断腸亭料理日記2022
4155号
8月19日(金)第一食
さて、今日は天ぷら。
天ぷらといえば三筋町の[みやこし]。
[みやこし]以外には考えられない。
むろん、ご近所ということもあるが、
もうなん年も、この系統の天ぷらやとしては
ここ以外には行っていない。
“この系統”と書いたのは、やはりご近所で
よく食べている蔵前[いせや]
の系統ではない系統の東京の天ぷらやとしては、
ということである。
お分かりになろうか、この違い。
時代、歴史的に違っているという言い方も
できると思われる。
東京の天ぷらは以前は、皆、[いせや]の系統
であったと考えている。
この系統は比較的、衣が厚め。天つゆは甘辛の濃いめ。
天丼がうまい。
浅草の天ぷらやは、ほぼこの[いせや]系統。
これに対して[みやこし]の系統は衣は比較的に
薄め。カウンターが主で揚げたてを目の前で
出す。塩でどうぞ、というのもこの系統。
今、東京全体で天ぷらやといえば[みやこし]の
系統の方が多いだろう。
歴史的には、明治の終わり頃、この目の前で揚げたてを
すぐに出す形式が現れた。
カウンターだったり、お座敷天ぷらなどとも言われた
ようだが、座敷の中に揚げるスペースがあって
職人と揚げ鍋があり、目の前で揚げたてを出して、
すぐに食べる。
高級な天ぷらやは、次第にこの形式に変わっていった。
浅草などの老舗天ぷらや、以前の形式を残している
ということになろうか。
天ぷらを揚げる技術としては、おそらくこの時点で
大きく変わったのであろう。
それ以前はしっかり火を通す。
それ以後は、中を半生に仕上げる。
むろん、種にもよろうが。
最近、この系統では、さらに進化している技術
もあるようである。池波先生御用達で有名になった
山の上ホテル、銀座の[こんどう」などなど。
30分かけてゆっくり揚げて、ぶ厚いさつまいもを
揚げるといったものがある。
他にも新しい技術はあるのであろうが、
私は行ったこともないので知らないが。
ただ、私自身はあまりこの手の天ぷらに興味がない
のが正直のところ。むろん値段も格段に高いが。
東京の天ぷらは[みやこし]系統の技術が洗練、
熟成され最上のものを追求していくのだろうが、
それで十分。
30分かけて揚げたぶ厚いさつまいもはうまい、ので
あろうが、天ぷらである必要があるのか?。
江戸前の魚をうまく揚げるのが東京の天ぷら。
それでよいと思うのである。
閑話休題。
ご飯のついた定食、特、7,700円也。
カウンター上の白い紙がのせられた皿の上。
お馴染み、海老から。
小さい車海老、さいまき海老。
最初は塩。
もう一匹は天つゆ。
そして、頭が二つ。これもお決まり。
これも、むろん塩。パリパリでうまい。
次は、いか。
あおりいか、といって出された。
めずらしい。
ここでは、四季を通して江戸前天ぷらの通例通り、
すみいか、なのだが。
真夏はすみいかは産卵期が終わり、鮨やでいう、
新いか、小さな子供が出回り始める頃。
さすがに数センチのすみいかは天ぷらにはできないか。
そういえば、8月にここに来たことがなかったかも
しれない。
次は、きす。
どれもそうだが、しっかりした衣で揚げられている。
これがプロの仕事。
小鮎。
レモンを絞って、塩で。
ほろ苦くて、うまい。
銀杏。
まだ青い。新ものであろう。
穴子。
これも定番中の定番。
海老と穴子のない、江戸前天ぷらは存在しない。
穴子も天つゆで。
表面カリカリ、中ほかほか。
うまい穴子天。
野菜天。
しし唐、蓮根、なす、アスパラ。
最後の小柱かき揚げは天丼。
お新香と刻んだ三つ葉の浮いた蜆の味噌汁。
これで必要十分の江戸前天ぷら、であると。
台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374
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