶり。

振り返ると5年ぶりであった。

[野田岩]といえば麻布が本店だが、日本橋高島屋に
入っているところは、池波レシピ。

「池波正太郎の銀座日記[全]」新潮文庫

にかなりの数、登場する。

登場するうなぎはほぼ、高島屋の[野田岩]。

「銀座日記」は昭和58年(1983年)発表。
先生は平成2年に67歳で他界されているので、
晩年といってもよい頃かもしれない。

先生は亡くなるまで品川区の荏原に住まわれていた。
映画好きで、週に一、二度映画会社の試写を観にくる
のが通例で、この日常が「銀座日記」に書かれている。
荏原のご自宅から銀座、日本橋あたりまで出てこられて
いたわけだが、中でも日本橋高島屋の[野田岩]を
贔屓にしていたのは、おもしろい。

むろん、メインの目的は映画を観て街をぶらつき、
買い物。うなぎはついでのことで試写室から近い、
日本橋、銀座あたりのうなぎやであればよかったはず。
このあたりのうなぎや、それでも数は随分とある。
その中で日本橋高島屋特別食堂の[野田岩]を
選んでいたということになろう。

先生は浅草聖天町の生まれで、育たれたのは、
今、私が住んでいる元浅草七軒町の隣町の永住町
(どちらも旧町)で、錺職をしていたお祖父様のもと。
少年時代はお祖父様に連れられて、駒形の[前川]に
行ったということは、書かれている。
浅草というのは、私も書いている通り、うなぎやの
数はかなり多い。それも老舗ばかり。
当然、先生はいろいろなところへ入ったことはある
のだと思うが、店名を作品に出しているところは
他にはほぼないと思われる。
やはり、このことには意味があるだろう。

うなぎのうまいまずいはもちろん、店の居心地のよさ、
などなど総合している。
生まれ育たれた浅草、上野方面のうなぎやではない。
麻布[野田岩]。
[野田岩]も麻布の本店や他の支店ではなく日本橋
高島屋の食堂。たまたまであったのではあろうが。

私もこの年齢になってくるとなんとなく、
わかるような気がする。

日本橋高島屋特別食堂なので、休みなく終日やっている。
これも使い勝手はよい。

2時頃到着。
ここは“特別”という名前が付いているとおり、
帝国ホテルが入り、かなりおハイソな食堂。
サービスはかなりの特別感のある場所。
ウイークデーのこの時刻なので、上品なおば様方が
ほとんど。
広いロビーがあり名前を言って、ロビーのソファーで待つ。
待ったのは、10分もなかったか。

ウエイター氏に案内されてテーブルへ。

生ビールの大をもらい、白焼きとうな重の、
かさね重、6,000円ほどであったか、を頼む。
一人でもどちらも食べたいではないか。
これがよい。

気のせいであろうか、ウエイター氏のサービスっぷり
が変わっているのではなかろうか。
格段に丁寧、上品になっているような。
なにより、にこやか。
もしかすると、スタッフは高島屋から帝国ホテルに
替わっているのではなかろうか。
明らかに違う。

生ビールは大といっても小ぶり。
呑みながら待つ。

ほどなく、きた。

二段のお重は上が白焼きで、下が蒲焼とご飯。
お新香に[野田岩]でお決まりのおろし、肝吸い。
しょうゆと、うなぎのたれ、山椒、塩。

開けると。

白焼きで、本わさびがのる。

小皿にしょうゆを取り、つまむ。
むろん生ぐささなど一切なく、みずみずしい。

[野田岩]も正直にいうと、店によって、味も
客あしらいもやっぱり随分違う。
ここは、味は本店に準じているのではなかろうか。
場所の格というのがやはりあると思われる。
そして、サービスは、特上。

白焼きでビールを呑み終わり、うな重。

飯の炊き具合も、堅めで、上。
でもさびしいので、白いところには、たれをかけ回す。

[野田岩]の蒲焼の味は、いつも書いている、
きりっとからめの地元浅草よりは、気持ち甘い
のではなかろうか。
でも、気持ち。

食べ終わった頃をしっかり見てくれていて、
にこやかなウエイター氏が、番茶を持ってきてくれる。

こんなちゃんとしたサービスを受けたのは
やはり久しぶりかもしれぬ。
よいものである。
ご馳走様でした。
流石。

日本橋高島屋

野田岩

 

 

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